すっかり暖かい日々に慣れてきました。少し前まで、ウールのコートを着ていたのがうそのようですね。
春は、気候が不安定になりがち。着るものをどうするか、傘を持つか持たないか、天気予報を見ながら思案する今日この頃です。私はうっかりしているところがあって、「あ、傘がない」「ストールを持ってくるべきだった……」みたいな失敗もよくあります。そのせいか、疲れがたまっているのか、体調はしばらく低空飛行。
先日会社で健康診断を受けたところ、体重がちょっと減っていました。「見た目は変わらないけど?」と鏡をまじまじと眺めると……。あ、浮腫みがすごいんだ。
仕事の忙しさを言い訳にして、私の生活態度はひどいものです。寝る時間もまちまちだし、運動不足だし、食事も外食やコンビニ食がほとんど。疲れているときほど、おなかがパンパンになるまで食べ物を詰め込まないと気が済まず。深夜にジャンクフードをむさぼり食べている姿は、誰にも見せられません!

とある日のランチ……。
そんな生活を繰り返していると、身体はだるいし、見た目もずんぐりしてくるし。ただでさえ環境変化の多い春に、こんな状態ではいけない。頑張れない!
いつもは24時間営業のスーパーで買い物するのですが、先週末は気分を変えて、八百屋さんに行ってみました。そこで目に留まったのは、もりもりのパセリ。たっぷりと葉が広がっていて、まるでブーケみたいでかわいい。元気がよさそう。ふとひらめいたレシピがあったので二束手に取り、豚挽き肉とトマト缶と一緒に買って帰りました。
思い出したのは、エッセイスト・平松洋子さんの「パセリカレー」のレシピ。

レシピはこちらで公開されています。生のお肉にスパイスを混ぜ込むのがポイント。
食にまつわるエッセイを多数執筆されている平松さん。このパセリカレーもいくつかの本で紹介されていて、平松さんの代名詞ともいえるようなレシピです。
主役はお肉ではなく、パセリ。「え? こんなに?」と思うほど、たっぷり入れるパセリがポイントです。20分ほどであっという間にできて、ご飯にのせてモリモリといただきました。あ~、おいしい! 爽やかでパンチが効いている!
冬の寒さで縮こまっていた身体が、少しずつ緩みはじめる季節。春は、デトックスを意識して食事をすると良いと聞いたことがあります。そしてデトックスには、辛みや苦みのある香草や春野菜がぴったり。パセリカレーも、ナイスチョイスだったのではないでしょうか。
食べ物の旬が分かりにくくなっている今、たまにこうやって「ちょうど今の季節にぴったりのものを食べたな~」と思うとありがたみが増します。本当は、もっと季節に、自然に近い暮らしをしたい。そう願っている潜在意識のせいでしょうか。
ふと思い出したのは、甘糟りり子さんのエッセイ『鎌倉の家』。
甘糟さんのお父さんが購入したという、戦前に立てられた鎌倉の古い日本家屋。甘糟さんが三歳の時に移り住み、一度は家を出て東京で暮らしていたそうですが、今またお母さんと二人暮らしをされています。
親子二代にわたって文筆業をしている、甘糟さんとお母さん。そして職業だけではなく、料理・食べることが大好きなのもお二人の共通点です。
お母さんは昔から、近所を散歩したついでに、自分の庭から、野草を摘んできてはそれを料理していたそうです。いつの間にやら、「野草料理研究家」という肩書きがついて、摘み草料理のエッセイ本まで出版。甘糟さんもその習慣を受け継いで、春になるとお友達を招いて野草を使った料理を振る舞っているとのこと。(インスタグラムで紹介される「春恒例の野草の会」の投稿を見るのを、毎年密かに楽しみにしている私)
『鎌倉の家』には、そんな甘糟さん一家の鎌倉での暮らしと思い出が、季節感たっぷりにつづられています。
野草の料理で最も大切なのはタイミングだと母はいう。どの草が食べられるものかを覚えているだけではダメ。摘む時期が重要なのだ。一番柔らかくておいしいのはいつかを知っておく。――『鎌倉の家』より
春になれば野草パトロールに精を出し、夏になればサーフィンか花火大会かと心が浮き立つ。夏の終わりの風物詩といえば、御霊神社の「面掛行列」。鬼やひょっとこ、おかめなどのお面をつけた人たちが練り歩くさまは、どことなくユーモアがありちょっと不気味。通称「レンバイ」(甘糟さんは「ノーキョ―」と呼ぶ)鎌倉市農協連即売所に集まる農家やパン屋、乾物屋や雑貨屋を回る楽しみ。お正月に地元のお店から買う餅花のこと……。
バブル時代を女子大生として過ごし、東京の高層マンションで暮らしていたこともある甘糟さん。一度都会生活を謳歌した彼女が語る、自然と、家族と共にある暮らし。古い家で四季に合わせて生きることの、不便と豊かさが、鮮やかに描写されています。
私もいつか、こんな暮らしができたら……なんて。
半ば無意識に、「都会人の形」「サラリーマンの形」に身体を無理やり押し込めて暮らしている私。不調なときは、少しでも自然を暮らしに取り入れて、自分をケアしたいなと思います。
パセリカレーに味をしめたので、今週末は「パクチーカレー」を作ろうかなと計画中です。