クロモジの香りのスキンクリームに出会いました。 avec 荒井利代子さん vol.1

 

「クロモジで、スキンクリームを作ったので、ぜひ一田さんに見ていただきたいと思って」。
荒井利代子さんからこの「私を見つけてプロジェクト」に連絡があったとき、
思わず
「えっ! クロモジ!?」
と私のアンテナがピピピッと反応しました。

というのも、以前、クロモジ茶をいただいたり、
クロモジの精油の香りをかいだことがあって、
その何とも言えない、爽やかさに、
「クロモジっていいわ〜!」と思っていたところだったのです。

ミントやローズマリーなど、西洋のハーブとは一味違い、
爽やかさの中にも、どこか和を感じさせ、
その落ち着いた、奥ゆかしい香りが、大好きでした。

そこで、さっそくお会いして、お話を伺うことにしたのでした。

とは言っても、実は荒井さんは、コスメやアロマの専門家ではありません。
なんと、ナチュラルチーズの専門店で熟成業務を手掛けていたそう。

「若い頃からフランスの文化が大好きでした。
大学時代に友人とパリのお菓子屋さん巡りに出かける前に
友人が「これ、本屋さんで見つけたのよ」と持ってきてくれたのが、
フランス菓子・料理研究家の大森由紀子さんのお菓子の本でした。
そこから、大森先生の教室に通い始めたんです」

と荒井さん。
ちょうどその頃、実家近くにチーズ屋さんがオープン。
フランスからできたてのチーズを輸入し、独自の方法で熟成させてから販売する……。
そんなチーズを食べたとき、
「草や花など、牛が食べているものによってミルクの味が違い、
そのミルクで作ったチーズの味もまったく違う。
そのことが驚きで!
そして、作るところから熟成まで、ちゃんと手をかけたら、
こんなに美味しくなるんだ、と知ってこんな仕事をしたい!と思ったんです」
と教えてくれました。

こうして、そのお店で一緒に働くことになったというわけ。

ところが……。
チーズの熟成には、アルコールを使ったり、
水仕事が多かったり。
「チーズには油分があるので、結構お湯で手を洗うことが多く、
手がいつもガサガサでした」。

そんな手荒れを治すクリームが欲しい……。
でも、市販のものは、いろいろ余計なものが入っているし、
保湿性が高ければ高いほどべとつく。
もっといいものないかな?

そう考えるようになったそう。
そこで、声をかけてみたのが、お父様でした。
荒井さんのお父様、古川利正さんは、長年化粧品メーカーで化粧品開発を手掛けてきた方。

「家でも、ビーカーを回しながら仕事をしていた姿をよく見ていたんです。
自分が欲しい保湿クリームを作ってみたい……。
そう思うようになったのは、父の存在があったからですね」。

そう! 「avec=アヴェック」という名前のスキンクリームは、
父と娘の競作だったというわけです。
そこで、さっそくお父様にもお会いしに行ってみることにしました。

向かったのは、千葉県にあるご実家。
今年77歳になるお父様は、
一昨年会社をクローズし、今はそのキャリアを活かして、
個人事業主として化粧品開発のコンサルタントをされています。
今は、ご自宅の一室をアトリエに使っていらっしゃいました。

「このクロモジのスキンクリームのいいところってなんですか?」
と聞いてみました。

「良質な保湿力ですかね」とお父様。

え?

「良質な」保湿」って?

「使っていただくと、その違いを感じていただけると思うのですが、
しっとりするけれど、べたつかないんです
『しっとり』と『べとつく』は別物だから」

「なんてことないのに、つけたくなる。
この『スキンクリーム』の特徴はそこかもしれませんね。

ありったけの思いを込めて作ったものに
『なんてことない』
なんて、なんだかおかしい表現かもしれないんですが、
ついつけたくなる、って本物だからこそ、だと思うんです。
優しいつけ心地や誠実さ。
それが父の言う『上質な保湿力』だと思っています」と荒井さん。

なるほど〜!と納得しました。

父と娘の作った小さなブランドだからこそ、
そこには、大手ブランドとは違う、誠実さがあります。

「なんてことのない」よさは、暮らしの中で使ってみてこそわかること。

「手に塗ったときに、ベトつかないから、
すぐに仕事に取り掛かることができる。
そんな暮らしの相棒になるようなクリームがいいなあと思って」。

そんなお話を聞くと、私もこのスキンクリームを使ってみたくてウズウズしてきました。


さっそくひとついただいて、持って帰り、使ってみました。
まずは手に塗ってみると、
適度にしっとりとした感触。
伸びがよく、「ああ、これは保湿力が高いわ!」とすぐにわかりました。

でも、しばらくすると塗った手がサラッとするのです。
これにはびっくり!

「ああ、荒井さんとお父様がおっしゃっていた、
『良質な保湿力』ってこのことなのね!」と深く納得しました。

そして、なにより、あのクロモジの香りのよさと言ったら!
決して強い匂いではないのに、
ス〜ッと鼻に抜けて、心がすとんと落ち着きます。

今まで嗅いだ中で、間違いなく、いちばん好きな香り!

しばらく、クリームを塗った両手で顔を包み込み、
す〜は〜と息を吸ったり吐いたりして、
その香りを思い切り楽しみました。

チーズが、元をたどれば草や花から生まれたように、
自然にはすごい力がある。
だから、スキンクリームも、すべて植物で作りたい、と考えたそう。
そこで、防腐剤まで植物エキスのチョウジやクローブを使い、
なるべく刺激が少なくて肌に優しく、使い心地もいい。
香りにも癒されるクリームに。

次回は、おふたりに伺った話を、もう少し詳しくお届けします。

クロモジの香りのこのスキンクリームを使ってみたい方は、「avec」のホームページからどうぞ!

撮影/近藤沙菜

 


特集・連載一覧へ