あの「赤福」のヘラには、隠された秘密があった……。

みなさん、こんにちは!
ライター塾3期生の西胤真澄です。
和菓子にまつわる小さなお話を綴っています。

前回の夏のわらび餅から少し時間が経ってしまいましたが、
その間に栗や芋などを使った美味しい物がいっぱい店頭に並んでいて、
和菓子を楽しむ時間が増えています。

そんな中、今回は季節を問わず通年楽しめる和菓子のお話しです。


みなさんは伊勢の名物「赤福」をご存知でしょうか?
関西人なら知らない人がいないというほど有名な和菓子です。

三重県にある伊勢神宮内宮から直線に続く道の中程にある
「おかげ横丁」という横丁の入口の目の前に赤福本店があります。
そこではお店の方が手際よく作っている姿を見る事ができるので、いつも子供のように見入ってしまいます。

朝早くから伊勢神宮にお参りに行く人が立ち寄れるようにと、朝の5時からお店が開いてるそうです。
また三重県だけに限らず近鉄沿線の色々な駅の売店(今はコンビニ)でも販売されているので、
関西では手に入りやすい和菓子です。

私が住んでいた地域では小学校の修学旅行が伊勢方面だったので、
お小遣いで初めて家族に買って帰った思い出深いお土産でもあります。

柔らかいお餅をこし餡でくるんだあんころもち。
こし餡はあっさりしているので何個でも食べられちゃうんです。

柔らかいお餅は、絶妙な傾斜がついた付属のヘラを使うと上手に取り分ける事ができます。
このヘラごとパクリと食べるのが自分の中でのご褒美食べ。

つやつやしたこし餡の表面には手で握ったような筋がついていますが、
この筋は三重県伊勢市の五十鈴川の川の流れを、そして白いお餅は川底の白石を表しているのだそうです。

今まで知らずに食べていましたが、意味を知ることで美味しさも増すような気がします。

和菓子は昔の人が色々な想いや意味を込めて作られている物が多く、
その土地の風土や歴史に触れる事ができます。
今ある物でみたてを楽しむなんて、なんと風情ある食べ物なんでしょう。

実はこの「赤福」は私にとって戒めの気持ちを感じる食べ物なんです。

独身の頃、私立の幼稚園に勤めていましたが、
その幼稚園では、職員人数が少なかったので「決して全員で旅行などに行かないように」
という決まりがありました。
もし事故などのトラブルがあれば幼稚園の運営ができなくなるからです。

ところが私達職員はある年の冬、園長に嘘をついて全員で北海道へスキーに行ったのです。
まさに「若気の至り」
みんなであれこれ嘘を考え、下手なアリバイ工作までし、ハラハラドキドキ。
よく事故や怪我もなく無事に帰って来れたものだと、今考えても冷や汗が出ます。

あの頃の事を振り返ってみるのですが、旅行中の事はほとんど記憶になく、
アリバイ工作で各自北海道以外のお土産を買った場面や、
つじつま合わせのシナリオを必死で暗記した事ばかりが思い出されるので自分でもおかしくなります。

私達は園長をうまく騙せたと思っていたけれど、
きっと騙されたふりをしてくれていたのでしょう。
馬鹿げた嘘はお見通しだったのではないかな?と思います。

園長は昨年お亡くなりになったので、確かめる事もできませんが「あの時は嘘を付いてごめんなさい」

その旅行から帰ってすぐの頃に読んだ話です。

三重県にいたはずの犯人が実は大阪にいた。
アリバイ工作に使われた「赤福」でそれが証明されてしまう。

何故、嘘がバレたのか?
それはこの「ヘラ」に隠された秘密が!!

大阪で殺人を犯した犯人は大阪のデパートで「赤福」を購入。
あたかも三重県にいたかのように知人に手土産として渡す。
しかし、その当時、伊勢の「赤福」には木製のヘラが使用されていたのだが、
三重県以外の「赤福」にはプラスチック製が使用されていた。犯人が買った「赤福」のヘラはプラスチック製。
まさか、購入先でヘラが違っていたなんて、犯人は気付く事ができず…。

という話を読み、北海道旅行の時の嘘を思い出し、ヒヤッとしました。
どんなに巧妙にアリバイ工作をしても嘘はバレるのです。うまく騙せたと思う事も実は相手はお見通し。
1つの嘘を付くために、どんどん嘘の上塗りをしていく事にもなります。
嘘はだめ〜。 絶対だめよ。

それ以降、私は嘘を付かないよう心掛け、真面目に生きています(笑)

そんな訳で、今でも「赤福」を見ると北海道の嘘を思い出し、ヒヤッとなります。

 

と、ここまで書いておいてなんですが、みなさんに朗報です。

今回色々調べると、今の「赤福」はどこの店舗でも同じ木製ヘラになってるそうで、
色々なヘラを使用していたのは、ほんの数年間だけだったそうです。
だから今ならアリバイ工作に使えますよ〜(ちゃうか〜)

お店で番茶とともにいただく「赤福」は2個で250円ですから、お財布にも優しくお腹も心も満たされます。
夏場はかき氷の中に氷用の特製の赤福が入っていて抹茶蜜が掛かっている「赤福氷」というかき氷もおすすめです。

最近デパートでは2個入りの販売もあるので、少しだけ食べたい時に有り難いですね。 

 

赤福をいただく時の器は知人の陶芸家「福岡彩子」さんの平皿を使います。
(今は作陶されていないので貴重な器となります)


真っ平らなお皿はケーキや和菓子を乗せるのに便利。
こぶりなので器を茶道の時に使う懐紙のように手に持っていただく事もできます。

一緒にいただくお茶は伊勢茶にしましょうか。
お菓子と同じ地域のお茶を選ぶと楽しみも広がります。

これから寒くなる時期、お気に入りの温かいお茶と一緒に和菓子を楽しんでみませんか?

和菓子にまつわる小さなお話。
今月もお楽しみいただけたでしょうか?

それではみなさん次回もお楽しみに〜。

 


特集・連載一覧へ