全力で自分の話を聞いてもらったことがありますか? ライフコーチ きやまりえさん vol.1

 

 

「私を見つけてプロジェクト」、5人目のご紹介です。

誰かに、全力で自分の話を聞いてもらったことがありますか?
ただただ、「私の話」を黙って聞いてくれる。
そして、「そうだね……」と言ってくれる。

そんな「誰か」がいるだけで、人は自分で自分を幸せにすることができる……。
その力を教えてくれたのが、きやまりえさんでした。

少し前まで小学校の先生だったそうです。
11歳、9歳、4歳と3人の兄妹のお母さんでもあります。
毎日朝から晩まで全速力で走り抜けて、仕事を家事と子育てを両立してきました。
なのに……。

2021年、コロナの真っ只中に、13年間続け「大好きだった」という教師の仕事をやめてしまいます。
そこには、お話を聞かせていただくだけで、胸がギュッと捩れるようなつらい経験がありました。
そんな中で、たまたまインスタグラムの投稿で知ったのが
ただただ、「私の」話を黙って聞いてくれる、という人だったそうです。

聞いてもらうことで、きやまさんの人生は、グルリと回転し、
新たな扉がパカッと開きました。
今まで見えていなかった、見てみぬふりをしてきた自分の姿が見えるようになり、
「私が」何をしたいのかが、クリアになってきたそう。

そんな経験を経て、
今、きやまさんは今度は自分が話を全力で聞く「誰か」になろうとしています。
2021年に立ち上げたのは「ライフコーチ」という仕事。

いったいどういう仕事?
ということをお聞きするために話を伺いました。

「ライフコーチ」を言葉で説明するのは、とても難しいのです。
いったいどういうことなのか?
そこでまずは、きやまさん自身の
「聞いてもらうこと」で新たな人生を手に入れたという体験を
伺うことにしました。

古いマンションのリビングに一歩入ると、なんて気持ちいいんでしょう!
アンティークのダイニングテーブルを中心に、
部屋のあちこちに、みずみずしいグリーンが飾られ、
小さなお子さんが3人もいるとは信じられないほど、
隅々まですっきりと片付いています。
ソファには、カラフルなカバーのクッションが並び、
キッチン横の棚には、
「きっと器好きなんだろうなあ」と一目でわかる食器棚がありました。

「わあ、今度インテリアの取材をお願いしたいです〜!」
と思わず仕事モードになってしまったワタクシであります(笑)

「以前からインテリアは大好きだったんですが、
教師を辞めて、やっと今、ゆっくり家での時間を楽しむことができるようになったんです。
教員時代は、朝7時に私がいちばんに家を出て、あとは全部夫に丸投げ(笑)。
夕方は、上の子と下の子を別々の保育園に迎えに行って、
7時半ぐらいに帰宅。
ご飯を作って、9時には子供たちを寝かせる、と決めていたので、
いつも子供達に『しゃべらないで!』って怒っていました。
学校ではすごく優しい先生で『大丈夫だよ、先生、ちゃんと待ってるから」
って声をかけているのに、我が子には「しゃべらないで早くして!」なんて…。
その乖離もつらかったんですね」
と正直に教えてくれました。

実は、「先生になりたい」と思って仕事を選んだのではないのだと言います。

長崎県出身のきやまさん。
祖父母、歯科医院を営む両親、弟さん、教員をしていた叔父と2人の叔母、その子供たち(従兄弟)
という11人の大家族の中で育ったそう。
「女の子でも、勉強して自立しひとりで生きていける職業につきなさい」というものさしで厳しく育てられました。
長女だったこともあり、
「お姉ちゃんだからちゃんとしなくちゃ」「家族に迷惑をかけてはいけない」「結果を出さないと認められない」と思い込み、
いつも笑顔で大人たちの顔色を見る子供だったそう。
そんな中で「自分のことを誰も知らない広い世界に出て、新しい景色が見たい」と強く思うようになりました。

ご両親は歯学部や医学部、薬学部に行くことを望んでいたそうですが、
「親と同じ道を進むと、親の敷いたレールから一生出られない気がするから」と、
その道だけには絶対進まないと決め、
家を出て県外で生活することを認めてもらうために「教育学部」を受験したのだと言います。

つまり、ご両親に独立を認めてもらうために選んだのが「教師」という仕事でした。
ずいぶん後に、きやまさんはやっと、この「自分で選んだわけじゃない」という事実に気づくことになります。

見事合格し、福岡で念願の一人暮らしに。
「大学時代は、バイトをしてはバックパックを背負い、
アジアやヨーロッパを旅して回っていたんです」ときやまさん。
そんな中で、旅の情報交換サイトで出会ったのが、
大学を休学して世界一周旅行をしたという、現在の夫でした。
「出会ったその日に意気投合。こんな生き方もありなんだ!って視野が大きく広がりました」。

大学院修了後、公立小学校の教師に。
4年間勤めたのち、いったん退職し、夫と世界一周の旅へ。
1年3か月で6大陸37カ国を旅したそうです。

あの、私が驚いた、すっきりと片付いた部屋の理由のひとつが
ものの少なさにあります。
必要なものだけで暮らす……。
それは、旅をすることで身についた術。
さらには、「またいつか旅立つため」の暮らしの形でもあるよう。

帰国後に教員に復帰。
出産し、働く母として30代を必死に駆け抜け、
40歳のとき、第三子の娘さんを授かりました。

今までの旅の写真を本にまとめて

 

ボリビアのウユニ塩湖で。

ナミビアのナミブ砂漠にて

 

事件が起こったのは、その育休中のことです。

息子さんの通う小学校で学級崩壊が起こりました。
子どもたちは先生の言うことを全く聞かず、落ち着いて授業ができない。先生は日に日に元気がなくなりました。
「先生の指示が通らず、子どもたち同士で大声で注意し合う声ばかり響く授業、
授業中うろうろする子、机の上に立ち上がる子、授業をボイコットする子……。
だんだんクラスの雰囲気がぎすぎすし、教室の落ち着きがなくなっていって」。

きやまさんは、ご自身が教員といいうこともあり、今何が起こりつつあるかということを理解していました。
だから、担任の先生に声をかけたり、スクールカウンセラーに相談して、クラスの様子を見に行ってもらったり。
その間に、今度は子供たちの間でも喧嘩やトラブルが勃発。
きやまさん夫妻も、校長先生、教頭先生、学年主任、そして担任の先生と何度も面談をしたそう。

そんな中で、学校への不信感や不安が募っていったのだといいます。
先生の口から出る、子どもへの心ない言葉にショックを受けたことも。
ここには、書けないけれど、
実際きやまさんが投げかけられた言葉を聞いて、
なんという言い方!と私までがびっくりしました。
そう、あのきやまさんが相談にのってあげていた先生の言葉です。

「えっ?て思わず息を呑みました。
一生懸命、親身になって相談にのっていたのに……。
今は、やっと大丈夫になりましたけれど、
少し前まで、その時のことを思い出したら涙が止まらなくなるぐらいショックで……。
でも、何より落ち込んだ理由は、その時の自分自身の態度でした。
取り乱して、殴りかかってもよかったぐらいだったのに、
『あそこの親、教師なのに‥‥』と言われないように、
何があっても動じない『落ち着いたお母さん像』を演じてしまった自分が情けなくて。
子供のことを守るとかいいながら、結局私は自分のことを守っているだけなのかも。
私はいったい何がしたくてここにいるんだろう?
私の生き方はこれでいいのかな?とわからなくなりました」。

あまりにも理不尽で、つらい出来事が続き
「このままじゃ私、ダメになる……」と感じ始めた頃に
インスタグラムで出会ったのが、「ただ話を聞いてくれる」人だったというわけです。

話を聞いてもらったきやまさんに、いったい何が起こったのか。
次回はそんなお話をじっくり伺います。

今、きやまさんはご自身の体験をもとにコーチングを学び、
ライフコーチとして活動されています。
「ただ、話を聞く」ということで生まれる大きな力を実感している最中。
「話を聞いてもらう」には、
大きな悩みがある必要はありません。
なんだか、もやもやする。
何か、自分が本当の自分とつながっていない……。
どこへ向かって進めばいいかわからない……。
そんな人は、ぜひ一度体験していただきたいなあと思います。

次回に詳しい活動をご紹介しますが、
もし興味を持った方がいらしたら、こちらをのぞいてみてくださいね。

きやまさんのインスタグラムはこちらです。

 

撮影/黒川ひろみ(旅の写真以外)

このコンテンツ「私を見つけて」プロジェクトにご興味がある方は、こちらをご覧ください。

 


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