【わたしのサードプレイスの見つけ方】〜自分の心とからだの声を大切にする処方箋〜木山理絵

この連載「わたしのサードプレイスの見つけ方」は、今いる場所ではない、もうひとつの場所=サードプレイスを見つけて、扉の開け方を紐解くお話です。

今いる場所に大きな不満はないけれど息苦しさを感じている人や、ひとりでがんばりすぎて苦しくなっている人にとって、自分の居場所を見つけるヒントになりますように。

 


自分の心とからだの声を大切にする処方箋


こんにちは!
“あなたの話を全力で聞く人”として、1対1でお話を聞いたり対話の会を開いたりして活動をしている木山理絵です。

元々小学校教員だったこと、”話を全力で聞く人”としてたくさんの人の人生の歩き方を応援・伴走してきた経験から、現役の教員のクライアントさんからお声かけをいただき、先月、5年生のキャリア教育のゲストティーチャーで小学校に呼んでいただきました。うれしかったな〜

子どもたちへ向けて、「大人になったらどんな職業につきたいか」ではなく「どう生きたいか?」「どんな大人になりたいか?」を一緒に考え、対話する授業をやらせていただきました。

 

そうこうしていてバタバタと過ごしていたら、あっという間に12月も残り10日をきっていてびっくり。
毎年この時期になると、どこからともなく湧き上がる気忙しさやソワソワ感はなんなんでしょう…

やらなければいけないことは山積みなのに、インフルエンザをはじめ色々な感染症が流行っていて、自分や家族の体調がイマイチ。予定通りに物事が進まない、焦りやモヤモヤばかりが募る。

そんな日々を過ごしている方も少なくないのではないでしょうか。

わたくし事ですが、先月46回目の誕生日を迎えました。

世界一周旅行に行くと決めた16年前、夫婦で誕生日にプレゼントし合う儀式は手放したし、誕生日だから!というようなトクベツなものは今の自分にとって優先度がそれほど高くない。

でもせっかくなので、歳をひとつ重ねた記念として、自分の小さな願いを自分で叶えてあげるようにしています。

例えば、普段会いたいけれどなかなか会えない人に会いにいったり、ずっとやりたいな〜と思いつつできなかったことを「えい!」と予約して自分に体験させてあげたり。

今年も、いくつか早めに予約や予定を入れて、目の前に人参をぶら下げつつ、日々の忙しさをなんとか駆け抜けていたのですが…
誕生日の2日前、思いがけない出来事が起きたんです。

久しぶりに強いストレスを感じて、胸が苦しくなりました。みぞおちの辺りの閉塞感、上手に息が吸えない感じは何年振りだろう

その時、改めて思ったんです。
「自分の心とからだの声を大切にする処方箋」を持っててよかったなって。

今日はそんなお話を書いてみたいと思います。
年の瀬で心身ともにお疲れがたまっている方、今まさにストレスを感じている方に、少しでもホッとしてもらえたらうれしいです。

 

5年前の心の傷

まず、その出来事について書く前に、少し時をさかのぼってお話しさせてください。

2020年、コロナ禍1年目の出来事です。
当時小学生だった長男のクラスで学級崩壊が起こりました。

担任の先生は若い女性。初めて学級担任を受け持つ先生1年目。
突然始まったパンデミックにより社会全体が混乱。緊急事態宣言にともなう全国一斉休校で対応に追われる学校のなか、一人で抱え込んでしまっている状況でした。

そんな中、面談中に担任の先生の口から出たのが、長男に対する胸をギュッとしめつけられるような心ない言葉でした。その言葉を聞いた瞬間、私は言葉を失いました。

教員の私だからこそ、先生方の気持ちや状況はよくわかる。担任の先生も、傷つけようと思って言ったわけではない。でも、親として到底受け入れられる言葉ではない。

それなのに、無意識に「場の空気を乱すこと」「母として、教員としての世間体が悪くなること」への恐れが、心の声に瞬時に蓋をして扉に鍵をかけました。

動悸がするほどの強い違和感、悲しみ、怒りに気づいていたのに、ひと言も言葉にすることができなかった自分自身に、すーっと血の気が引き冷や汗をかくほどの嫌悪感を感じました。

複雑に絡み合った整理のつかない感情…
「私はいったい何を大切に生きていきたいんだろう」
この自問自答は、いつのまにか暗く長いトンネルとなり私に覆い被さりました。

気がついたら、出口の見えない真っ暗な道をたったひとりで這っているような孤独と苦しみを抱えて身動きが取れなくなっていました。

その時のことはこちらの記事で詳しく書いています。よかったらお読みくださいね。

 

あの時の記憶がよみがえった

あれから5年。私は教員を退職し、独立。
カウンセラーを経てライフコーチとして活動するようになりました。

教員をやめるひとつの理由となったあの辛い経験も、自分自身が継続的に専門家に話を聞いてもらうこと、これまでどんな人生を歩んできたのか丁寧に棚おろしをして言葉にすることで、いつの間にか自分の奥底に静かに沈んでいたと思っていました。

ところが、誕生日を迎える直前に起きた全く別の出来事がきっかけで、5年前のあの記憶が鮮明によみがえってきたんです。

頭の中の記憶が蘇ったというより、胸の真ん中に何かがつかえて苦しい、呼吸がしづらい…そんな身体の感覚が一気にフラッシュバックしたという方がいいかもしれません。

相手は、傷つけるつもりはない、悪いことだと認識していない(「悪気はない」という言い方をされることが多いですが、悪気がないのに傷つけるのが一番悪いんじゃないかと私は思ってしまいます…)自分や家族、大切な人への心ない言葉に、思ってもみないタイミングで触れてしまった時。

大切な人や自分自身が「人として大切にされていない」と感じた時の衝撃、心の傷は、時間が経ってもなかなか消えないものなんだなと改めて実感しました。

 

「ごきげんスイッチ」だけでは限界がある

独立して半年ぐらい経った頃から、私はインスタグラムで「#きやまりえのごきげんスイッチ」というハッシュタグをつけて発信するようになりました。

生きていると色々あるけれど、「自分のごきげんを自分で取る方法」を見つけてシェアしていたんです。

でも正直、どんなに「ごきげんスイッチ」をONしても全然ごきげんになれない時があります。

自分で自分をごきげんにするどころか、フラットな状態に戻すことすら難しいほど気持ちが揺らぐような出来事が突然降りかかる…。

特に私は、他者の不機嫌が伝わる表情、態度、言葉に触れた時や自分の努力ではどうすることもできない理不尽さに直面した時。

そんな時は、いくらごきげんになろう、ごきげんでいたいと思っても、心がそれを受け付けない時があるんです。

「コーピングリスト」との出会い

そんな時、役に立つのが「コーピングリスト」です。
コーピングリストとは、ストレスを感じた時に自分自身で取り組むための対処法を、事前にリストアップしたもの。

私は「自分の心とからだの声を大切にする処方箋」と名付けました。

ネガティブな感情を無理にポジティブに変換するのではなく、「心やからだの違和感に気づい時は、こんな風に過ごそう」「こんな事をしたら、心の換気ができるかも」と、小さく試して自分に合うと感じたこと、無理なくできる方法やヒントをあらかじめ書き出しておくんです。

コーピングリストについて知った時は目から鱗でした。
ごきげんになれない時は、無理にごきげんになろうとしなくていい。ただ、自分の気持ちを大切にする時間を過ごせばいい。そう思えたら、心が少し軽くなったんです。

私が実際にやった「自分の心とからだの声を大切にする処方箋」は、具体的に以下の5つです。

1.まず寝る

早くお布団に入って寝る。とにかく目を閉じる。
娘と一緒に20時には就寝しました。
もし寝付けなくても、末っ子の娘の寝息を聞きながらなるべくからだの力を抜く、リラックス。

2.早朝、家族が誰も起きていない静かな時間にお風呂に入る

ストレスを感じている時は多分脳が完全に眠ってなくて、いつもより早く目が覚めがち。
もし変な時間に目が覚めてしまって眠れなくても、無理に寝なきゃ!と自分を追い詰めなくていい。

好きな飲み物と本を手に、好みの香りの入浴剤を入れたお風呂に1時間くらいゆっくりつかる。
誰にも邪魔されない、完全に一人の静かな時間。


3.ノートに頭の中や心の中を吐き出すように書き出す

心がモヤモヤしていること頭でぐるぐるしていることを全部、文字にして自分の外に出す。

誰かに見せる必要はない、紙の上は自由で安全。
どんな言葉が出てきても、どんなに汚い字でも大丈夫。
残すか捨てるかも自分で決められる。

自分だけは自分に嘘をつかないと決めて、今感じていること頭に浮かぶことを吐き出すように書き出す。

4.いつものご飯をいつものように作って食べる

美味しい新米を土鍋で炊いて、手前味噌でいつものお味噌汁を作り、家族で「美味しいね」って言いながら食べました。
特別じゃない普段のご飯を作って食べたら、ほっと安心できる。

5.夫と公園を散歩する

夫と、なんでもないことをおしゃべりしながら、近所の公園を朝さんぽ。
ただ歩く、話す、季節の移ろいを感じる。

世界は広くて美しいということを体感できます。

 

今回は、片っ端から全部やりました。

それでも、まだ深い部分に違和感が残っている気がしたので、リストに書いていないこともいくつかやりました。

その一つが、初めての心理セラピー。
話を聞いてもらうだけでなく体も使うセラピーで、びっくりするほど涙がたくさん出ました。

実はこの心理セラピーこそ、誕生日を迎える自分の小さな願いを叶えるために、事前に準備していた予約でした。

セラピーの中では、長年心につかえていて話してみたいと思っていたことを話しました。

直前に感じたストレスの話はしないことを選択したのに、終わった後、不思議と心やからだがスッキリしていた感覚を覚えています。

そしてセラピーの帰り道、とても綺麗なイチョウの木がある神社を見つけました。普段の生活ではあまり神社仏閣に興味がない私。でも、なぜか神社に吸い寄せられました。

冬の始まりを告げるようなピカピカの光と澄んだ空気が気持ちよく、空を見上げて深呼吸。
お参りをして、木に触れて帰りました。

そして、家族や友だちに話を聞いてもらいました。クライアントさんたちとのごきげん夜会(飲み会)もちょうどいいタイミングで企画して予定を入れていたので、会いたい人に会うことができました。

「自分にできることは全部やった」
自分を大切にしてくれる人の温かさに触れて、心が少しずつほぐれていくのを感じました。

教員時代の経験が今の自分を支えている

こうしてストレスと向き合いながら、改めて気づいたことがありました。それは、教員時代の経験が今の自分を支えているということです。

教員時代は、勤め先の学校や担当する子どもたちを自分で選ぶことはできません。だからこそ、大人も子どもも教員も、本当にいろんな人たちに出会ってきました。

生活環境、価値観、言葉に触れて、傷ついたり、凹んだり、しんどい時も正直あったけれど、なんとかかんとかふんばって働いていました。

とにかく必死で、うまく対応できたことばかりじゃなく失敗がたくさん。でも「自分にできることを責任持ってやる」「下手くそでも中途半端でも、一度やると決めたことは最後までやりきる!」を合言葉に、自分を奮い立たせて顔をあげ、前を向いていた気がします。

今ふりかえると、あの経験があったからこそ、想定外の出来事や理不尽な場面に直面しても、何とかしようと方法を探せるのかなと思います。

心とからだの声を大切にできて自分を取り戻したら、今回のストレスを受けた出来事は「相手の課題」だと、はっきりと境界線を引くことができました。
自分は何も悪いことはしていないし、「相手の課題」を私が解決する必要はないし、そもそもできない。

境界線をひき、本来の自分を取り戻すことができたのは「一人じゃない」と思えて安心できたこと。

安心できたら、大切な人たちへ感謝があふれてきました。大げさと思われるかもしれないけど、生まれてきてくれて、出会ってくれてありがとうという気持ち。

いつの間にか胸のつかえが消えていました。
自分で一つひとつ積み上げてきた幸せはそう簡単になくならないし、自分で守ることができると気づき、改めて覚悟することができたように思います。

びっくりしたことに、強いストレスの原因となった相手にすら「むしろ感謝かも」と思えるようになりました。今の自分の大切なものに改めて気づかせてくれたから。

 

ここまで読んでくださってありがとうございます。

「私も今年色々あったのよ〜。。」
口には出さないけれど色々あった、でもなんとかふんばってきた!という方にお伝えしたい。

悩んでいるのは自分だけじゃないです、大丈夫。

自分一人だけがずっと悩んでいるわけじゃないと思えると少し安心しませんか?

「私なら何ができるかな」「自分のコーピングリストを書き出してみよう」少しでもきっかけやヒントになったらとてもうれしいです。

忙しない日々の中でも、数分でもいいからちょっと立ち止まってみる。違和感があったらすぐ蓋をするんじゃなく観察してみる。そして、話を聞いてくれる人、自分を大切にしてくれる人に話す。

自分の心とからだの声を大切にしたら、ふつふつとお腹の底からチカラが湧いてきます。
そしたら「めんどくさいな〜」と思っている年末のあれこれも、意外と簡単に片付いちゃうかもしれません。

次回も、最近見つけた新しい扉と、扉の開け方について書いてみようと思います。

■まとめ

・「ごきげんスイッチ」が全然発動しないほど気持ちが落ち込む時は誰にでもある

・無理にポジティブ変換しなくていい。そのままの自分をよく観察する

・ストレスを感じた時にできることを、事前にリストアップしておく「コーピングリスト」は、なるべく心穏やかな平時に書いておくのがおすすめ

・一人じゃない。話を聞いてくれる人、大切にしてくれる人はいる。
 その存在に気づくことが何よりの処方箋。

 

木山 理絵

木山 理絵 / Rie Kiyama

1979年生まれ、長崎県出身。大学院修了後、公立小学校教員の道へ。4年勤務した後いったん退職。2008年、夫とふたりでバックパックを背負って世界一周旅行に出発。1年2ヶ月で37カ国を旅する。 帰国後復職。働く母として30代を駆け抜け、第3子育休中に40歳を迎えた。自分の本当に望む生き方・暮らし・働き方に向き合ったことで再び退職。カウンセラーを経てライフコーチとして独立し、40代からの人生の歩き方を応援・伴走している。

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