エヌ・ワンハンドレッド 大井幸衣さん NO5

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「100年たってもずっと好きなものを」
とカシミヤを中心としたブランド「エヌ・ワンハンドレッド」を
立ち上げた大井幸衣さんに
ビジネスとお金にまつわるお話を伺っています。

私が初めてエヌ・ワンハンドレッドを知ったのは
根本きこちゃんが着ていたからでした。
しばらくすると、仲のいいイイホシユミコさんが
カタログに登場しているのを見つけてびっくり!

これも、大井さんのプロモーションのひとつです。
このカタログは、その後料理家の渡辺有子さん、ガラス作家の辻和美さんなどが
モデルとなり
その人らしさ、ライフスタイルとひとつになったおしゃれが
大きな話題を呼びました。

「うちの服は、すっごくシンプルだから、
モデルのように誰かに着せただけでは、魅力が伝わらないと思ったんです。
カタログに出ていただいたのは、
本当にエヌ・ワンハンドレッドのカシミヤを着てくださっている方たちだったので、
一番説得力があったんですよね」

写真を撮ったのは、プロのカメラマンではなく、
「マーガレットハウエル」時代の仕事仲間、
現在は原宿でカフェ「SW11」を営む渡辺靖子さんでした。

「イイホシさんにもほぼノーギャラでモデルをやってもらいました。
当時のアトリエを撮影場所に借りて。
だから、お金かかってないんですよね〜」

こういうところも大井さんらしさ。
普通なら、ブランドを立ち上げる、となると
はりきって、多少経費がかさんでも、プロのモデルやカメラマンを使わなくちゃ
と思いがちなのに……。

「事務所も借りず、自宅の一室で始めました。
こんなに続くとは思わなかったし、
いつでもやめられるように、って思ってたんです」

引っ越しや旅、洋服など、使うときには驚くほど気前よくお金を使うのに
無駄だと思ったところは、とことん倹約する……。
そのメリハリに、
私はなんて無自覚に「なんとなく」お金を使っているんだろう……
とこれまた反省させられました。

 

大井さんは、ブランドを立ち上げるにあたって、
大きく儲けよう、とはまったく思っていなかったと言います。

「小さく作って利益が出ればそれでいい。
もっと大きな利益を出そうとすると、やっぱり大きな資本で大きくしかけないと
いけないから。
私たちは、最初から価格競争には参加していない。
ただ、こんなにスピードをもって、浸透するとは思っていなかったですね。

でも、広げすぎないようにしていましたね。
お取引先の店舗は、地方でも必ず見に行っていましたから。
いちばん強いのは、オーナーの方が自分で着ていいと思ってくださること。
だから、この人が売ってくれているとか、
この人が大好きでいてくれるとかが、わかるようなお店だけに卸すようにしていました」

そんな大井さんに
ビジネスを「続ける」ためにはどうしたらいいのか、
聞いてみました。

「売れるから、自分たちは着ないけれどたくさん作ろう
ってことは絶対しない。
売れているけれど、もういいなと思ったものはやめる。
だから、『エヌワンハンドレッド』のアイテムは、
変化していないようで、実はすごく変化しているんです。

 

実は、このお話を伺ったのは、2016年の8月でした。
そして、ちょうどこの時期、大井さんは新たなことを始めようとされていました。

最終回は、大井さんの「これから」について伺います。

 

 

 


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