【モヤモヤ女の読書日記】私に効く本、いただきます「窓のあるカフェで、人間時間を」梅津奏

先日一田さんが、「背筋を伸ばしてくれるカフェ」を紹介されていましたね。

いいなぁ行ってみたいなぁと思いつつ、私も好きなカフェのことを書きたくなったので書いてみます。

ベローチェのいつもの席にて、「さて、原稿を書きましょう」の図。

週末はたいてい、カフェにいます。あまり長時間居座ると迷惑かなと思うので、いくつかハシゴするのがお決まり。本を読んで、原稿を書いて、手帳を確認して……。私にとってカフェはさながら書斎代わり。

食べるもの飲むものにそんなにこだわりがなく、またおしゃれな雰囲気が苦手なので、行きつけなのはチェーン系カフェ。スタバもドトールも行きますが、一番落ち着くのはベローチェ。地元の仙台にいた頃、1年ちょっとアルバイトもしていました。たまに母が仕事の前に顔を出してくれて、いつも決まってソフトクリームつきのコーヒーゼリーを頼んでいたなぁ。ソフトクリーム巻くの大得意だった私です。意外と器用なんです私。

 

チェーン系カフェ以外で好きなカフェというとかなり限られますが、一番お気に入りなのが「カフェきょうぶんかん」。銀座の中央通りに面した書店、教文館のビル4階にあります。

 

街の本屋さん、という店構え。

銀座の中央通りが見下ろせます。この日はレモンケーキセットに心くすぐられました。(レモンケーキ大好き)

ここの窓に向かった席が、東京で一番好きな場所かもしれません。

社会人一年目の頃から通っている(というほど頻繁には来ていないけれど)ので、もう10年以上ずっと好き。大学までは仙台で過ごした私は、なかなか東京の地理になじめず、(生来の方向音痴も相まって)とってもストレスを抱えていました。

入社して最初に配属されたのが日本橋・銀座エリアだったので、外回りをしているうちにこの辺りだけはなんとなく把握できるようになり……。変化や想定外を嫌う私が、休日も平日と同じエリアで過ごすようになったのも不思議ではないでしょう。新宿とか渋谷とか青山とかは、人に誘われても断ったりしていた小心者でした。

かといって、銀座や日本橋に来たところで、新入社員ができることは限られています。なぜならお金も教養も大幅に足りないから。結局、デパートをぶらぶらするか、本屋さんをぶらぶらするか、敷居が高すぎないカフェでお茶するか。そんな私に、「カフェきょうぶんかん」はぴったりの場所でした。

小さな古いビルの4階、ちょっと奥まった場所にあるので、いつ行ってもそんなに混んでいないのもいいのです。店内はほどよく静かで、店員さんもお客さんも落ち着いた優しげな人が多い。きょうぶんかんブレンドと、たまに小さな甘い焼き菓子を頼んで、窓の外を眺めながら本を読むのがいつもの過ごし方です。

 

お茶の時間』(益田ミリ/講談社文庫)。

「すーちゃん」シリーズや「僕の姉ちゃん」シリーズが大好きで、新刊を見つけるとつい手に取ってしまう益田ミリさんの本。ミリさんが描くのは、普通な人の、普通な日常がほとんどです。その中に、どんな喜びや戸惑いや怒りや悲しみが詰まっているか……。「普通」の中にある波や嵐や青空を、さりげなく見せてくれる素敵な小宇宙の作り手さん。

本書は、ミリさんがカフェで過ごす時間やそこで見かけた人々のことをスケッチしたエッセイ漫画です。

編集者さんとの打ち合わせ、スイーツを頼むか悩んでいるときのこと、隣の席から聞こえてきた気になる会話。本を読んだり考えごとをしたりおしゃべりしたり、ただぼーっとしてみたり。

ただ「飲み物を飲む」以上の意味がそこにはある、ということを教えてくれる一冊です。私が特にグッときたのは、冷たい雨が降る日に、ミリさんが一人でカフェに入ったときのことを描いたお話。人との待ち合わせ前の少しの時間、温かいカフェオレとテーブルに置かれたあるものが、ミリさんの心模様を変えていきます。ちょっとしたことが目に留まり、それを心に反映する余裕を持てるのが、カフェでの時間の素敵なところ。

ミリさんが描くさまざまなカフェでの過ごし方を眺めながら、「お茶する時間」が私たちにもたらすものについて改めて思いを馳せました。

 


私が一人でカフェにいるとき、「私は私と一緒にいる」感覚がとぎすまされます。「一人でいる」ではなくて「私と一緒にいる」。

普段はつい無視しがちな、自分の本音だったり、心や体の状態であったり。カフェにいる間は、それらとちゃんと向き合える気がするんです。

お茶の時間は、ふと、なにかを思うための、人間らしい時間だった。――『お茶の時間』より

コーヒーや紅茶で自分を温めたり冷やしたりしながら、自分と一緒にいることに集中して、読んだり考えたり書いたりする。そんなささやかで贅沢な時間を、私はカフェで過ごしているんだなぁ。家にいるときよりも友人といるときよりも、「自分という人間」がくっきり見えて、それを味わう時間。まさに、ミリさんのいう「人間らしい時間」ですね。

そしてこの原稿も、もちろんカフェで書いています。そろそろ飲み物をお代わりしようかな。それともちょっと歩いて別のカフェに行こうかな。バッグの中には本が三冊。まだまだ私のカフェ時間は終わらなそうです。


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