「kibaco」 番外編 自分の仕事をお休みしてみたら、新たな世界が見えてきた

 

若い頃から、思い立ったらすぐ行動!の人

2回に渡って、葉山の整体、はり灸、漢方茶の施術所「kibaco」のご紹介をしました。(第1回第2回)
2回で終わりの予定だったのですが……。いろんなお話を伺っているうちに、「kibaco」を裏側から支える奥様、咲子さんのことを、どうしても書いてみたくなりました。番外編としてお届けしたいと思います。

会社員だった夫が、独立して施術所を始めると言い始めたとき、もしかしたらうまくいかないかもしれない……と不安ではなかったのですか? と咲子さんに聞いてみました。

「やれることを全部やって、ダメだったら次考えればいいかなって考えていました。とにかく住む場所が変わるし、生活もきっと変わるだろうし、不安よりワクワクの方が大きかったですね」と笑います。

「妻はエイヤッ!とやっちゃうタイプで、僕は石橋をしっかり叩いて渡るタイプなんです」と夫の翼さん。

都内では、日本語教師として働いていたという咲子さん。
「私は奈良の田舎の出身で、外国人がほとんどいない環境で育ったんです。小学校6年生のときに、近所で英語を教えてくれる先生のところに行って『こんな世界があるんだ!』と英語に興味を持つようになりました」。
高校生の時に1年間ニュージーランドに留学。大学時代からノルウェーに興味を持ち、卒業後は就職せずに留学。大学に一年半通ったそうです。「ノルウェーは福祉の国だから、当時は外国人でも学費がいらなかったんです」と教えてくれました。そして……。

「学生寮に入って、寮のすぐ近くを歩いていたら、素敵なレストランを見つけたんです。ドアを開けて『アルバイトを探しているんですけど、働かせてくれませんか?』と言ってみたら、ちょうどオープンしたばかりのタイ料理店で、忙しくなり始めたばかりの頃で雇ってもらえたんですよね」
こんなところも、思い立ったらすぐ行動!の人だとわかりました。

 

仕事って、100%の力を注ぐ1本の道じゃなくていい

今回翼さんが独立し、施術所を立ち上げるにあたって、日本語教師をやめるには迷いはなかったのでしょうか?

「15年も続けていたので、自分の中でやり切った感もあったし、それしかやってこなかったので、違う世界を見てみたい、という気持ちもありました」と咲子さん。

若い頃から、自分の好きなことが明確で、自分で仕事を作ってきたのに、夫のサポート役になることに抵抗はなかったのかな?と思って聞いてみると……。

「実は最初、彼の仕事を手伝うつもりはなかったんです。彼は彼のやりたいことをやって、私もゆくゆくは自分の道をまた見つけたいと思っていました。でも……。今は少しそれが変わってきたんですよ」。

以前は子供を保育園に預けて仕事ばかりしていたそうです。でも、今一旦違う場所に足を置き、まったく違う生活を始めてみたら、想像もしなかった世界が広がっていきました。

「東京にいた頃は、毎日仕事が忙しくて、いわゆるママ友とのつきあいもほとんどありませんでした。でも、葉山で新たに子供を通してたくさんのママたちと出会ったら、いろんな人がいて、みんなそれぞれの世界を持っていて、面白い活動がたくさんあったんですよ。今は、一緒に山歩きに出かけたり、海で大会に出てみたり。今、ママ友4人で『タビスルスイーツ』というユニットを作って、保育園に世界のおやつを作りに行く活動をしているんです。そういう生活の中で、大切なことがどんどん増えていきました。

私、頭の中では日本語教師をやめたから、それと同じぐらい太いものを見つけなくちゃ、という焦りもあったんです。夫はどんどん自分の世界を作っていくし、『私だけなにもなくなった』って最初は思っていたし……。100%の力を注ぐことができる1本の道こそ仕事だと思っていたんですよね。

でもいろんな道を束ねて1本になれば、それはそれでいいのかな?と最近ちょっと思い始めました。今、鎌倉で観光客の通訳のお仕事を少しずつ始めているんですが、それも私。おやつを作るのも私。『kibaco』の仕事を手伝うのも私……」

 

「夫を手伝っている妻」でなく、同じチームのメンバーに

でも、ママ友と過ごす時間では、お金は儲からないですよね? とちょっと意地悪な質問をしてみました。

「収入は減ったし、そのことに不安がないと言えばそうではないけれど、でも今、以前と同じペースで働こうとはまだ思えないんです。朝、子供を送り出してからの隙間時間の40分だけでも友達と山に歩きに行ったり……。そういうフレキシブルな感じが、今はちょうどあっているのかもしれません」

もしかして、葉山に引っ越して、大きく人生のステージが変わったのは、咲子さんの方だったのかもしれません。今は、漢方茶の発送など、「kibaco」の裏方の仕事を手掛ける咲子さん。

「夫がひとりで必死に頑張っている姿を見て、少しでも応援できたら、という気持ちで、バックヤード業務を手伝い始めました。そこから、少しずつ夫が「kibaco」で実現しようとしていることが見えてきて、今では「夫を手伝っている妻」というスタンスではなく、夫と一緒にチームの一員として仕事ができているなあと感じられるようになりました。私が「kibaco」のためにできることを探して、見つけて、挑戦していきたいですね」。

お茶を煎れて10分座ってみる……という効果

「引っ越すんだったら葉山がいい」と言い出したのは咲子さんでした。住む場所を変え、仕事を変えるって、人生のステージを変えるっていうことなんだなあと、今回お話を聞きながらあらためて思いました。ずっと頑張ってきた仕事を手放し、山と海の恵みいっぱいの新たな環境で、新たな人間関係を築く……。まるで、生まれ変わったかのように、まっさらな画用紙を広げて、絵を描き出したかのようで、なんだか羨ましくなってきました。

「頑張る大人はみんな休むことが苦手なんですよね」と咲子さん。

「お茶を煎れて、10分でもいいから座ってみる。たったそれだけでも人生が変わっていく気がします」。

そんなお話を聞きながら、たった1杯のお茶の力を信じてみたくなりました。

咲子さんのお話を聞いて、私もいただいて帰った漢方茶「二週漢」をいただく度に、「10分休憩しよう」と思うようになりました。
常に仕事のことばかり考えている私ですが、ちゃんと自分のための急須とカップを準備して、熱いお湯を注いでお茶を入れ、「ふ〜っ」と深呼吸しながら、何にも考えずにお茶を飲む……。

もしかしたら、そこから「もうひとりの私」が見えてくるかもとちょっと期待しています。お茶によって「休む」という習慣を手に入れるのも、いいかもしれません。

 

kibaco
神奈川県三浦郡葉山町長柄424-1
042-854-4219

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撮影/近藤沙菜

 

 

 


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