大谷桃子の、母から娘へ。受け継ぐレシピ

[特集・連載] 大谷桃子の、母から娘へ。受け継ぐレシピ

私たちの子育ては、成り行き上、放任主義。 陶芸家である私と夫(哲也)の毎日はめまぐるしく、 子供達の成長をゆっくり眺める間もなくここまできました。 そして気がつけば長女が18歳、 もうすぐ家を出ていくという段になっていたのです。 これまでの私自身を思えば、ずっと仕事も子育てもどちらも中途半端。 「ちゃんと子どもと向き合う時間を作れていない」と落ち込んだり、 「仕事の完成度が低い」と自信をなくしたりの連続でした。 けれどそんな中で一つずっと守り続けていたことがあります。 それは、ご飯をちゃんと作ってみんなで一緒に食べるということでした。 どんなに遅くても疲れていても、 仕事がすんだら台所に立ちご飯を炊いておだしをとって 野菜や肉を刻んだり魚を焼いたり。 今までこの作業に一体どれほどの時間を費やしてきたことでしょう?(仕事より長い、、、ですね、多分。) この連載のきっかけになったエピソードは、もうすぐ家から離れて暮らすことになる長女、花が発した一言。 「一人暮らしは楽しみやけど、もも(子供達は私のことを「もも」、父親のことを「てっちん」と呼びます。) のご飯が食べれんくなるのがイヤやなあ」 私は突然発せられたその一言に不意打ちを食らって 「もう本当にすぐ旅立ってゆくんだ!」と驚き、瞬間、泣きそうになってしまったのですが、そこで涙を見せては普段の強がり母さんの面目丸つぶれ、グッとこらえて言いました。「自分で作れるようになれば、いつでもどこでもももの味が楽しめるやん?」 「じゃあ、教えて」 ということでここに至ったというわけです。(一田さんありがとうございます!) その後少し落ち着いてこのやり取りについて考えると、 寂しいのと同じくらい嬉しい気持ちがこみ上げてきました。 「多分、この一言を聞くために私は毎日ご飯を作り続けてきたのではないか?」と。 ここにこれから紹介するいろんな食べ物は、 私がこれまでなんども作り続けてきた特別なことは何もないシンプルな(時々ちょっぴり豪華な)家庭料理。 一度覚えてなれてしまえばすぐできる。 きっと学校で勉強したりバイトしたりしている時に 「帰ってあれ作って食べよう」って想像して楽しくなる時間が増えるはず。 少しうまく作れるようになったら友達を呼んで一緒にご飯を食べよう! ということにでもなればきっとホームシックにかかる暇もないくらい楽しい時間が増えますね。 これから旅立つ若いみんなに捧げます!