初めて会った夫は、「自由」を持っているように見えた。 サボンデシエスタ 附柴彩子さん vol.1

 

 

イマイチ夫に、自分の本当の思いが伝わらない……。
ちょっと声をかけてくれたら、ずいぶん気持ちが変わるのに……。
そんな風に夫に対して、がっかりすることはありませんか?
そして、「これって、夫婦でいる意味ってあるのかな?」と
ちょっと悲しくなる……。

新コンテンツ「夫婦って、なあに?」では、
いろいろな方に、これまでの夫婦の歩みや、夫婦の在り方、
夫への思いの伝え方、違いはあっても「それでも」と一緒に歩き出す方法などを伺う予定です。

第一弾の久保輝美さんのお話は、多くの方が「そうそう」と読んでくださいました。

第二段は、北海道札幌市で、石鹸を販売する「サボンデシエスタ 」を夫婦で経営されている
附柴彩子さんにお話を伺います。

私たち女性は、きっと脱皮が好きなのだろうなあと思います。
新しいことを知り、暮らしに取り入れて、何かを発見し、自分をアップデートしていくことが楽しい!
側から見れば、ささいな習慣でも、それを1日の中に組み込むことは、
生き方、暮らし方までを変えることにつながります。

でも、多くの場合男性はそれについてくることができず、ずっと変わらない価値観のまんま。
結局「所詮、言ったってわからない」と、妻は自分だけを更新し、
夫は置き去りになり、どんどん心の差が開いていく……。そんな経験はないでしょうか?

自分が拾った宝物を、自分のものだけにせず、
夫婦で分かち合い、一緒に前進するにはどうしたらいいのだろう? とずっと考えていました。

 

 

もともと肌が弱く、既存の洗顔石鹸では肌荒れを起こしてしまうことから、
大学生の頃から自分のために石鹸を作り始めたという彩子さん。

「植物オイルと水とアルカリを混ぜると石鹸ができあがります。
それを知ったとき、わあ、ケーキ作りとおんなじだ!って感動したんです。
友人たちに配るととても評判がよくて」と晴れやかな笑顔で教えてくれました。

一方ご主人の裕之さんは、ビジネスセンスに長け、
北海道大学卒業後すぐにベンチャー企業を立ち上げ起業した、という方。
彩子さんが作った石鹸をきちんとビジネス化したのが裕之さんだった、というわけです。

 

私にはおふたりが、「夫婦」以上の何かを交換しあっているように見えました。
一緒に仕事をしながら、妻と夫という役割だけでなく、
互いにどこかで得てきたものを相手にパスをし、
自分ひとりでは気づかなかったことに気づき、気づかせる。
互いが互いのメンター(人生の指導者)的役割までを果たしているように見えたのです。
そんな夫婦になるには、どうしたらいいのでしょう?

ただ……。お付き合いが長くなるにつれ、ご夫婦の「現実」もちらりと見えてきます。
イベントなどで出会った時、忙しく準備をするふたりのやりとりを小耳に挟むと……。

「〇〇やっといて」(夫)
「えっ、今?」(妻)
「すぐやらなくちゃ間に合わないでしょう?」(夫)
「でも、今こっちをやってるし……」(妻)。

しかもこのやりとりを、スタッフみんなが見聞きしているわけです。
常に一歩先のことを考えて走り続けるご主人と、それをきちんと形にし「今やるべきこと」を考える彩子さん。
きっとそれはどちらもが必要な「役割」なのだと思います。
彩子さんは、本当のところ、ご主人のことをどう考えているんだろう?
彩子さんにとって「夫婦」ってなんなのだろう?
理想と現実の間にある本当の話を聞いてみたいと思ったのでした。

 

 

彩子さんが裕之さんと出会ったのは19歳のとき。
ふたりとも北海道大学大学院理学研究科卒業と、バリバリの理系夫婦。
てっきり北海道出身かと思っていたら、彩子さんは茨城県出身、裕之さんは千葉県出身で、
大学入学を機に北海道で暮らし始めたそうです。

「彼は大学を転部したので、4歳年上なんですが、同級生だったんですよね。
一年生の教養の英会話の授業で初めて一緒になりました。
彼はいつも教卓の真ん前に座って、しかも全身黒ずくめ。
アルマーニのサングラスをかけて、『なに?あの人?』っていうオーラを出しまくっていたんです」。

“黒ずくめ”だった裕之さんに彩子さんは興味津々で、クラスメイトの中でも真っ先に声をかけたのだと言います。

「一見チャラい感じに見えるんだけれど、授業も真面目に受けているし、きっとちゃんとした人だと思ったんです。
思い切って話しかけてみたら、『自分でバーを経営しているから、今度遊びに来ない?』って言われました。
『え〜?バー?』と思わず聞き返しちゃいました(笑)。
友達を誘って行ってみたら、学生で出資して作ったお店で、彼は金曜日担当でした。
いろんな話をして、すごく楽しかったんです」

つまり、最初に好きになったのは彩子さんの方。
「自分の知らない世界を知っていて、自由を持っている人に見えたんです」。

こうしてはじまったふたりのおつきあい……。
次回から、結婚後の生活についてじっくり伺います。

 

撮影/近藤沙菜


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