【もやもや女の読書日記】私に効く本、いただきます「最初のごあいさつ」 梅津奏

この「外の音、内の香」が、私だけのものではなく、
色々な人があちこちで、 見つけてきたことを持ち寄る「場」になればいいなあと
作ったコンテンツ「ライターズマルシェ」。

新しいメンバーが加わりました。
梅津奏さんです。
初めてお会いしたとき、若いのにとてもしっかりした方で驚きました。会社員として忙しい日々を送っていらっしゃる中で「好きなことを書きたいんです」とまっすぐな目で語ってくれました。
仕事と仕事の合間や休みの日は、本を浴びるように読んでいらっしゃるのだとか。今回は、ご飯を食べるのと同じように本を読む梅津さんに、読書日記を綴っていただくことになりました。本の紹介だけでなく、日々の小さなもやもやを抱えながらも、ちょっとだけ前を向く……。そんな日常と本の世界の交差を楽しんでいただければと思います。

皆さん、こんにちは。はじめまして!

都内で会社員として働きながら、コラムニスト・ライターとして活動している梅津奏(うめつかな)と申します。このたび、本の話をする連載をスタートすることになりました。

 

今日は初回なので、自己紹介と私のこれまでの読書遍歴のお話から。

1987年生まれの35歳。杜の都・仙台出身。就職するために上京し、以来13年東京で暮らしています。

新卒で入社した会社はザ・日本企業。チームワークと個人プレイ、安定と刺激がいいバランスの職場です。毎日えっさほいさと働いているうちに今に至るという感じ。きっとこのまま定年まで、えっさほいさを続けるんだろうな~と思っています。

平日はほぼ仕事一色ですが、唯一の趣味「読書」だけは毎日欠かしません。通勤時間・ランチタイム・お風呂の中・寝る前……、隙間時間を見つけては読む。10年前にkindleという文明の利器を得てからは「隙間読書」癖が加速しました。歯磨きしながら、髪を乾かしながら。洗濯機から洗濯物を取り出しているときも、横にはkindleが置いてあります。

 

「昔は本が好きだったけれど、大人になってからめっきり読まなくなった」

受験や恋愛・就職など、生活の変化をきっかけに読書習慣が中断したという話をよく聞きます。一方私は、本を読み始めた5歳くらいから今まで、まったく途切れることなく本を読み続けています。

それは読書が私にとって、毎日ご飯を食べることと同じくらい必要なことで、ほかのものでは代わりがきかなかったから。

受験勉強に行き詰ったとき、恋に悩んだとき、仕事のできなさに泣いたとき、家族と喧嘩したとき。どんなときも私のもやもやに答えをくれるのは、豊かな本の世界でした。

本が教えてくれるのは、自分の視野の中だけで生きていては見えないもの。

想像力が豊かなあまり大人たちを呆れさせてしまうカナダの少女に自分を投影したり(『赤毛のアン』(モンゴメリ/新潮文庫))、日々の仕事を「文化的雪かき」と呼ぶ主人公にハッとさせられたり(『ダンス・ダンス・ダンス』(村上春樹/講談社文庫)、演劇界の重鎮から、コミュニケーション力はセンスで決まるものではなく練習して鍛えるものだと学んだり(『コミュニケイションのレッスン』(鴻上尚史/だいわ文庫)……。

「こんなことに悩んでいるのは私だけなのかもしれない」。
本は、そんな寂しさに寄り添い、時に刺激を与えてくれます。

 

会社の仕事をしているときは、合理的に経済的に、かなりバシッと割り切って働いています。ルールを守り、仲間とたくさん話し、求められるものにクイックに応える。そういうことが得意です。

出勤して納税して、快活に社交するのは「A面」の私。そして「B面」の私は、内気で人見知り。お友達と遊ぶより本棚の前にいるのが好きだった子供のころの私そのものです。A面がキリっとしていられるのも、B面がまだ私の中に残っていて、寸暇を惜しんで本を読み続けているから。B面が本から栄養補給をして、A面にせっせと栄養分を運んでいるイメージです。社会と接しているA面は、実は外圧に弱くとても不安定。もしB面がいなかったら、今頃ポキッと折れて、故郷の仙台に逃げ帰っていたことでしょう……。

 

「最近肌が荒れているな。ビタミンのサプリメントを飲もうかな」

私はいつも、意識してか無意識にか、そんな気分で本を選んでいるみたい。

この連載では、もやもやしがちな私の「本からの栄養補給」について書いていきます。もし、読んでくださる皆さんにも効きそうな本があれば、ぜひ手にとってみてください。


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