家の中を見ずに、築150年の古民家購入決定! 山本智さん、綾子さん vol.4

 

一足早く新たな道を見つけた方に
新しい暮らし方、働き方についてお話を伺うこのコンテンツ。

私のインタビューなどの文字起こしを手伝ってもらっていて、
このサイトでも、以前「きときとノート」を書いてくれていた、あやちゃんこと山本綾子さんと
夫の智(さとる)さんをご紹介しています。

長野県伊那市に、築150年の古民家を買い移住したというおふたり。
Vol,3では、1か月にいくらあったら暮らしていけるか、そんなシュミレーションをしたお話を伺いました。

智さんが仕事を辞める決心をしたのと同じタイミングで、インターネットで家を探し始めました。
最初は埼玉や千葉などの近場で。
「仕事を辞めるって言い出したものの、自分の年収を手放すのが、
なんだかもったいなくなって、無意識に近場を選んでいたのかもしれませんね」と智さん。

なのに、あやちゃんといったら、九州や四国の物件を見ていたそう。
「そうそう、高知でみかん農家の後継者を探しているよ。家も畑もついてくるよ!とか
仕事を辞めるんだったら、何のしがらみもないから、日本中どこでもいけるなと思って」と大笑い。

そんな時に見つけたのがこの物件でした。
ふたりともすぐに気に入ったものの、コロナ禍で、すぐに見に行くことができなかったそう。

「まずはさっちゃんが不動産屋さんにメールをしたんです。
そうしたら、『先客がいるけれど、コロナで地主さんとなかなか会えなくて、
その人が諦めかけているところです』というお返事で……。
これは、ここでプッシュしないと、と手紙を書きました」と智さん。

「驚いたのは、その手紙を自分で長野の不動産屋さんまで手渡しに行っちゃったんです。
郵送すればいいのに」とあやちゃん。

 

「そうしたら、不動産屋さんが不在で、ポストに入れて帰ってきたら
次の日に電話がかかってきたんです。『こんなに熱心にやってくれただなんて。ぜひあなたにお願いしたい』って」

 

 

このやりとりをしていた時、
まだ家の中までは見たことがなかったと言いますから驚きです!

「手紙を届けに行った時に、外からちらりと家を見て、
ハイキング客を装って、辺りをぐるぐると下見しました。
これはいいところだなあと思って。
敷地は十分広いし、築150年で、梁も太くて立派な建物だってことはわかっていたので。
果樹を植えたり、ウッドデッキを作ったり。
なんでも自由にできる広さが欲しかったんです。
なにより山間の小さな集落で、山が近くという環境が素晴らしくて」と智さん。

こうして購入を決定!
あやちゃんは、まだ現地にも行っていませんでした。

「ネットで物件情報を写真で見ていたし、
室内は、さっちゃんが直す気満々だったので。
不動産屋さんが『本当にいい素材を使っているから、きれいにしたら絶対にいい家になるよ』
と言ってくださったのも大きかったですね」とあやちゃん。

 

こうして、ふたりで大家さんに会いに行き、購入が決まったというわけです。
実はこの取材に行った時には、まだ正式な売買契約は済んでいませんでした。
「不動産屋さんから鍵をいただいて、
『もう住んでいいし、好きに修理も始めちゃっていいですよ』って言っていただいたんです」とふたり。

 

智さんは昨年10月に正式に会社を辞めました。
「自由になれたな、って思いましたね。
若い頃からの夢がやっと叶えられそうだなって。
まあ、仕事を失うから、このあと現実の世界がやってきますが」

 

 

こうして、丸ごと自由な時間を手に入れた智さんは、
あきる野市から通って、改装に着手。
畳を外に出して、床を張り、壁を壊して開放的な空間をつくり、薪ストーブを入れて。
そんなすべてをたったひとりで手掛けたといいますから、そのスキルはすごい!

「薪ストーブは、設計が難しかったですね。
熱源から可燃物までどれぐらいの距離を取らないといけないとか、
床も加熱のタイルを敷き詰めないといけないから、床下の素材をどうするとか、
煙突から天井板まで何センチ離さないといけないとか」と智さん

 

「めちゃくちゃ細かく設計図を描いていたんです。
それを見て本当にびっくりしました。こんな図面も描けるの?って!」とあやちゃん。

ストーブがついて、ようやく泊まれる状態になってから、
部屋の中にテントを張り、寝袋で寝るようになりました。

あやちゃんも、ゴミの分別をしたりと、細かい作業を手伝います。

 

 

今回のことで、智さんのこと、惚れ直したんじゃない? とあやちゃんに聞いてみました。

「もうびっくりです!
こんな力を持った人だったの?って。
今は子供みたいに、全力で改装に取り掛かっていて、
もう楽しくてたまらないって感じなんです。
1日も早くここに来たい、1秒でも早く着きたいって感じで。
今日だって、まだ真っ暗な4時半に家を出てきましたから」とあやちゃん。

次回は、いよいよ最終回。
これからの2人のことについて伺います。

 

撮影/近藤沙菜

 

 


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