ちまたにハモやナスが出回るこの季節、おばあちゃん(父方の祖母)を思い出します。
おばあちゃんは出雲出身で、若い時に京都に出てきておじいちゃんと出会い家庭を築きました。
「京都の魚は美味しくない」とよく言っていました。
おばあちゃんが育ったところでは、毎朝、港に揚がった魚を自転車で売りに来るおばさんがいて、いつも新鮮で美味しい魚が食べられたけど、ここには干したり(身欠きニシンなど)茹でたり(なまり節など)した魚しかない、と。
それでも、それなりに京都の食べ物に適応していったおばあちゃん。
お刺身が食卓に上がることはあまりなかったけれど、魚料理はよく作ってくれました。
中でも私の大好物だったのはハモのフライ。
季節がら、ハモのフライにはたいてい丸ままのナスのフライがセットになっていて、
リムのある洋皿にキャベツの千切りとトマトとキュウリのスライスを飾り、ハモとナスのフライがドン。
フワフワのハモとトロトロのナスにはトンカツソースをかけて、野菜にはマヨネーズとケチャップを混ぜた(私たち世代には懐かしの)「オーロラソース」をかけて食べるのが定番でした(笑)もちろんご飯と味噌汁も一緒に、という典型的な昭和の食卓風景。パープーとラッパを鳴らしながら町内を回ってくるお豆腐屋のおっちゃんから買ったばかりの冷奴が付いていることも多かったな。
あれから随分経ったけれど、おばあちゃんを全く知らない私の娘たちも、このハモとナスのフライが大好き。
「今夜はハモとナスのフライやで〜」というと、「よっしゃ!」とガッツポーズで歓喜します。
おばあちゃんもこれを知ったらきっと喜んでくれるんじゃないかな。
おばあちゃんは、青春時代は第一次大戦、子育て時代は第二次大戦、と二度の大きな戦争をそっくり経験した世代。
ある時、大汗かいて揚げ物して後片付けした後、夕暮れ時のセピア色の食卓で美味しそうにタバコを一服するのを側で眺めるていると、「私の青春は灰色やったけど、今はなんでも手に入るいい時代になって、おばあちゃんは今が一番幸せや」と笑って言っていました。
今なら、一緒にご飯を作ったり片付けしたりして、ついでに一緒に一服しながら、おばあちゃんの話が聞けるのに。
出雲での子供から娘時代の話、京都に出てきた時のこと、おじいちゃんが戦争に行っている間、食べ物はいつも不足していて、戦闘機がしょっちゅう上空を飛んでいて、そんな中で一人で子育てしたこと、等々、おばあちゃんと一緒に消えていった記憶をもう少し私の中に留めておきたかった。
私がおばあちゃんから受け継いだものといえば、このハモとナスのフライや、五目豆や金時豆の甘煮、ウスイエンドウの卵とじ、揚げ出し豆腐、イトヨリの煮付け、など、美味しかった味の記憶ばかり。これだけでよかったの?
終戦記念日が近い夏の夕べにそんなことを思いました。
<材料>(4人分)
ハモ 2尾(開いて骨切りしてある小ぶりのもの)
ナス 4本
塩胡椒(適量)
卵 2個
薄力粉(適量)
パン粉(適量)
揚げ油(適量)
(付け合わせ)
キャベツ(千切り)
キュウリ(斜めスライス)
トマト(くし形切り)
レモン(くし形切り)
(オーロラソース)
マヨネーズ
ケチャップ
* 1対1で混ぜ合わせる。そこからマヨネーズとケチャップを調整して好みの味に仕上げる。
1. ハモをそれぞれ4等分して軽く塩胡椒する。
2. ナスはヘタを取って、衣がつきやすいようにピーラーでシマシマに皮をむく。
3. 付け合せ野菜の下準備をする。キャベツは千切りにして洗い、よく水を切る。キュウリは斜め切りに、トマトはくし形切りに。
4. 衣をつける。薄力粉を全体にまぶし、卵に浸し、パン粉を押し付けるようにしっかりつける。
5. ナスを揚げる。油を温め、弱火でゆっくり揚げる。丸ままなので中までしっかり火が通ってトロトロになるように初めは弱火でゆっくり揚げ、ふわっと軽くなって浮き上がってきたら、強火にしてきつね色に揚げる。
6. ハモを揚げる。すぐに火が取るので、強目の中火で一気にからりと揚げる。
7. 油を切って、付け合せ野菜を飾った皿に盛り付ける。
料は夏野菜と新鮮なハモ
ハモに軽く塩胡椒で下味をつける
ナスは衣がつきやすいように所々皮をむく。シマウマみたいでカワイイ❤︎
クラシックな洋食屋さんの付け合せ野菜のイメージで
千切りキャベツは、昔ながらの菜切り包丁で軽快にトントントン…
衣の材料をつける順番に並べると作業性アップ
衣付け作業は流れるように〜
ふわふわのぬいぐるみの様…
ナスは丸ごとゆっくりと揚げます
ハモは一気にからりと揚げます
お味噌汁とご飯と一緒にいただきます。