この「外の音、内の香」が、私だけのものではなく、
色々な人があちこちで、 見つけてきたことを持ち寄る「場」になればいいなあと
立ち上げたコンテンツ「ライターズマルシェ」。
今回から登場するのは、ライター塾の生徒さんでもある川阪果奈ちゃんです。
「暮らしのおへそ Vol39」でも取材させていただきました。
「キリキリ舞いしているのに、何もできていない……。
保育園に行きたくない娘と、会社に行きたくない私で
朝から泣いていました」
と話してくれた果奈ちゃん。
その後、
なんだか訳のわからない、デジタルの世界を知りたい。
アナログの世界から抜け出したい。
そうしたら、きっと何か新しい世界が見えてくるはず。
とwebデザインの学校に通っていたのだとか。
ライター塾に参加してくれた時、
その文章のうまさと、発想のユニークさに、
「おお、そうくるか!」と何度も驚いたものです。
そんな果奈ちゃんが何を綴ってくれるのか、私も楽しみにしています。
皆さま、はじめまして!
ライター塾6期生の川阪果奈(かわさか かな)と申します。
私は、東京の練馬で、関西人の夫と9歳の娘、4歳の息子と暮らしています。
2020年3月まで15年間OLをしていましたが、ちょうどその頃、一田さんのライター塾に参加しました。
その後、入会したライター塾サロンでは、「今しか書けないことを書く」楽しさを知り、自己開示をすることで一田さんやサロンの仲間たちとのつながりが深まることを実感しました。

近所の公園にて。これはライター塾サロンに入会した頃です。
この連載では、漫画『凪のお暇』の登場人物たちに自分を重ね合わせながら、退職後の日々や心境の変化について書いてきます。
どうぞよろしくお願いします!
漫画『凪のお暇』と私
さて、皆さまは『凪のお暇』(なぎのおいとま)をご存じですか?
連載が今年2月に最終回を迎え、2019年には黒木華さん主演でドラマ化されていた漫画です。
『凪のお暇』(コナリミサト著) の主人公は、28歳のOL・大島凪ちゃん。
空気を読んで周囲に合わせ過ぎた結果、過呼吸になり「しばし、お暇いただきます」と会社をやめるところから物語が始まります。
恋人、同僚、母親…あらゆる人たちに見栄を張って認めてもらおうしてきましたが、退職後に郊外の古いアパートに移り住んだところから、環境や人間関係が変わって、本当の自分で生きていけるようになる・・・みたいな「変化」の物語です。
言うなれば「他人軸から自分軸へ」とか、「ありのままの自分で」という感じでしょうか。

凪ちゃんの髪型に注目!1巻は毎朝1時間かけて作るストレートヘア、2巻からは天然パーマに。
私は数年前、私は色々とこじらせて「半年でいいから休みたい」と15年勤めた会社を辞めました。
カナのお暇です。
当初は半年程度のつもりだったのが、1年、2年・・・と延びていき、もう自分の状況を「お暇」と呼ぶことも年数をカウントするのもやめてしまいました。
しかし最近、漫画『凪のお暇』を読んでみたら、私のこの数年間は紛れもなく「お暇」だと思いました。
漫画の紹介文にはこう書いてあります。
場の空気を読みすぎて、他人にあわせて無理した結果、過呼吸で倒れた大島凪、28歳。
仕事もやめて引っ越して、彼氏からも逃げ出したけど…。
元手100万、人生リセットコメディ!!
この「人生リセット」という言葉が、今の私にしっくり来ました。
人生をリセットしたくて退職したわけではなかったけれど、気がついたら私の人生はリセットされていたのです。
凪ちゃんの人生リセット
『凪のお暇』の主人公・凪ちゃんは、都心の2LDKから郊外の6畳一間のアパートへ引っ越し、家財道具一式も処分。スマホも解約してガラケーにし、元職場の人との引継ぎは手紙でやり取り。モラハラ彼氏とも別れて…と見事なリセットっぷりですが、私は凪ちゃんのように「リセットするぞ」と退職したわけではありません。
リセットというと、私はファミコンのリセットボタンを思い浮かべてしまい、リセットしても同じゲームが最初から繰り返されるイメージでした。
リセットしてもしなくても、同じゲームが続くだけ・・・。
しかし、凪ちゃんの人生リセットストーリーは同じゲームが続くわけではありませんでした。
周囲の人との関わりの中で、凪ちゃん自身が変わっていく。
現在の自分が変わると、過去の自分も出来事の捉え方も変わってゆく…という展開です。
そんなの嘘だ、気持ち悪いと思う”アンチ凪”もいるようですが、私にはすべて身に覚えのある話です。
それが人生をリセットするということならば、私もリセットされていたなあと気づきました。
私にサクセスストーリーは書けないけど、人生リセットストーリーなら書けるかも。
凪のお暇ならぬ「カナのお暇」を書いてみようと思います。

ドラマ『凪のお暇』と私
2019年。思い出すのも吐き気がするぐらい人生のどん底だった時期に、ドラマ『凪のお暇』が放送されていて、毎週楽しみに見ていました。
主役の凪役は黒木華さんで、モラハラの元カレ・慎二役は高橋一生さん。
他のキャラクターも超豪華キャストで一人一人が魅力的!大好きなドラマでした。
凪ちゃんのお暇は終わるのか?恋のゆくえはどうなる?!と、最終回まで残すところあと2話となったある日、事件が起こりました。
なんと私の目の前に、凪ちゃんと慎二が現れたのです。
・・・え。こんなことある?
思いがけない出来事
私が22歳の時から変わり映えのない毎日を送っていた会社の前。
数少ないランチスポットであるマクドナルドで昼食を終え、歩いて会社に戻ろうとすると、「ちょっと止まってくださーい」とTシャツ姿の若い女性に行く手を阻まれました。
なんだ?むかつくな。なんなのよ、昼休み終わっちゃうんだけど。困るんだけど。ここ、私の道なんだけど。私が22歳から行ったり来たりしてる道。なんであんたに止まれって言われなきゃなんないのよ。別に会社、戻りたくないけどさ。私は戻らなくちゃいけないの。働かなくちゃいけないの。別に、働きたくないけども。
「急いでるんですけど」とだけ言い返した私の封鎖はまもなく解かれ、そのままふらふらと歩いていると、高橋一生と目が合いました。
ん?会社の前に、高橋一生。
ん?隣を見ると、モジャモジャヘアの黒木華ちゃんと目のぱっちりした片平なぎささんがいる。
・・・え。え!凪のお暇!
なんと会社の前でドラマの撮影をしていたのです。
嘘!嘘!パニックです。立ち止まりたいけど立ち止まれない。
今度は別のスタッフに立ち止まるなと促されます。
え、え、え、混乱しながら通り過ぎました。
高橋一生さんは私とほぼ同じ目線の高さで、子どものようにお顔が小さい。
た、た、た、た、高橋一生がいた!!
こうなったらもう会社どころではない。
この衝撃と高揚感を分かち合いたくてキョロキョロするけど、人通りが少なすぎて誰もいない。
え、幻?
その後、会社のトイレで特に仲が良いわけでもない先輩を捕まえ、いいいいい今、高橋一生がいたんですけど、と声をかけて猛ダッシュで見に戻りました。
しかし、既にいなかった・・・。
「メイ、トトロ見たもん」!嘘じゃないもん。トトロに会ったメイの気持ちです。
席に戻っても、心臓はドキドキ、頭の中は「やばい」で占拠されています。
やばい。やばいことが起こった。まじでやばい。自分を落ち着かせるために、夫や友人、このやばさを分かってもらえそうな人に片っ端からLINEをしました。
ふーん。良かったね。でも、そんなに高橋一生好きだったっけ?
と、冷静な返信が返ってきます。
いや、ちゃうねんて。凪のお暇やねんって。
毎週楽しみに見ているドラマの撮影に出くわすって、そんなことある?
やばくない?やばいでしょ!!
・・・という偶然の出来事から、カナのお暇は始まりました。
次回もどうぞ、お付き合いいただけましたら嬉しいです。

これは最近の写真です。娘はニンテンドーSwitch、息子は恐竜に夢中です。