近所のスーパーでいちばんおいしそうな醤油を選べばそれでいい。山本智さん、綾子さん vol.3

 

一足早く新たな道を見つけた方に
新しい暮らし方、働き方についてお話を伺うこのコンテンツ。

私のインタビューなどの文字起こしを手伝ってもらっていて、
このサイトでも、以前「きときとノート」を書いてくれていた、あやちゃんこと山本綾子さんと
夫の智(さとる)さんをご紹介しています。

長野県伊那市に、築150年の古民家を買い移住したというおふたり。
vol.2では、移住前の東京での生活について伺いました。

都内では、商業施設で施設の設備管理と、お客様対応を担当していたという智さん。
新卒で保険会社に入り、いわゆるエリート街道まっしぐら!
営業だったので、夜討ち朝駆けで仕事をしていたそうです。
その後いくつかの転職をし、その度に一生懸命働いてきたのだとか。

「仕事をしながら、これが本当の生きがいなのかな?という自問自答はしていましたが、
やっぱり日々の中で仕事の結果が出ると、それを生きがいだと感じていたんでしょうね。
でも、これが理想の生き方だったっけ?とふと思い出したりもして……」

一方あやちゃんは、お母様の夢だった看護師の仕事についたものの
自分にはまったく向いていないことを知り退職。
大きな挫折を味わいました。
その後、飲食店や雑貨店で働きましたが、
どうしてもうまくいかず、智さんと出会った当初は、
自分の殻に閉じこもり、外に出られないという「暗黒の時代」を過ごしていたそう。
今の明るいあやちゃんの姿を見ていると信じられません。

あやちゃんは、智さんと出会ったことでやっと安心し、
あきる野市に引っ越したことで、無理をせず、ゆったりと暮らすことができるようになったのかも。

 

 

あやちゃんは今、文字起こしなどの仕事は手掛けているけれど、
「基本的に私は専業主婦なんです」と語ります。

「僕はポリシーとして『俺が食わしてやっている』って言いたくなかったんです。
でも喧嘩して、つい『こんな苦労して働いているのに』って口走っちゃった。(vol.1でのお話)
そうしたら、あやちゃんが『辞めてもいいよ』って言うから、『あれ?、辞めてもいいのかな?』
って思うようになったんです」

仕事を辞めてもいい。
どうやら、ふたりの胸の中に長い間眠っていた、共通の思いが、
ふとした拍子に冬眠から醒め、
ムクムクと動き出したことから、今回の移住が始まったよう。

「ただ、そこから計画はしました。
辞めても暮らしていけるのかどうか」と智さん。

そこの算段はどう考えたんですか? と聞いてみました。

「おへその別冊の『わが家のお金を整える』の中に、家計を一覧表に書き込めるページがあったじゃないですか?
あれをふたりでやってみたんです。一度お金の流れを全部洗い出してみようと思って」とあやちゃん。
「そうそう、どんな稼ぎ方をしたら暮らしていけるのかを考えるためにね」と智さん。

なんとなんと! あのおへその別冊が役立ったなんて!

 

 

「そうしたら、2人で月に20万円あれば生きていけるね、っていうことがわかって。
保険は別だけれど、家を買ったら家賃もかからなくなるし。
20万円という数字が出たことで、移住がより現実的になったと思います」(あやちゃん)

「今まで2人で月に4万円の食費だったけど、子供がいても月2万円でやっている家庭もあるし……。
あやちゃんのお小遣いをちょっと減らしてもらったり(笑)」(智さん)

「私は油断すると、すぐいいオリーブオイルとか、お醤油とかを買いたくなるから(笑)
でも、収入に見合った支出にするのは、家計管理としては必要なことなので、
まあ苦手なんですけど(苦笑)。
少し前では、自然食品店の調味料を取り寄せたりしていたんですが、
それが近所のスーパーに変わったとしても、そのスーパーの中で、
自分の最高峰を見つければいい。そんな気持ちでやっています」(あやちゃん)

その辺りの暮らしのサイズダウンをするのは、抵抗はなかったのでしょうか?

「そうですね。買うもののグレードを下げるとか、
とにかく安いものを、って考えちゃうと苦しくなっちゃうけれど、
自分が買える範囲の中で、いちばん楽しいものを選ぼう! みたいな感じかな。
一緒にスーパーに行くと、いつもさっちゃんに呆れられるんです。
私は、調味料を選ぶのでも超真剣なんですよ。
醤油の棚の前で、どれがおいしいかな? ってすごく悩むんです(笑)」とあやちゃん。

なるほど〜、と深く納得しました。
お金に対する意識を変えることは、人生を変えることそのものだなあと思います。
でも、普段なかなかそこにタッチできない私たち………。
今回生活費のことまで、正直に話してくれたあやちゃん夫婦に心から感謝します。

そんなふたりの姿は、私にとってのお財布ってなんだろう?
と考えるきっかけをくれました。

次は、いよいよ実際に物件を見つけ、購入するまでのお話を伺います。

 

撮影/近藤沙菜

 


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