スポーツでの挫折からすべてが始まった。土師剛さん vol.1

 

「私を見つけてプロジェクト」第2弾は、ギタリストの土師剛さんです。
土師さんは、私のライター塾に参加してくださった方。

土師さんって、不思議な方なのです。
そもそも、ギタリストがどうしてライター塾で文章を?
さらには、この「私を見つけてプロジェクト」に応募してくださった理由も、
「えっ? それ?」というびっくりなものでした。
土師さんの中には、外からだけではわからない、なにやら熱い想いが潜んでいるようです。

そして、私はそのお話を聞きながら、
「誰かの背中をちょっと押してあげる」ために始めたプロジェクトなのに、
土師さんに、たくさんのことを教えてもらい、
ああ、この企画って、こんな素晴らしいものを私自身にも与えてくれるのね……。
とその思いもかけない展開に驚いたのでした。

この「私を見つけてプロジェクト」は有料で、
「私はここにいます。誰か見つけて!」という方をご紹介するというものです。
つまり、応募者は料金を支払ってくださるというわけ。
当然、料金に見合うだけの見返りがなくてはいけません。

そこで、まずは土師さんに「いちばん望んでいらっしゃることは何ですか?」
と聞いてみました。

ギターのCDを販売するとか、ライブにたくさんの人に来て欲しいとか、
ギターを教えてもいらっしゃるので、生徒さんを集めたいとか……。
そんな答えが返ってくるのかと思いきや……。

「まずは、やっぱり知ってもらいたいんです。
こういうミュージシャンがいるっていうことを」と土師さん。

そして、
「たとえば自分の曲が売れて有名になることがゴールではなく……。
なんて言うんですかね……。
いろんな人に出会って、僕自身がどんどん変わっていって、
そうしたら心が充実してくるんです。
どんどん楽しくなるし、どんどん発見がある。
そういうことって、ミュージシャンじゃなくても、どんな人にも起こるはず。
そんなことを知ってもらいたい」と……。

えっ?
そんなことでいいの?
「知ってもらう」だけに、決して安くはないプロジェクトの費用を出すってこと?

実は、土師さんのご自宅は、我が家から徒歩3分ほど。
もともと岡山在住でしたが、昨年奥様とふたり上京されたばかりなのだと言います。

そこで、土師さんがどんなふうに「人と出会って」「どんどん変わって」いったのか、
ご自宅に伺って、じっくりお話を伺うことにしました。

この段階では、私には「土師さんが望んでいること」がいったい何なのか、
まだ見えてはいませんでした。

ギターとの出会いは、中学生の頃にお父様に買ってもらったことから。
それまでは「スポーツばっかりやっていて、自分のアイデンティティは『スポーツ』でしたね」と土師さん。

競泳、ハンドボール、バレーボール、卓球、柔道……。

「頭はよくないんですが、優等生タイプ。
真面目でいろいろリーダーやったり、学級委員をやったり。
精神的に決して強いタイプではないので、いろんなことに流されて……。

音楽にもちょっと興味があったんですが、なんとなく恥ずかしくて、
自分で演奏するなんて考えてもいませんでした。
中学生になって、だんだんスポーツに限界を感じ始めました。
やっぱり上に行ける人はどんどん行く。
でも、僕はそこまで情熱がない……ってやっと気づいたんです。
そうしたら、水泳の飛び込みの練習中に前歯を折ってしまって、その時に心も折れちゃって」

ちょうどその頃買ってもらったのがギターでした。
「弾き始めたら、あれ?なんか楽しいなって思い始め、音楽の先生にも褒められたりしていました」


それでも、スポーツはまだ続けていて、高校生ではハンドボール部に所属。
ところが、また大怪我を負います。

「 入院したり、手術をしたり、リハビリしたり。
自分はハンドボールでどこまでもいってやる!って思い込んでいたけれど、
『ああ、怪我をしたら終わりなんだ』って、一気に道が閉ざされて……」。

そして、怪我のリハビリ中のこんな話を聞かせてくれました。

「ハンドボールの友達たちとすごく仲が良かったので、『やめる」って言えなかったんですよね。
それで『外を走ってきます』って言って、サボって、
歩いていると、道端の花がめっちゃきれいで、感動したんです」。

そして……。

「めちゃ真面目だったのに、仮病を使って学校をさぼったこともありました。
怪我をして病院行くので早退させてくださいって言って、
電車に乗って岡山の街まで出て、楽器屋さんやCDショップに行ったりして。
そんな中で出会ったのが、ブルースだったんです」。

このブルースとの出会いが、土師さんの道を変えました。
そのお話が、またなんとも興味深いのです!
この続きは、次回お届けしますね。

お楽しみに〜。

 

土師さんの演奏を予告編として少しお届けします。

 

 

 

土師さんのギターの音色は、暮らしにそっと寄り添ってくれます。
私も原稿を書くときに聞いています。
これを機に、ギターを習ってみたいという方もぜひ!

土師さんのCDの販売、音楽活動、レッスンなどの情報は、こちらのホームページからどうぞ。
インスタグラムはこちら
You-tubeはこちら

撮影/黒川ひろみ

「私を見つけてプロジェクト」についての詳細は、こちらをご覧ください。


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