【モヤモヤ女の読書日記】私に効く本、いただきます「“いいほうに”変わる決意」梅津奏

2025年がはじまりました。明けましておめでとうございます!

年始に、かなり長い休暇をとりました。計画的に長期休暇をとれたのは3年振り。あまりにもリフレッシュできてしまって、改めて、休むことの偉大さに感動しております。

年末にこちらで振り返った通り、2024年は混沌とした一年でした。いくつか大きな転機があり、その変化に起因する揺らぎや摩擦にイライラ・モヤモヤすることも多かったような気がします。

新春浅草歌舞伎を観に、観光客でごったがえす浅草へ。人は多いですが見上げれば快晴の空。気持ちがいいです。

初めての新春浅草歌舞伎。ドキドキワクワク。

「変化する」って、案外難しいですよね。

コンサバに生きてきた私も、コロナ禍を機に少しずつ自分の世界を広げ、自分を変えてきたつもりです。でも、やっぱりまだまだ「変化上等!」と突き抜けるのは難しい。

副業の解禁や職場の人間関係の変化。プライベートに関して考えていること、エイジングに伴う体調の変化。

大小さまざまな変化に直面する中で、「このモヤモヤは、もう私の手に余るのではないか?」と思うことも多々。それでもだましだましやっていこうと思いかけていたタイミングで、天からの恵みのようにもたらされた長期休暇。

地元に帰り東京と距離を置いたことで、「社会人としての私/都会人としての私」から幽体離脱したような感じ。まっさらでクリーンな頭で今の自分のことを眺めてみたら、あらゆることが「え、なんであなた(=私)、そんなことになってるの?」と思えてきました。

わざわざ健康を害するような生活を送っていること。
部屋が殺風景すぎて、まったく心が休まらないこと。
週7勤務のような働き方をしていること。
既得権益を手放せずに、いじいじと仕事を抱え込んでいること。
長期的に何をしたいか、を考えずに日々忙殺されていること。

もちろん、そんなことになっているのにはちゃんと理由があります。一番は、「変化するのが怖い」から。自己肯定感が高いタイプだからこそ、変わってしまった自分を肯定できるのかが怖いのです。表向きは変化しているように見えてもそれは見せかけだけで、実は変化に対応できておらず心身共に火の車……なんてことも。

実家で父のいれたコーヒーを飲みながら、そんなことをぼんやり考えていたとき。久しぶりに読みたいと思い出したのがこちらです。


本日は、お日柄もよく』(原田マハ/徳間文庫)

平凡なOLだった主人公・こと葉が伝説のスピーチライターに弟子入りして、衆議院議員総選挙に出馬する幼馴染をサポートするという物語。マンネリ化した仕事をなんとなくこなしていたこと葉がスピーチライターという仕事に出会い、働く喜び・言葉を紡ぐ面白さに目覚めていく、爽快なお仕事小説です。

キュレーターだった経歴を生かしたアート小説で有名な原田マハさんですが、私は原田さんのお仕事小説も大好き。初めて読んだのは、私は確か職場でまだ“若手”と呼ばれていた頃。社会人としてどう頑張っていけばいいか模索していた時期だったので、本書は特に何度も繰り返し読んだ記憶があります。

今改めてKindleを開いてみると、自分で付けたたくさんのブックマークが。仕事に対する考え方・心得・スピーチの極意など心に響く箇所ばかりで、夢中でブックマークしていたんでしょうね。久しぶりに開いて、探し当てたのはこんな文章でした。

「ねえ千華。変わることって、いいことだと思う?」
唐突にそう訊いてみた。千華は一瞬きょとんとしたが、にこっと笑って答えてくれた。
「うん。いいほうに変わるなら、変わる方がいい」――『本日は、お日柄もよく』より

将来こと葉のライバルとなる新進気鋭のスピーチライター、和田。彼があるプロジェクトで打ち出した「CHANGE」というキーワードと華麗なプレゼンテーションに圧倒され、あれこれと思いを巡らしていたタイミングでこと葉が親友と交わす会話です。

「変わることって、いいことかな?」ということ葉の疑問は、プロジェクトの行く末を心配する気持ちだけではなく、彼女自身が、自分の“変化の兆し”に気づきはじめていたからこそ生まれたもの。親友からの力強い答えを聞いて、「いいほうに変わるなら、変化は悪いことじゃない」という思いを新たにしたこと葉。そこからの彼女の変化は、まるで桜のつぼみが一斉に開花していくようなスピード感と晴れやかさでした。

 

今年は参加する役者陣もリフレッシュ! ぐんと若返りして、舞台は初々しい輝きに満ちていました。ありがたやありがたや。

 

そう、「いいほうに変わるなら、変わる方がいい」。そうですよね。

「いいほうに変わるかなんて分からないじゃない」という心の声も聞こえてきますが、ここは「いいほうに変わるんだ」という意志が大切なんじゃないかなと。もっと言えば、「よりよくなるために、私は変わる」と自分でまず決めればいいのかなと。

2025年の私は、いいほうに変わります。

最初はそう見えないかもしれないし、簡単には変えられないこともあるはずだし、誰かを戸惑わせたり迷惑をかけたりすることもあるかもしれないけれど。「いいほうに変わる」と自分に繰り返し言い聞かせて、一日一日を大事に過ごしていきたいです。

 

歌舞伎の後は、ご一緒した皆さんと新年会。マイクを渡され、新年の抱負を述べている私(酔ってはいませんが、お酒をいただくとすぐ赤くなるタチ)。握りこぶしに強い決意があらわれているような……。


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