読書のお供といえば、栞。
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我が家の栞コレクション。
プレゼントしてもらったり、旅先のお土産物屋さんやかわいい雑貨店をのぞいて何か欲しくなったときだったり、なんやかんやで色々集まってきました。
小さいスペースに思い思いのチャームが詰め込まれて、はしっこにはリボンなんかついちゃって。栞ってかわいいですよねぇ。
……なんですが、私はあんまり栞を使わない読書人です。
Kindleで読むことが多いこと、ものぐさ且つうっかり屋な性格ゆえ栞を持ち歩くのを忘れてしまうことが原因。出先で本を読んでいて、栞も栞紐(書籍にセットされている細い紐)もない! と焦ることも多々。その辺にあるレシートをぱっと挟んで、「ああ、家には素敵な栞がちゃんとあるのに…」とちょっと残念な気持ちになります。「私もそう!」という方、きっといますよね?
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今年の誕生日に、両親から届いたバースデーカードについていた栞。
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着物の大先輩にいただいた手作りの栞。生地の風合いがとっても美しいのです。
でも最近、栞って大事だなと思うんです。
読書のための栞だけでなく、「日々の暮らしに区切りをつける」という概念としての栞。
毎日慌ただしく過ごしていると、何か一つ終わっても、一息ついたり振り返ったりすることなく次のタスクへ向かうことが多いです。そうやってどんどんバリバリTo Doリストをこなしていく快感も確かにあるのですが、なんだか早送りで人生を送っているみたい。
「これ、大変だったけど勉強になったな」
「あの人のおかげでうまくいった。ちゃんとお礼がしたいな」
「なんて美しいものを見させてもらったんだろう」
仕事でもプライベートでも本当にたくさんの貴重な経験をさせてもらっているはずなのに、私はちゃんと味わえているのだろうか。
読書も同じ。
私はいつも読みたい本がたくさん堆積していて、堂々たる積読山を持っている山主。一冊読む間も次に読む本のことをちらちら考えてしまうほど、「もっと読みたい。もっともっと!」という気持ちに追いかけられている重篤な本の虫です。
一冊ずつ、どっぷりその本の世界に潜り込んで、言葉を味わって、自分に生まれた感情を眺めてみて……。そんな、本と自分をゆったり行き来するような読書がしたい。そして読み終わったら、心に残しておきたい言葉のページにそっとしおりを挟みたい。
そんな読書には、絶対に美しいしおりが必要です。
『本の栞にぶら下がる』(斎藤真理子/岩波書店)
韓国語の翻訳家、斎藤真理子さんの読書エッセイを読みながら、そんなことをずっと考えていました。
先日、韓国のハン・ガンさんがノーベル文学賞を受賞されました。斎藤さんは、ハン・ガンさんの『すべての、白いものたちの』『別れを告げない』の翻訳を担当。ハン・ガンさんの著書の他にも、一大ブームを巻き起こした韓国小説『82年生まれ、キム・ジヨン』も斎藤さんの仕事です。
韓国文学や翻訳に関するエッセイも複数執筆されている斎藤さん。本書は、幼少期からの読書生活を振り返りつつ、新しい本も古い本も交えて読書について綴るエッセイです。
記憶の中の書棚の上段にいろんな本が入り乱れ、雑多に積み上がっていて、一本の栞を引っ張ると他の本もつられて動く。一冊の本に他の本の記憶がぞろぞろとぶら下がり、連なり、揺れている。――『本の栞にぶら下がる』より
長大なフランス小説『チボー家の人々』を読みふける、高野文子や郷静子が描く少女たち。彼女たちと心を通わせるようにして、同じ本を読みふけった学生時代の斎藤さん。朝鮮語の勉強として読んだ永年のベストセラー。編み物をしながら読むのにちょうどいい「編み本」について。(谷崎潤一郎の『細雪』がベストで、全3巻でセーターを30枚くらい編んだとのこと!)
少女の、大学生の、初々しい社会人の、母の、斎藤さん。本を選んで手にとり、真剣なまなざしで丹念に文字を追う姿が、自然と浮かび上がってくるようです。
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大好きなYouTube番組、「有隣堂しか知らない世界」グッズ。横浜のSTORY STORY YOKOHAMAで買いました。毒舌みみずくのMC・ブッコローと、眼鏡に白ブラウスがトレードマークの文房具バイヤー岡崎さん。
端の方からすっかり色褪せ、手ずれして繊維もやせた、「よく働いた」栞を見ることもある。根元からちぎれていたりもする。栞には、本が生きてきた時間が乗っている。――『本の栞にぶら下がる』より
私もこれくらい、本も栞も日々起こることも、しっかり「働かせ」ないと。手癖でどんどん飛ばし読みしないで味わって、時には栞をはさんで小休止して。
意識して「区切り」をつくることで、経験を血肉にして、感情を味わおう。明日からちゃんと、お気に入りの栞を持ち歩こう。
読書の秋、みなさんも楽しんでくださいね。