本の中で、大好きなあの阿闍梨餅と再会    

みなさん、こんにちは!
ライター塾3期生の西胤真澄です。和菓子にまつわる小さなお話を綴っています。

温かい飲み物が美味しく感じるようになりましたね。ホッとひと息する時のお供。
昔はどちらかと言うとクッキーなどの洋菓子を好んで食べていましたが、最近は年齢と共に味覚も変化したのか、めっきり和菓子派に。
それと連載を書かせていただいてるせいか、どうしても和菓子に目がいくようにもなりました。

今回は京都の和菓子のお話です。

みなさんは「阿闍梨餅(あじゃりもち)」をご存知でしょうか。
京都のお土産として八ツ橋と並ぶ人気商品らしいです。
そんな人気商品にもかかわらず、私が「阿闍梨餅」を知ったのは、ほんの10年ほど前。
こんな美味しい物をそれまで知らなかったなんて一生の不覚!(笑)

京都出身の友人から、お土産にいただいたのが最初でした。
真ん中がポコンと膨らんで不思議な形をしています。
実は初めていただいた時、家に帰って袋を開けてビックリ。

「え〜潰れてる?もしやカバンの底でぺしゃんこにしてしまった?」

勝手にまんまるのおまんじゅうを想像していたので、ちょっと押さえつけたみたいな形には衝撃を受けました。

「阿闍梨餅の中央部が盛り上がった形は、
比叡山で千日回峰修業を行なう阿闍梨がかぶる檜笠をイメージしたもので、
厳しい修行中に餅を食べて飢えをしのいだことにちなんで考案されたといいます。」商品紹介より

なるほど〜不思議な形だと思いましたが檜笠の形であるとわかり納得。

カステラみたいに見える生地は餅粉をベースに卵をはじめとする様々な素材を練り合わせてあるそうで、
ねっとりした食感が特徴的です。


餡は丹波大納言小豆の粒餡で口に入れると小豆の皮がプチプチして美味しさを引き立たせてくれる気がします。


さて、以前読んだ本の中にこの阿闍梨餅が出てくるシーンがあったので、その本のご紹介をしたいと思います。

瀧羽麻子さん
「いろは匂へど」

京都に住む30代の女性のお話。
和食器店を営み、好きな物に囲まれ静かに暮らす彼女。
その彼女を取り巻く人々との日常が描かれています。
冒頭で彼女は、朝ごはんの代わりに「阿闍梨餅」をカバンに突っ込み、
仕事に行く途中、御所のベンチに座って食べる場面が出てきます。
私は京都が好きで御所にも何度か訪れた事があったので、
阿闍梨餅が出てきた場面で、頭の中に京都御所の広い道がわぁ~~っと浮かんできて、
まるで自分もそこにいる気持ちになりました。

「阿闍梨餅」

「京都御所」

この2つのフレーズで、この本に心を鷲掴みにされてしまったのです。
和菓子を朝食代わりにするあたりも、ちょっと自分と似ていて主人公に親近感を覚えました。

このお話には、草木染めや器の事が丁寧に描かれていて、
お好きな方はもちろんですが、知らない方にも興味深く読み進める事ができるかと思います。
瀧羽麻子さんの作品は、どの作品も読後感がほんわかするので心が疲れている時にオススメです。 

阿闍梨餅はひとつ100円ちょっと。
疲れて甘い物が欲しい時に嬉しいお値段です。
京都に行かなくてもデパートで買うこともできるので、お出かけした帰りに買うこともできます。

最初に阿闍梨餅をくれた友人は、今でも会うたび決まってお土産に持たせてくれるので、
今では「阿闍梨餅」と聞いただけで、ついその友人を思い出してしまう私です。

今回は知人の木工作家「ファニチャースタジオコム」さんのお椀を菓子器として使いました。



木の器は陶器などに比べると軽くて割れにくいので、小さなお子さんでも安心して使う事ができます。
また、年齢を重ねると軽い木の器は扱いやすくて重宝します。
私は和え物を入れたり汁椀としても使っています。

和菓子をいただく時は、どの器に入れるとお菓子が美味しく見えるかな〜?
これかな?それともこっちかな?と食器棚に顔を突っ込みあれこれと悩みます。
食べるまでに時間を掛けて心も器も整える。
まるで神聖な儀式のようです。

お菓子と同じ土地のお茶を選ぶと気分も上がります。
阿闍梨餅をいただくなら、やっぱり京都のお茶がいいですね。

京都のお茶は色々ありますが、今回は「一保堂茶舗」さんのくきほうじ茶と一緒に楽しみたいと思います。
あ〜京都に行きたくなってきました。
行けない時はデパートの和菓子コーナーで京都の和菓子を探し、食べる事で京都を楽しんでみようと思います。

さて、次回はどんな和菓子にしましょうか?

お楽しみに〜。

 


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