大洲からインターネットで広い世界と繋がる。「SA-RAH」帽子千秋さんその2

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愛媛県大洲市で、リネンやコットンなど天然素材を使った洋服を作るショップ「SA-RAH」を
営む帽子千秋さんにビジネスについてのお話を伺っています。

原価率や経費など、「お金」を見ないで、好きな洋服を作り、ハッピーに生きていけるか、
「実験中」という帽子さん。

そんな「実験」が、たまらなく素敵だなあと思いました。
そして、ぜひ結果が聞きたいなあと楽しみになりました。

「洋服屋さんになるつもりなんて、全くなかったんです。
服作りの勉強もしていないし、小さな頃から縫い物が大好きっていうわけでもなくて‥‥」。

 

そんな帽子さんが、始動したのは娘の紗貴ちゃんを産んでから。

「彼女のスタイや洋服作りを始めたんです。
赤ちゃんが生まれるからなにか作ろっかな〜と軽い気持ちで。
そうしたら、ただ生地にゴムを入れるだけで可愛いスカートになる!
うわ〜、たのし〜!と夢中になって。
その子供服作りが今に繋がっているだけなんですよね」

 

ただし、ただの”手作り好き”だけに終わらなかったのが帽子さんのすごいところ。

「保育園で一番大事なのが、本人が脱ぎ着しやすいってこと。
さらに、毎日洗濯をしても耐えられるよう丈夫だってこと。
そして、見た目がかわいいってこと。
手作りの服って、どうしても貧乏くさくなりがちなんですよね。
私、若い頃から洋服がすごく好きだったので、いっぱいお買い物もしていたんです。
それに馴染む服が作りたいと考えました。
手作りの洋服を組み合わせるのではなく、市販の服にいかにすんなり馴染むか……。
そのためには、生地選びもすごく大事。
インターネットで『チェック&ストライプ』の生地などを取り寄せていましたね」

 

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もう一つ、帽子さんは大切なことを教えてくれました。

「この大洲にいるのに、私が今、日本各地にいるいろんな人と繋がれたり、都心に住む人と
比べても、手にする情報に差がないのは、やっぱりインターネットのおかげなんです」

 

娘の紗貴ちゃんが5歳の頃から、洋服作りをはじめ、同時に自分でホームページを立ち上げた
と言いますがら驚きです。
当時は、今のようにソフトもなく、ホームページビルダーを使って、知り合いに教えてもらいながら
の作業だったそう。

「『それって難しいのよね』『私機械苦手なのよね』と言うよりも、興味の方が優っていました。
娘に『SA-RAH』の洋服を着せて、写真を撮って、アップして……。
まだその頃は、ネット販売もしていなくて、ただただ娘に好きな服を着せて『かわいいね〜』って
写真を撮って、『見て見て〜』って言ってた感じかな(笑)。

でも、インターネットでの繋がりで、私は日本各地にいろんな人がいることを知り、いろんな生地屋さん
を知り、私自身も発信できるようになったんです」。

 

この、大きな視野こそ、帽子さんの強みなのかもしれません。
手の中の針と糸だけでなく、それを娘に着せた姿を1枚の絵としてとらえ、ネットにアップし
その写真を見てくれる人がどこかにいることを感じ……と
視点を少しずつ広げていく……。
視点を広げれば、まだ見ぬ人と繋がれて、できることがどんどんと広がって行きます。

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やがて、紗貴ちゃんは身長が155㎝になり、着る服も大人と変わらなくなっていました。
実は、帽子さん、娘のためには洋服を作るけれど、自分のためには1着も作っていなかったそうです。

「大人服なんて作れるはずがない、って思っていました。
洋服が好きすぎるから、そこに私が踏み込んじゃダメって思っていたんです」

 

でも、紗貴ちゃんの成長に伴い、とうとう大人の服を作ってみることに。
製図の本を見ながら、パターンの勉強をし、初めて正式なパターンを起こしました。
その上で、着心地をチェック。腕の上げ下げがしにくいから、ここをもう少し繰ろうか、
とアレンジを加えていったそう。

「娘に着てもらって、一眼レフで写真を撮って、『SA-RAH春夏コレクション』
として、ホームページ上で発表しました。
田舎って、緑の木々や美しい河原の原っぱなどがあって、ロケーションがすごくいいから
いい写真が撮れるんです(笑)。
そうやって、ある程度カタログ的に皆さんに見てもらっておいてから、
土、日曜の2日間だけ知り合いのお店で展示会を開き、販売を始めました。
最初からウワッと売れたわけではなかったけれど、
徐々にリピーターの方が増えてきて。

私はただ写真を撮ったり、ネットにアップしたり、展示会をすることが
単に面白かったんです」。

実は、このとき帽子さんはまだ銀行にお勤めでした。
仕事から帰り、家族のご飯を作って、洋服作りやネットをアップするのは
みんなが寝静まってから。
なんと言うバイタリティー!!

でも、帽子さんのお話を聞いていると、
「SA-RAH」の仕事を、ニコニコと楽しんで手がける姿が眼に浮かぶよう。

帽子さんの「やり方」は、こんな風にいつも
「ワクワク・ファースト」なのです。
夢を実現するために、苦しいことを耐えて頑張る……のではなく、
目の前にある、「ワクワクすること」から手がけていく。
多少寝不足になっても、ワクワクするから全く気にならない、というわけ。

 

次回は、仕事と子育ての両立、そしていよいよお店オープンのお話を伺います。

 

撮影/近藤沙菜

 

 

 

 


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