自分で自分の味方をする。

週末の東京はしとしととずっと雨が降っていました。
雨粒に濡れて椿の蕾が膨らんでいました。

この時期、木蓮をはじめ、いろんな木々のつぼみが少しずつ大きくなり、
春の足音を感じるようになります。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

先週の火曜日、NHKのクローズアップ現代で、西加奈子さんのインタビューを見ました。
あまりに胸に刺さる言葉がいっぱいで、
もう一度NHKプラスで、メモをとりながら聞き直しました。

ちょっとうまくいかないことがあって、落ち込んだ週末。
そんな中で聞き直したので、一層胸に響きました。

3年前滞在先のカナダで乳がんが発覚し、
そのときのことを書いたドキュメンタリーのご著書「くもをさがす」については、以前書きました。
今回は、それからさらに時が経ってのインタビュー。

「自分がどう歩くかは、自分で決める」
というのが西さんが、一貫して書いてこられたテーマです。

 

 

そんな中で、「自分が自分の歩いていく方向を決める」という強さと共に、
西さんが、「自分の弱さを許してあげる」
と語っていらしたことが、とても印象的でした。

関西人だけあって「つっこみ体質だ」とおっしゃる西さん。
常にもうひとりの自分がいて
「なにやってんねん!」とつっこむ。
でも、それは厳しい自分だけではなくて、
「でも、わかるで〜。頭よく見られたいもんなあ」と
もうひとりの自分がめちゃくちゃ自分に甘くて、
自分の味方をしてくれるそう。

「自分には、あかんところがいっぱいあるし、卑怯やし、うそついたりして
『ああ、やってもうたな』と思うけれど、
同時に『おい、やったな。やったけどまあわかるで」という仲間感があるんです」と。

この言葉を聞いて、なんだかとてもほっとしました。
「自分でじぶんの歩き方を決める」って、強い人じゃないとできないと
思ったけれど、
間違えてもいいんだ、
ダメな自分でもいいんだ。
そんな自分の味方を自分でしてあげればいいんだって。

そうやって、絶えず自分につっこみを入れ、
自分を観察し、自分自身であろうとする……。
それを、西さんは「自分性を取り戻す」とおっしゃっていました。

そして、そんな「自分性」にたどりつくには、とても時間がかかるとも。

すべてがインスタントに答えが出る世の中だけれど、
作家という仕事は、
たったひとつのことをい言うのに、あちこちすべての場所に寄り道して、
やっとたどりつくジャンルなのだそうです。

「インスタントにできる自分は自分じゃない」と西さん。

私が感じることは、自由に感じていい。
ぼこぼこに間違えていい。
間違えて、また元の場所に戻って、また間違えて……。
そうやって、ようやく本当の自分にたどりつく……。

 

1日の最後に、その日1日の自分を見直すのが、西さんの「おへそ」=習慣だそうです。
「どうして腹がたったのか、徹底的に解体するんです」と語っていらっしゃいました。
ついうわべだけで自分を判断しがちだけれど、
腹がたった自分の奥には「負けたくなかった自分」がいるかもしれない。
自分の皮をむいて、その本当の自分と向き合う……。
それはとてもしんどい作業だけれど、
本当の自分がでてきたら、「まあ、わかるで」ともうひとりの自分が認めてあげることができる……。

なるほど〜。
そのサイクルを、私も体験してみたいなあと思いました。

西さんの新著は「わたしに会いたい」(集英社)。
さっそく本屋さんに買いに行こうと思います。

この「クローズアップ現代」のインタビュー、とってもいいので、ぜひみなさんに見ていただきたい!
「  NHKプラス」では、明日まで見ることができます。
できれば、西さんの語りで聞くことをおすすめしますが、
インタビュー全文も公開されていて読むことができます。

人の言葉を聞くって、やっぱり素晴らしい体験ですね。

みなさま、今日もいい1日を。


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