移住のきっかけは、夫が「仕事を辞めたい」と言ってくれたこと 山本智さん、綾子さん vol.1

 

 

昨年からの世の中の流れの中で、
当たり前だったことが当たり前でなくなり、
改めて「私が歩いて行く道って、どこだったっけ?」と考える機会が増えました。

そこで、一足早く新たな道を見つけた方に
新しい暮らし方、働き方についてお話を伺うこのコンテンツ。
今回からは、
私のインタビューなどの文字起こしを手伝ってもらっていて、
このサイトでも、以前「きときとノート」を書いてくれていた、あやちゃんこと山本綾子さんと
夫の智(さとる)さんです。

昨年末のこと。
あやちゃんから、突然の連絡がありました。

「実は、長野県に移住することになりました……」

 

え〜〜〜〜!!
聞いてないよ〜〜〜〜!

あやちゃんとは、文字起こしのデータのやりとりを比較的頻繁にしていて、
そのメールで、最近食べたもののこととか、手掛けている畑の収穫のこととか、
雑談レベルでやりとりをしていたので、
「移住」という、人生最大の出来事にびっくりたまげたのでした。

 

よくよく聞いてみると、
なんとなく、ぼんやり夢は持っていたものの、現実になるなんてあやちゃん自身も
まったく考えておらず、
バタバタと、いろんなことが突然転がり始めたのだとか。

 

 

あれよあれよという間に準備がすすみ、
気がつけば、古い家をトンカンと手直ししている様子が、
時折、あやちゃんのインスタグラムのストーリーにあがるようになりました。

東京のはしっこ、あきる野市で夫婦ふたりで、猫のしんちゃんと一緒に暮らしていたあやちゃん。
これは、じっくり話を聞かなければ! と
「新居で、話を聞かせて〜」とお願いしました。

「まだ住める状態じゃないし、外のような室内だけど、
薪ストーブだけはついたから、来ていただいて大丈夫ですよ〜」とのお話。

そこで、いそいそと出かけていったのでした。

東京から車で3時間ほど。
やっと到着したのは、長野県伊那市の小さな集落でした。
あやちゃんちは、なんと明治5年に建ったという古民家。

そこで、ご主人の智さんと一緒にゆっくりお話を伺いました。

 

 

そもそも、移住しようと思ったきっかけは、いったいなんだったのでしょう?

あやちゃん
「私が思ういちばんのきっかけは、さっちゃん(あやちゃんは、智さんのことをこう呼びます)が
『仕事辞めたい』って言ってくれたことです。
ある日、夜中に起こされて『仕事辞めてもいい?』って言われたんです(笑)
その数日前に、大喧嘩をして、さっちゃんが
『こっちは辞めたいぐらい仕事大変なんだから!』って言ったんですよね。
それまで、仕事の愚痴なんてほとんど言ったことなかったのに……。
だから私は『そんなに辛いんだったら、辞めることを考えてもいいんじゃない?』って言いました。
それを経ての夜中の出来事です。
私は、夜中に起こされるなんて、胸が苦しいとか、
何か体の具合が悪いんじゃないかと思ってびっくりしたんですよ。
それが、仕事の話だったんで、『ああよかった』と思いながら
『うん、辞めてもいいと思うよ』って言いました」。

私はこのあやちゃんの「『仕事辞めたい』って言ってくれたことです」
という答えの中の「言ってくれた」という言葉の使い方が胸に残りました。
あやちゃんは、基本的に専業主婦です。
つまり、家計を支えているのは夫であるさっちゃんだったというわけ。
普通なら、その大黒柱が「仕事辞めたい」と言い出したら
あたふたすると思うのに……。

ああ、あやちゃんは今回の選択を、心から喜んでいるんだな。
そう感じました。

次回から、移住に至るおふたりの歩みをさらに詳しく伺います。

 

 

撮影/近藤沙菜

 


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