コロモチャヤ 中臣幸次さん美香さん vol3

吉祥寺のカフェ&セレクトショップオーナーの中臣幸次さんと美香さんに
ビジネスについてのお話を伺っています。

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人を動かすために必要なのは、「自分がやりたいこと」じゃない

 

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アパレル会社でのバイヤーを経て、先輩の立ち上げたコンサルティング会社に
入ったという中臣さん。

とは言っても、いきなりコンサルタントなんてできるはずがありません。

「まずは煙たがられますよね」と笑います。

そもそもコンサルタントは、ショップやブランド、メーカーなどのオーナーに雇われるもの。
でも、実際にコンサルティングで変えて行く現場には、全権を握っているリーダーがいます。
そして、リーダーは大抵プライドを持って仕事をしている。
でも成果がでない……。

「はじめはだいたい喧嘩して帰ってきていました。
そうじゃない!って暴れて帰ってくる、なんてしょっちゅうでしたね」と中臣さん。

「どうもこれはうまくいかない……」と思ったとき、
たまたま知り合ったという心療内科の先生に相談に行ったそうです。

「そのとき言われたのは、
『人の気持ちの中に入っていくのに必要なのは、『自分がやりたいこと』じゃないんです。
あなたは、その人のためにわざわざ何かをしていますか?』
という一言でした。
ああ、そうか、と思いましたね。
そしてやり方を変えたんです。
どうしても私の仕事は、『これをやっちゃダメ』「あれをやっちゃダメ』と
言わなくちゃいけない。
否定が多くなっちゃうんです。
そこで、まずは、全体を掌握する際に、視点を『広く浅く」することにしました。
そうして、相手にいろんなことをしゃべってもらう。
その中で、『ああ、この人はこれが得意なんだ』とわかってきます。
それを最大限に認めて、最大限にやってもらう。
そして、「できないこと」は私が引き受けるんです。
たとえば、洋服が大好き、モノが大好き、でも数字が苦手、という人がいたなら
数字の部分は全部私がやります。
不得意な荷物はすべて降ろしてもらうことにしました。

それからですね、うまく行くようになったのは」

 

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こうすればうまくいくのに。
これがベストな方法なはず。

自分が考えた「正解」があったとしても、
それで人を動かすことはできない……。
中臣さんが体験したのはそういうことだったよう。

 

これは、ビジネス以外にも、言えることなのかもしれません。
子育てでも、友人とのつきあいでも、誰かと一緒に何かを作り上げるときでも……。

「あなたは、その人のために、わざわざ何かをしていますか?」という問いは
わたしたちの普段の暮らしの中で、自分を振り返るキーワードになりそうな気がします。

 

「いくら儲かるか」より、やりたいことのために、「いくら使うか」が大事
それにしても、中臣さんは最初から「数字」を見られる人だったのでしょうか?

「バイヤー時代は、数字は専門の人に任せていました。
でも、なかなかいい結果が出なかくて悩んでいた時に、
会社の先輩に、『数字は自分でやりなさい』とアドバイスをもらったんですよ。
『自分で勝負をかけるときに、いくらまで使えるという判断軸がないと、
勝負をかけられないよ』って。
それからはメーカーさんに言って、「これかわいいですね」って服を選びながら
電卓をはじいて、パソコンに打ち込んで、かけ算割り算やって……。
こんなにあれこれやらなくちゃいけないんだ、と驚きましたけれど(笑)
数字を見るようになりました。
やり続けているうちに、実はこっちの方がすごく重要なんじゃないだろうかとわかり始めて……。

かわいいとか、かわいくないとか、素敵とか素敵でないとか
形容詞って人の感覚によって違いますよね。
でも、数字って事実なんです。
洋服みたいに変化が激しいものは、やっぱり事実をしっかり握らなくちゃだめ、
そう思いましたね。

 

こういう企画はこれぐらい経費をが必要だなとか
今期の服はこれぐらい仕掛けているけれど、追加でこれぐらい必要だろうなとか。
頭の中で設計図を作るんです。

大事なのは「いろんな思いを入れて」数字を組み立てることかな

具体的に言えば、
例えば、3月はいくら仕入れるんですか?
ブラウスというワンアイテムでいくらくらい仕入れますか?
7月のセールでは、どれぐらい値引きしますか?
最後に在庫はどれぐらい残しますか?
などを全て予算にして、お小遣い帳をちゃんと作ってあげるんです。
あとは、思ったように売れない月もあれば、
思った以上に売れる月もある。
だから、毎月お小遣い張を変えていくんです」

でも、実は中臣さんは「いかにお金を管理するか」より
「いかにお金を使うか」が一番大事なのだたと言います。

 

 

「コロモチャヤ」は、今年一部リニューアルをしました。
キッチンの一部をオープンにし、中のスタッフの姿が見えるように。
普通のお店より、丁寧にお茶を入れ、お客様の顔を見てから、サラダを盛り付け、
グラタンをオーブンに入れ……。
そうすると、時にお客様を待たせてしまうことがあります。

そんなとき、働いているスタッフの姿や手元が見えた方が、
お客様が安心する、と考えたからなのだそう。

「自分たちがやりたいことをやるために、
必要なお金は使わないと、と思うんです」

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「びっくりするぐらい、使っちゃうんです」と笑う美香さん。

「いくら儲けるかということより、いくら使うかということが、
とても大事だと思っているんですよね」と中臣さん。

 

次回は、いよいよコンサルティングの具体的な内容について伺います。

 

撮影/近藤沙菜


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