コロモチャヤ 中臣幸次さん美香さん vol2

吉祥寺のカフェ&セレクトショップオーナー、中臣幸次さんと美香さんに
ビジネスについてのお話を伺っています。(vol1はこちら

 

 

 

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「何を」やるかはあまり関係ない。
どんな環境であれ、そこで頑張ることで次のステージに行くことができる。

 

 

現在コロモチャヤを営みながら、アパレル関係の会社のコンサルタントをされている中臣さん。
(これから、幸次さんを中臣さん、美香さんを美香さんと呼ばせていただきます)
ご実家ではご両親がペットショップを営み、小学校の頃は、
学校が終わって帰ると、お店を手伝うのが日課だったそうです。

「ビジネスマンと一緒に仕事をする、ということが考えられなくて。
お客様を相手に仕事をする、というのが子供の頃から当たり前だったんです」。

たまたま洋服屋さんでアルバイトをしたのがきっかけでアパレルの会社に就職。
当時から、いつか自分のお店を持ちたいという目的ははっきりしていたのだとか。
仕入れなどを勉強したくてバイヤーに。
サラリーマン生活を18年間続け、そろそろ次のステージに行きたいなと
考えていた頃、先輩が起こした会社に誘われて転職。
それが、たまたまコンサルティングの会社だったというわけです。

「えっ? じゃあ、コンサルティングをやろうと思って入ったわけじゃなかったのですか?」
と聞くと
「そうなんですよ」と笑う中臣さん。

「私は、人生の転換期をあまり重く考えないタイプなんです。
どんな環境であれ、そこで一番頑張って、一番認められれば、
自分が行きたいところへ行けると思っているから。
仕事を辞めて、喫茶店で働いたとしても、そこで一番光って、
来てくださったお客様に『あなたいい仕事してるわね』と言ってもらえたら、
きっと違うステージに行けるはず。
それを繰り返していたら、最後に自分のやり方で仕事ができると思っているので……。
だから、会社を辞めるときには、たいして深く考えないんですよ(笑)」

 

なるほど〜!
ここからして、すでにビジネスマン的思考だなあと思いました。
私は、どちらかといえば、「何を」やっているかが大事だから。
ライター以外の仕事は考えられません。
でも……。
もしかしたら、私も喫茶店で本気で働きはじめたら、
あれをこうして、これをああやって……といろいろ工夫し
その成果を見たら嬉しくなって、仕事を楽しめるのかな?

ビジネス脳とは、ちょっと強引な言い方をすれば、
「何を」やるかではなく、
それが、どんなことでも、目の前の仕事に道筋をつけ、どうすればうまくいくかを工夫して、
「プロセス」を考える思考回路のような気がしてきました。

 

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これが正しいなんてわからない。
ただ本気で向き合えば、正しいか、正しくないかが見えてくるだけ

 

実は中臣さん、バイヤー時代、最初はなかなかその成果が出なかったそうです。
「実力に見合わないチャンスをもらっていたんですよね。
たとえば、デザイナーさんがサンプルを作っても
『ちょっと襟のサイズが今どきとは、違うと思うよ』
なんてエラそうにダメだしをする。
でも、その襟のシャツを作ってもまったく売れない……。
よくよく考えてみると、その頃の私には、全くお客様が見えていなかったんです。
マーケットが見えていなかった……。
ああ、これはイチからやり直さなければと思いました。
30歳ぐらいのときだったかなあ」

それからは、アンテナを張ってお客様が何を求めていらっしゃるか
真剣に考えるようになりました。

「アンテナを張れば、正解がわかるものなんですか?」
と聞いてみました。

「いや、そんな自信はまったくないんですよ。
たとえば、同じようなものをみんなが売っている中、
たまたまAという店で、新しい商品を見つけてバイイングしたとします。
そして、「これは、今のコーディネートに絶対に受け入れられる!」と考える。
でも、それが正しいのか正しくないのかは、全くわかりません。

でも、次に絶対にこれがくる、と信じて本気で向き合うと
『ああ、やっぱり正しかったんだ』
という答えと
『あれ? やっぱりちょっと違ったから、じゃあこういう風に軌道修正しよう』
という答えが出ます。

人よりも早く気づいて、決断して実行した時に、
もし失敗しても、軌道修正したら、人よりも早く正しい答えになる。
そういうことです」

わあ〜! そうなんだ〜!!
と深く納得しました。

どんな敏腕バイヤーも、やり手ビジネスマンも
最初から「正解」を知っているわけじゃない。
失敗をしないわけじゃない。
今更ながらかもしれませんが、このことは私にとって大きな発見でした。

むしろ、失敗をするから正解がわかる。
失敗をしないと、正しい方向がわからない。
優秀なビジネスマンたちは、早いうちにたくさん失敗をして、
その分たくさん正解をポケットの中に入れたのかも。

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失敗をすることで、
自分だけの「正解」を手に入れることができる

 

私は、失敗をすることが大嫌いです。(まあ、好きな人はいないと思いますが)
失敗をするとわかっていたら「やらない」ことを選ぶ……。
そんな人生を送ってきた気がします。
だって、失敗をしたら人に悪く言われるし、
自分の評価が下がるだろうし……。

でも、この年齢になって
失敗からしか得られないものってあるんだ、と思うようになってきたのも事実です。
というより、
失敗の中から学ぶことだけが、その人の「オリジナリティ」を育ててくれるのでは
ないか、と考えるようになりました。
「正解」だけを渡り歩いていると、それは、だれかがすでにやっている「正解」の
跡をなぞるだけになります。
つまり、枠からはみ出さない……。
そうでなくて、「自分だけの正解」が知りたいなら、
自分で失敗しなくちゃいけない。
失敗して「アイタタ」と痛みを知って、
そこから次に進むための何かを探し出したとき
それが自分だけの「正解」になる……。

 

「絶対にこれがくる、と信じて本気で向き合うと……」
と中臣さんは語ってくれました。
この「信じる」ということと「本気で」ってことが大切なんだなあと。
その中から起こる「失敗」は失敗ではなく、
次のステップのためのサインなのかも。

 

次回は、中臣さんのコンサルティングの第一歩について伺います。

撮影/近藤沙菜


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