【カナのお暇】episode_1 カナ、九死に一生を得る?

皆さま、こんにちは。
ライター塾6期生の川阪果奈です。

この連載『カナのお暇』では、私の退職にまつわる話を漫画『凪のお暇』に重ねながら、人生リセットストーリーとして綴っています。

さて、私はテレビドラマが大好きで、最近は『波うららかに、めおと日和』というドラマにハマっております。
「ハートフル・昭和新婚ラブコメ」というキャッチコピーそのままの内容で、昭和11年を舞台にした「交際0日婚」のお話。主役の芳根京子さんと本田響矢さんが最高にかわいくて、胸キュンさせてもらっています。

そんなドラマ大好きっ子である私が、今から数年前、会社のお昼休みにドラマ『凪のお暇』の撮影現場に遭遇した!という前回「episode_0 高橋一生は突然に。」からの続きです。

よろしければお付き合いください♪

 

シロツメクサの花冠

シロツメクサを見つけると、つい花冠にしてしまします。

 

 

必要な時に必要なものが目の前に現れる?

会社のお昼休みにドラマ『凪のお暇』の撮影現場に遭遇し、凪役の黒木華さん、慎二役の高橋一生さん、凪の母親役の片平なぎささんを至近距離で目撃してしまった私。

熱烈視聴中のドラマの撮影現場に遭遇するなんて、そうそうあることではないでしょう。
ちょうど4日前にリアルタイムで見ていたので、何のシーンの撮影か、衣装で瞬時にわかってしまいました。(ちなみに、その3日後に放送されていました。ものすごいスケジュール)!

席に戻ってもしばらくドキドキが収まりませんでしたが、徐々に落ち着きを取り戻しました。
すると、周囲から「ビルの敷地内でドラマの撮影をしているらしい」という話は聞こえてくるけど、”凪ちゃんと慎二“に遭遇した人はいないことに気づきました。

たしかに、私が目撃直後に辺りを見回した時も誰もいなかったし、すぐに見に戻ったけどもういなかった。
そうかあ。私があの道を通った、あの瞬間だけ、たまたま撮影をしていたってことか。

え。もしかして・・・、高橋一生見れたの、私だけ?(拡大解釈)。

 

―「必要な時に必要なものが目の前に現れる。それが命の力だ」!

私が師事していた、合気道の師範の言葉が頭の中に響きました。
必要な時に、必要なものが目の前に現れるということは、今、私の目の前に高橋一生・・・いや、凪ちゃんと慎二が現れたことにも意味があるということか?

 

ピクニック

当時、平日の18時半ぐらいから公園でピクニックをしていました。帰宅後にこんなことをしていたとは・・・1日の中で少しでも楽しい時間が欲しかったのでしょうね。

 

九死に一生を得る?

当時私は入社14年目で、ワーキングマザー生活3年目を迎えていました。
自宅と会社と保育園を結ぶ三角形の枠の中で、我慢ですべてをねじ伏せて突っ走っていました。

毎日、自転車を漕ぎながら、何か大切なものをボロボロこぼしながら走っている気がしました。
漕いでも漕いでも間に合わないし、たどり着かない。
毎日、かき集めているのに、何も手元に残らない。

報われたい。何かを手に入れたい。

・・・「合格」って言われたい。

 

何も手にできていないと思っていた私は、誰かに「合格」と言われたくなりました。合格だったらなんでもいい。
私は、業務とはまったく関係の無い、とある国家資格試験の勉強を始めました。
大枚はたいて通信講座を購入!お昼休みや休日にコツコツ勉強!

ただでさえ時間がないはずなのに、何をしているのでしょうか・・・。
明かに、何かが過剰で異常。
目的もおかしければ、手段もおかしいですが、当時の私は立ち止まれませんでした。

次第に、お昼休みにおむすび一つ食べきれなくなり、朝から娘は保育園に行きたくないと泣き、私は会社に行きたくないと泣き、通勤途中に大型トラックが私の人生を一思いに終わらせてくれないだろうかと願う日々は、本当に異常でした。

 

その三角形の枠の中、私の目の前に突然、”凪ちゃんと慎二”が現れたのです。

これに意味があるとすればただ一つ・・・

私も、凪ちゃんみたいに会社やめても良いってこと!?
立ち止まっても良いってこと!?

そう思ったら、ものすごく嬉しくなりました。
私が心の底から羨ましかった凪ちゃんの「お暇」。
私には「絶対に無理」だと思っていたお暇。私もやって良いってこと?

もはや九死に一生を得た気分です。いや、ここは、九死に高橋一生を得たと言わせてほしい!

 

それまで「退職」という選択肢を自分に与えなかったことには色んな理由がありましたが、一番はお金のことです。
新卒で入社した事務職の私が、この会社以外でできることなんてない。凪ちゃんみたいに若くないし独身でもない。

加えて、私の頑張りに見合った「何か」を手にするまでやめてやるものかという執着心。あいつをギャフンと言わせてやりたい的な復讐心もありました。
やめたら私の負けになる。でも、もういいや。私の負けで。

私の前にだけ高橋一生が現れたのだと思ったら、そんなことはどうでも良くなりました。

 

花冠をかぶる娘

娘は当時、保育園の先生のマネをしてボールペンを装着していました…。

 

ゲリラ豪雨に背中を押される

そんなことを考えていた数時間後、上司に呼び出されて業務のことで心底ばかばかしいと思うことを言われました。
ばかばかしすぎて、身体から力が抜けてぐにゃぐにゃになるような。
できていることは「できた」瞬間に意味のないものとされ、できていないことを次から次へと掘り起こされて、あれができていない、これができていないと詰められる。

そもそも、私が立っている土台はずっと前からぐにゃぐにゃだったのです。
私はかつて、当時の上司のパワハラを社外弁護士に訴えたことがありました。
射手座のO型だから?たまに変な正義感を発揮してしまうのです。匿名にはなっていましたが、通報者が私であることはバレバレでした。
そこからは1年ごとに人事異動が続き・・・以下省略。

突然色々重なって、『凪のお暇』の凪ちゃんのように糸がプツンと切れました。

漫画『凪のお暇』の凪ちゃんの場合は、空気を読みまくって行動しているうちに、同僚や恋人に都合良く使われているだけだと気づき、過呼吸になったことが退職のきっかけでした。
凪ちゃんの最初の気づきは「空気は読むものじゃなくて、吸って吐くものだ」―

私は、凪ちゃんが「なんなのよ、ムカつくー!もうやめてやる!キーッ!」となったわけではないところに共感しました。堪忍袋の緒がブチッと切れるのではなく、静かに糸がプツンと切れる・・・。

 

それでもやっぱり言えません。「会社やめます」なんて。
言えないよ~ 好きだなんて~。何度も頭の中に郷ひろみを登場させてみました。
28歳独身の凪ちゃんと私は違うのよ・・・。
めっちゃ勇気いるやん。
清水の舞台から飛び降りるって言うけど、あんな高いところから飛び降りたら死ぬやん?!あかんやん?!

やっぱり言えない!凡人たるもの、おいそれと会社をやめられるものか!と思い帰ろうと外に出たら、とんでもないゲリラ豪雨が。
踵を返して職場に傘を取りに戻ると、さっきまでいなかった上司が席に座っている。
これはもう、言えってことか?言えってことだよな?
え~い!

ゲリラ豪雨に背中を押されて、上司に退職の意志を示したところ、あっさり承諾されました。
どれだけ嫌われていたんだ?!笑
まあ、しょうがないです。

 

夕方6時45分の公園

公園の時計は18:44。晴れてても長靴!

 

心と直感に従う勇気

その翌日から、朝もスッキリ起きられるし、お昼ご飯の味もするようになりました。
生まれ変わったように体が軽い!
それでも毎日「やっぱりやめるのやめようかな」と思いました。
どうしよう・・・やっぱりこのまま我慢して働くのが正しい道だよなあ・・・。
大手を振って歩ける正しい道。誰にも文句を言われない正しい道。
「やめるべきでない理由」はいくらでも思いつくけど、前向きで明確な「やめる理由」が見つからない。

やだー。なんかやだー。我ながらダサいぞ。理路整然とお話したい。今後の展望を語りたい。
でもそんなものはない!とにかく時間が欲しい。家にいる時間が欲しい。平日を過ごしたい。

つまり、人間活動がしたい。でもそんな理由で活動休止が許されるのは宇多田ヒカルだけだよね・・・。

 

そんな時、内田樹先生のブログでこの言葉に出会いました。

The most important is the courage to follow your heart and intuition,
they somehow know what you truly want to become.

いちばんたいせつなことは、あなたの心と直感に従う勇気をもつことです。
あなたの心と直感は、あなたがほんとうはなにものになりたいのかをなぜか知っているからです。

スティーブ・ジョブズ

内田先生は、「どうしてやりたいのか、その理由が自分で言えないようなことはしてはならない」というルールは、何の根拠もない妄説だとおっしゃいます。そして、どうしてやりたいのか、その理由がうまく言えないけど「なんとなくやりたい」ことを選択的にやった方がいい。と。

「あなたがほんとうになりたいもの」、それが「自分らしい自分」「本来の自分」です。
心と直感はそれがなんであるかを「なぜか (somehow)」知っている。だから、それに従う。
ただし、心と直感に従うには勇気が要る。

内田樹の研究室より抜粋

ああああ~、これか。私はこの勇気を出してしまったのか。
心と直感に従う勇気、出してしまった。

「時間がほしい。時間をくれ。今、自分に時間を与えないと取り返しのつかないことになる気がする」。
これが私の心と直感でした。
時間があったら私は何を選ぶのか、何をするのかを知りたかった。
もはや私は、自分が何を好きなのかわからなくなっているのに、「手に入れなければならない」「やらなければならない」と思うものはたくさんありました。
そして、時間もお金も足りない!私は何も手にできていない!と焦り、不足感でいっぱいだったのです。

 

さすがスティーブ・ジョブズ。さすが内田樹先生。
だまされたと思って従うにはあまりにもデカすぎる2人に、私は運命を託してみることにしました。

ほんまやな?絶対やな?あんたがゆうたんやで!という気持ちで・・・。

続く。

 

四葉のクローバー

近所の公園、四葉のクローバーが簡単に見つかります。笑

 

 

川阪果奈

川阪果奈 / KANA KAWASAKA

大学卒業後、保険会社の一般事務職として15年勤務し、第二子妊娠中に退職。その後、デジタルハリウッドSTUDIO吉祥寺にてWebデザインを学び、現在はブログサイトの運営などを行う。夫と娘と息子の4人家族。ライター塾6期生。

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