こんにちは。せいかつ編集室の大木春菜です。アウトプットにまつわる連載、第4回目で考えてみたいのは「第三者に向けて発信する理由」です。
前回まで、「モーニング・ページ」「日記」「モヤモヤノート」と、誰にも見せない自分だけのアウトプットについてお伝えしてきましたが、私は「第三者へ向けての発信」を推しています。それはなぜか!? それにはいろんな理由があると思っているのですが、一番は・・・単純に「自分を表現するのはうれしいことだから」だと感じています。
私は大学時代、「毎日がつまらなくてしょうがない」と思っていた時期がありました。まわりの人たちがキラキラ充実しているように見えて、「私の人生は、なんて地味なんだろう」と思っていました。
そんな時、私に転機をくれたのは、JUDY AND MARYのYUKIちゃんのエッセイでした。
音楽雑誌「WHAT’s IN?」で連載していた「YUKIの果てしないたわごと」というエッセイをまとめた本なのですが、タイトル通り、とりとめのないことが書かれています。なにか特別な出来事や感動するフレーズが書いてあるわけではありません。
・野球観戦をしたよ〜
・買い物に行った
・ゲームで遊んだ
・レコーディングした
などなど、日々の出来事がイラストやポラロイド写真とともに綴ってある。
内容をじっくりじっくり読むというよりは、ペラペラとめくって「楽しい・かわいい気分」を味わえる雑貨みたいな、そばに置いてあるだけでパワーをくれるような本。
どうしてこんなハッピーな気持ちになるのだろう?
きっと、YUKIちゃんの人生が楽しくて・かわいいから・・・
私もそんな人生がいいなぁ〜。
と、心から思ったのでした。
そして、YUKIちゃんの真似をしてみたくなったのでした。
今、YUKIちゃんの真似っこをして日記を書いたら、楽しくてかわいい人生になるかもしれない!
「私もイラストを描くのは得意だし、チェキも持ってる!やれる」と思い立ち、すぐにはじめたのが夏休みの絵日記でした。
大学の長〜い夏休み!実家に帰って、ヒマでヒマでたまらない日々だったですが、日記を書き始めると気持ちが変わりました。今まで、「つまらない」にフォーカスしていたレンズが、「おもしろい」にフォーカスするようになってきたのです。
たとえば、「このページは実家の猫とおばあちゃんについて書こう!」と決めたら、飼っているネコとおばあちゃんのツーショットを探すようになったり、「買い物について書こう」と思ったら、店員さんとの会話を記憶しておこうと意識したり。
今まで、何気なく、当たり前に繰り返されていた毎日だったのに、「このことを書くぞ〜」と決めると、急に暮らしの解像度が高くなる感覚がしたのです。
「お散歩したことについて書こう」と決めたら、今まで聴こえていなかった虫の声が聴こえてくるようになったし、まわりの風景もしっかり見て歩くようになった。
そうすると、「私の人生、捨てたもんじゃない」と思うようになってきたのでした。
実家の自然豊かな環境って素晴らしいし、
愛猫とおばあちゃんの関係はとても微笑ましい、
好きな洋服が買えるしあわせ。
今まで、「なんてつまらないんだ!」と思っていた私の人生が、キラキラ輝きはじめたのです。
この時のうれしい経験を胸に、私はときどき日記を書き、シェアするようになりました。とくに、旅行をするときは必ず旅日記を書き、一緒に旅をした友達にシェアするようになりました。
これは、バイトの友達と旅行に行った時に書いた沖縄旅日記です。
飛行機の中でも、旅先のホテルでも。画用紙とペンを肌身離さず、旅中ずっと描き続けていた日記。書いてあることは、完全に内輪ノリです。
食べたもの
友人のおかしな発言や寝相
旅先で見かけた人のファッション
見送りに来てくれたパートさんのことetc…
何も知らない人が読んだら、ぜんぜん面白くないと思うのですが(笑)
この日記は完成後、バイトの休憩室に置いて、一緒に旅した友達はもちろん、一緒に旅していない他のバイト仲間や、パート、社員さんにまで(!)読んでもらいました。
「欲しい」と言ってくれた人には、コンビニでコピーしてプレゼントしました。
その後も旅行に行くたびに、旅日記を書きました。旅行のための日記というより、日記のための旅行と言っても過言ではないほど、書くことが楽しくて楽しくてしょうがなかった。
今は、旅行をする機会がぐんと減ってしまいましたが、どこかにお出かけしたときや、家にいるときでも読書や映画鑑賞のあと、おいしいものを食べた後、心が動いたときに書いています。
大好きな人たちと、一緒に過ごす時間はとても楽しい。そして、その時間が過ぎ去った後に「楽しかったね〜!」と、気持ちを共有するのもとっても楽しい。
私は、社会人になって「編集」という仕事に就き、たまたまこれらの絵日記が仕事に繋がっているのですが・・・今回伝えたいのはそこではありません。
伝えたいのは、「自分を表現すること」「気持ちを共有すること」はうれしいということ、です。
同じ景色を見て、同じ音を聴いて、同じものを食べても、人それぞれで感じ方は違います。「自分を表現する」ということは、自分の感じたことをカタチにするということ。
「日記」にするぞ!と決めた途端、
五感が意識的に動き出し、
注意深く人の言葉を観察するようになり、
景色がさらにくっきり見えるようになりました。
そうすることで、自分のなかの小さな自分が、「私に備わっている機能をつかってくれて、うれしい!」と言ってくれてるかのような感覚がありました。
今まで、ぼ〜っと放置していた感覚が、
「待ってました!」と、一斉に動き出した感じ。
それが、とってもうれしかったのです。
さらに、「自分が表現したこと」が誰かに伝わったり、共感してもらえたりしたら・・・さらにうれしい。
「共感」って喜びです。
自分で自分の表現をすること。
これって、実は人間の本能らしいです。「自分の存在を知って欲しい」という本能。自分をアピールする本能。生物学的に言うと、遺伝子を遺すための細胞欲求。
孔雀が羽根がハデハデなのも、
カサゴの棘がトゲトゲしているのも、
エリマキトカゲのビラビラも・・・
それらすべてが、「私はここにいるよ〜!」ってアピールしているから。
(生物の専門家を目指す高校生から教えてもらいました♪)
そう考えると、とってもシンプル。
今、「自分のことを発信する=自己承認欲求を満たすためのもの」「単なる自己満」・・・なんていう、ネガティブな意見もありますが、自分という人間を他の人に分かってもらいたいのは人間の本能なので、仕方がないのではないでしょうか(笑)
「私の日常なんて、表現しても誰も喜ばない」
「こんなの書いても、つまわらない」
「有益な情報じゃないから・・・」
もし、そんな理由で表現することを止めてしまっている人がいたら、ぜひ「自分のために」書いてみてください。誰にも迷惑かけません(笑)。そして、共感という副産物が得られたら・・・さらにラッキー♪
「認めてもらいたい」「褒められたい」そんな気持ちが先行しちゃうと、しんどくなってしまうので、「自分のために、自分を表現すること」を目的に。
だって、自分を表現することは、うれしいことだから!
まずは自分のために。
そして、身近なあの人に、「楽しい」をシェアする気持ちで。
アウトプットをはじめてみませんか。