夫と言い合いをしたり、思っていることがうまく伝わらなかったり、
価値観のあまりの違いに愕然としたり……。
その度に「やっぱりこの人と結婚したのは、間違いだったんじゃなかろうか?」
と思うことがあります。
そして、そんなことを考える自分にハッとして、なんだか後ろめたい気分になります。
たくさんの人がいる中で、ふとしたことで出会った2人が
スペシャルな縁で結びつき、互いに必要とし、愛し合い、一緒に生きることを決める……。
夫婦って、そうやって生まれた唯一無二に見える関係だけれど、
その実態は、それほど確固としたものではないんじゃなかろうか?
もっともろくて、揺れやすく、
ちょっとしたボタンのかけ違いで、たちまちガラガラと崩れていく。
そんな危い関係なのかもしれない……。
だったら「夫婦」ってなんなのだろう? と考えるようになりました。
そして!
「夫婦ってなに?」というこのコンテンツの一番手として
久保輝美さんにお話を伺いました。
久保さんは、埼玉、浦和でベーグルを「繋ぎ」とし、
幸せを共有する場所を提供する「kuboぱん」という店を今年6月で閉店されたばかりです。
実は久保さんは、27歳で結婚して11年後に離婚。
そしてなんと同じ人とまた再婚したというびっくりたまげる経歴の持ち主です。
そのことを話してくれたとき、「も〜ね〜。バカみたいでしょう?」
と笑い飛ばしていたけれど、「どうして?」と聞く勇気がありませんでした。
お互い関西人同士で、いつも茶化してなんとなくスルーしていたその話題を、
今回じっくり伺ってみたいとお願いしました。
まずは、そもそもの夫婦の「はじまり」からお話を聞いてみることにしました。
大阪出身の久保さん。
地元で就職した通信社でご主人と知り合い結婚。
実はその頃、うまくいかないことが重なり、失意の底にいたのだとか。
「そこにすっと手を差し伸べてくれたのが夫でした。
あなたはあなたのままでOKだよ、と言ってもらえたような気がしたんです」
「手を差し伸べてくれた」ということは、
自分から「手を握った」=「自分で選んだ」わけじゃなかったということ?
とちょっと意地の悪い質問をしてみました。
すると久保さんは、正直にこう語ってくれました。
「もうどうにでもなれっていう感じで結婚したんです。
だから『この人じゃなきゃ』って確信したわけじゃない。
だってギャンブルじゃないですか、結婚って!
たまにいる仲のいい夫婦は、大当たりなんだと思います」。
「大当たり」という言葉にクスッと笑いながら、なんだかほっとしました。
「夫という生涯のパートナーを選ぶのに、そんなに不確かでいいんでしょうか?」
とさらに聞いてみると……。
「あのね、私の感覚なんですけど、誰と結婚しても、
同じ悩みは起きるんじゃないかと思うんです」と久保さん。
なんだ!夫婦の始まりは、そんなに重要なことじゃないんだ……。
このことに、私はとても安心しました。
時々、「夫のことが大好き!」
「会ったとたん、ピピピときたんです」という人に会います。
その話を聞きながら、「私は、そんな確信と共に結婚したんじゃないし……」
「だから、今もすぐ揺らいじゃうのかな?」と
自分の足元がちっとも固まらない気がしていたから……。
私たちは夫婦関係がぎくしゃくしてくるとつい、「はじまり」を疑いたくなるのです。
「そもそも結婚したことが間違いだったんじゃないか?」
「あの時、別の人生を選んでいれば、今頃は……」。
それは、きっと「今」から目を背けたいだけ。
きちんと向き合わなければいけない現実から逃げて、
すべてを「ゼロ」にした方がラクという錯覚に陥るだけ。
久保さんのように、「誰と結婚しても同じ悩みは起きる」と腹を括れば、
どうして夫にムカつくのか、
どうして、優しくできないのか、
どうして、2人で生きていることに感謝できないのか、
の根底にある「自分の在り方」に目を向けることができるのかも……。
久保さんの「そもそも」に対する言葉は、
結婚とは、自分の人生に責任を持つスタート地点なのだということを
再認識させてくれました。
次回からは、ちょっと苦しくて悲しかった久保さんの新婚生活について伺います。
撮影/近藤沙菜