悩みがなくたって、人に話を聞いてもらっていい。ライフコーチ きやまりえさん vol.2

「私を見つけてプロジェクト」5人目のご紹介をしています。

「全力で人の話を聞く」というライフコーチとして活動を始めたきやまりえさん。
前回は、教師という仕事につくまでのエピソードと
息子さんの学級崩壊時の、つらい体験を経て
「私って、ここにいていいのかな?」と悩んだおはなし。
そして、苦しさの中で「私の話」を聞いてくれる人に出会ったところまでを伺いました。

話を聞いてもらってどうでしたか? と聞いてみました。
「その方は、解決方法を教えてくれる、というわけではなく、
とにかく話を聞いてくれたんです。
ず〜っと話し続けて、質問してくださることに答えていくうちに、
『私って、本当に教員をやりたかったんだっけ?』
という、いちばん根っこにたどりついたんです。
そこにたどりつくまで、私は固くフタをして、
いろんな制限をかけていたんだ、ということにも気づきました。
『先生の仕事をちゃんと続けなくちゃいけない』とか
『お母さんだからちゃんとしなくちゃいけない』とか……」

そして、あの保護者面談で担任の先生に、つらい一言を言われたとき、
怒っていい場面だったのに怒れなかったのは
この「フタ」があったせいだと気づいたのだと言います。

私も優等生体質なので、きやまさんのこの話は本当によくわかります。
「誰かに褒めらる人にならなくちゃ」
「仕事で評価を得なくちゃ」
「ライターとして成功しなくちゃ」
そんな「〇〇しなくちゃ」の制限のおかげで、
本当に自分がしたいことがわからなくなる……。

きやまさんは、その後5回にわたって話を聞いてもらい、
少しずつフタを開け続け、
なんと、産休後復帰をせずに、教員を辞めることを決意します。

その時は、次に何をするか、どんな仕事をするかも決めずに
とりあえず辞めたそう。

「彼女に話を聞いてもらいながら、
私って、今まで何が楽しかったんだっけ?と思い出していました」ときやまさん。

そうして気づいたことがふたつ。

ひとつは、ちゃんと自分の暮らしに向き合いたかったんだということ。
「しゃべらないで早くして」と叱ってばかりいた子どもたちに、
ちゃんと向き合いたい。
毎日焦って、忙しがってばかりいたけれど、
もっと丁寧に料理を作り、部屋を整え、植物を育て、雑貨を飾って楽しみたい……。

それは、仕事を辞めるとすぐに実現できました。
7時にひとりで家を飛び出していた毎日から、
今は、8時に子どもたちを見送ってから、
リモートワークになった夫と1時間ほどウォーキングに出かけ、
帰ってきて洗濯物を干して、仕事に取り掛かるそう。
お昼になれば、1時間半ほど休みをとって、簡単なものを作ってふたりで食べたり、
ランチに出かけたり。
「そうそう、こういうことが好きだったんだ、ってやっと思い出しました」
ときやまさん。

撮影の日、私たちのためにご飯を作ってくださいました。
チャプチエは、ニョクマムの香りが効いた本格的な味。
スイカにゴルゴンゾーラチーズをのせたサラダのおいしかったこと!

 

そして、もうひとつ気づいたことは……。

「私、人の話を聞くことが大好きだなあって改めて思ったんです」。
教員時代は、子どもたちはもちろん、保護者ともいろいろなおしゃべりをするのが大好きだったそう。
「子どもの悩みの面談なのに、夫婦の話をしてみたり、
おじいちゃん、おばあちゃんまで話をしにきてくれたり」。

そして、きやまさんがつらいときに話を聞いてもらったように、
「誰かの話を聞くことならできるかもしれない」と思うようになったそう。
まずは、「今すぐできることから」とインスタグラムのアカウントを立ち上げ、
最初は無料で、人の話を聞くことを始めてみたのだと言います。
その行動力には驚くばかり。
「私は何者になれるだろう?」「どうしたら仕事にできるだろう?』
と考えるのではなく、
「今できること」をやってみる……。
それが、きやまさんが見つけた再スタートの方法でした。

コーチングについて学ぶことも始めました。
こうして、少しずつ準備を整え、できることをひとつずつ見つけていきました。
もともと、教育学部では心理学を学んでいたし、
長年、教師として働いてきたので、カウンセリングのプロであることは確かです。
でも、何よりも自分が傷つき、何かを見失い、固くフタをしていたからこそ、
どうすれば、ご機嫌に毎日を過ごし、
どうしたら、何かを見つけ、
どうしたら、固いフタを開けることができるのかが、わかります。

「元気にならなくてもいいんです」
ときやまさん。
「たとえば、『いつもネガティブにしか考えられないんです』という人がいらっしゃったら、
そんなネガティブな自分ってどんな人? ということから始めればいいと思うんです。
みんながハッピーになることをゴールにしなくてもいいと思うんですよね。
ただ自分自身を知って、
自分が何に執着しているかが見つかると、
『ま、いいか』と手放せるようになるんだと思います」

今、きやまさんが立ち上げたサービスは大きく3種類あります。
ひとつは、ただひたすら、寄り添い話を聞いてくれるという1対1のパーソナルコーチング。
「コーチングってアドバイスをしないんです。
だから、私が『こうしたらどうですか?』みたいなことは言いません。
コーチングの語源って『馬車』なんですよね。
目的地まで一緒に連れていくけれど、目的地を決めるのは乗っている人なんです。
行き先がわからないっていう人でも大丈夫です。
こっちに行くか、あっちに行くか?
飛行機で行くか、歩いていくか?
そこから、丁寧に一緒に考えますから」。

これから残りの人生をどんな自分で生きていきたいか、
どんな人に横にいてほしいか、
どんな時間やお金の使い方がしたいか……などなど。

中には、婚活で「私はどんな相手を望んでいるのか?」を見つけたい人や、
終活の中での旅の計画を立てる際
「やっと人生のお休みが手に入ったのに、どこに行きたいかわらかない」という人などなど。

「私自身も今、ひとつずつ実現している
『自分と家族を大切にできる働き方を探している方も多いですね」ときやまさん。

もうひとつが、ストーリーコーチング。
これは、カードを使って、自分のことを知っていくコーチングです。
自分が選んだカードを見ながら、きやまさんの質問をヒントに想像をふくらませ、
カードのストーリーを自由に話してみることで、
自分自身の本音を見つけるというしくみ。

「私らしい人生を楽しみたいけれど、
いつも誰かのために一生懸命で、「私らしさ」や「私の好きなこと」が
すっかりわからなくなった人におすすめなんです。
ひとりで背負った荷物を少しおろして、
一緒に本当に行きたい目的地を見つけられたらいいなあと思っています」。

3つ目が、季節ごとに期間限定で開く「ごきげん朝会(ごきげんちょうかい)」。
毎日をちょっとご機嫌にする「ヒミツの小部屋」をオープンしているのだとか!

「なになに、それ?」と聞いてみると……。

毎朝6時ぐらいから、10分ほど鍵付きアカウントで、インスタグラムで配信。
それに対して参加者にコメントを入れてもらう、というシステムなのだそう。

「今日の体の具合はどうですか?ご機嫌はいかがですか?」
というきやまさんの問いかけに
「今日はぐっすり眠れたから元気です」とか
「昨夜バタバタしていて、なんだか心がざわつきます」
とコメントを入れることで、
自分自身のご機嫌を観察することができる、というしくみ。

「自分の体や心の調子を知ることができるのは自分だけなんです。
問いかけやちょっとした一言が
忙しい毎日、あっという間に過ぎ去って見のがしてしまう自分自身の
「いまここ」の状態に気づくきっかけになればいいなあと思って」。

本来コーチングは、コーチに導かれて、自分が「話す」ものですが、
この「ごきげん朝会」は、まさに「聞くコーチング」。
きやまさんの言葉に耳を澄ませながら、毎朝自分の体と心の状態をスキャニングしていきます。

いきなり、1対1のコーチングを受けるのは、ちょっと勇気がいるけれど、
こんな「ごきげん朝会」なら、気軽に参加できるかもしれません。

自分ひとりで何かを変えたり、始める自信が持てないとき、
とても大きな支えになるなあと感じました。
(ごきげん朝会2023夏9月まで開催中、次回は11月頃を予定)

 

今しんどい何かを抱えている。
悶々として出口が見つからない……。
そんな人は、自分の殻に閉じこもり、扉をぴたりと閉じてしまいがちです。
でも、そんなときこそ、「誰かとのつながり」が力になる、ときやまさんは言います。

「自分の話をしたり、聴いてもらう場があることで、
『今いる場所だけがすべてでない』って、
視界を開くことができるんです。
私自身もそうだったように
勇気を出して、一歩を踏み出してみれば、
世界は広くて、優しいよっていうことを伝えたいんですよね」。

そんな人のために、「お楽しみ会」を企画。
8月は、ゲストを招き、自家製めんつゆを一緒に作ったり、秋のおしゃれのワクワク妄想会を。
自分のこれからの毎日をアップデートしたり、ワクワクするヒントをもらえそうなことを、
みんなでシェアするのだとか。

さらには、「反省」ではなく「ふりかえり」をするための
「花咲く毒だし会」なども。
「自分の小さな選択が、自分の幸せを作っていると実感できるといいですよね。
今の自分の状態を目をそらさずに見つめて、受け止める練習をすれば、
自分の奥底にしまいこんだ、自分の気持ちを拾い上げることができるんです。
大事なのは『反省』じゃなくて、『ふりかえり』ですから」
というきやまさんの言葉に深くうなづきました。

これらの情報は、きやまさんのインスタでぜひチェックしてみてください。

コーチングというと、悩みを抱えている人が申し込むもの、と思っていました。
でも、「別に悩んでいなくたって、来てもらっていいんです」
ときやまさんは笑います。
「人に話をを聞いてもらったら、ちょっと風穴が空くかも。
そう思って訪ねてきていただけたらいいかな」。

たとえば、「ずっと家を片付けたいと思っているのに、
時間の管理が下手だし、ちっとも手がつかない」という人にもおすすめ。

「どうして、片付けたいのか?
どうして時間管理が下手だと思うのか。
そんなあれこれを紐解いていくと、意外に『実は片付けたいと思っていない自分』
を見つけたりするんです。
だったら、片付けなくていいじゃん!
そう思えば、ぐんと気が楽になります。
それで自分がご機嫌になるなら、いいでしょう?
みんなが正解と思うことが、自分にとって正解でないかもしれない。
大事なのは、思い込みという『フタ』を外すことですから」。

 

なるほど!
だったら、私にも思い当たります。
貯金をしなくちゃと思っているのに、お金がたまらないのはなぜなんだろう?
歳をとるのが怖いのはなぜなんだろう?
親の介護で気が重いのは、どうにかならないのかな?

そんな心の奥にあるなんとなくの不安……。
それは、今すぐ取り除かなくちゃいけないほど切羽詰まってはいないけれど、
その正体に気づくことができたら、
もっと健全に、もっと安心して生きていけるかも。

ここにあるのに、私に見えていないものってなんなのだろう?
コーチングって、
それを見るメガネを与えてもらうってことなのかな?

お話を聞いているうちに、俄然きやまさんのライフコーチにムクムクと興味が湧いてきました。
そして、この取材が終わったあとコーチングをお願いしてみようかなあ、と思ったのでした。

今回お話を伺って感じた、いちばん確かなことは、
きやまさんのライフコーチングは、話を聞く誰かへの愛に満ちているということ……。
苦しんだ過去があり、
話を聞いてもらって救われた経験があるからこそ、
「聞く」ことの力を信じている……。

「誰かの役に立てたら……」
そうやって、人の話を全力で聞く。
シンプルだからこそ、まっすぐにその人のいちばん大切な部分に作用する……。
それが、きやまさんのライフコーチングの本質でした。

 

もし、「私もちょっと話を聞いてもらおうかな?」
と考えたら
ぜひトライしてみてください。
まずは、自分を離れ、誰かの力に頼ってみる。
それが、自分を変える第一歩かもしれません。

詳細は、こちらをチェックしてみてくださいね。

きやまさんのインスタグラムはこちらです。

 

撮影/黒川ひろみ

このコンテンツ「私を見つけて」プロジェクトにご興味がある方は、こちらをご覧ください。


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