わらび餅が育ててくれた嫁姑の愛おしい関係

みなさん、こんにちは!
ライター塾3期生の西胤真澄です。
和菓子にまつわる小さなお話を綴っています。

前回は初夏の和菓子でしたが、今回は夏の和菓子です。

暑い夏、みなさんはどんな和菓子を食べますか?
暑いから甘い物はちょっと無理かも〜なんて方もいらっしゃるかと思いますが、私は暑くても食べますよ〜。
暑いときには喉越しのいい和菓子。

 

 

そう「わらび餅」です。

わらび餅はトロンと柔らかそうですが、実は弾力もあり食べ応えがあります。
きな粉を絡ませながら口に含んで食べた時の幸福感ったら。も〜、きな粉好きにはたまりません。

 どら焼きなどと比べるとカロリーも低いので、甘い物を食べている罪悪感も、
幾分やわらげてくれそうな気がします。
しかし原材料はでんぷんの粉や砂糖なので、糖質は多いのです。

食べすぎには注意しなくちゃ〜。

 そのまま食べるのもありですが、オススメの食べ方は、ちょっと贅沢に、
きな粉の上から黒蜜を掛けて食べる食べ方。まるで山梨の信玄餅のような感じになります。

わらび餅はスーパーでは100円くらいで手に入る物もありますが、
和菓子屋さんでは木箱に入って高級品の仲間入り。
特に私のお気に入りは三重県にある「まっちん」さんのものです。
一日に数個しか販売されないので、大阪から車で名古屋方面に行く際には、まず、前日に予約しておき、
わらび餅を目掛けて朝早くに出発する事にしています。

 

大量のきな粉に埋もれていて、まるで宝探しのよう。
いつも買ってすぐ車の中で食べるので、きな粉がこぼれないように新聞などを広げてから食べるのです。
お箸とスプーン、ジップロックは必須アイテム。

きな粉の中で隠れているわらび餅をお箸で探します。
おっ!発見。
トロ〜リ、プルプル。柔らかいので早く食べないと落ちそうです。
きな粉は香ばしくて甘さ控えめなのでスプーンでパクリ。
美味しい〜。

まっちんさんのわらび餅はいつも車の中で食べるので、
食べ終わったあとの残りのきな粉はジップロックに入れて家に持ち帰ります。
結構な量が残るので再利用するためです。写真のわらび餅には、持ち帰ったきな粉を使っています。

さて、みなさんは「わらび餅」を買う派?作る派?どちらでしょう?
我が家は上にも書いたように買う事もありますが、断然作る派です 。

私が小さい頃、母が作ってくれた夏の定番おやつで「食べたい!」と言うと、
すぐにお鍋を取り出して作ってくれたのです。
ボールに入れた、たっぷりの氷水の中に、スプーンで丸く形成されたわらび餅が、
ポトン!ポトン!と落ちていく景色は、今でも幸せな記憶として残っています。

そんな記憶のおかげで、家庭を持ってからも、夏になると、私もわらび餅をせっせと作ります。
冷やし過ぎると、白く濁って固くなるので、作り置きにはむきません。
だから、食べたいと思ってから作る事にしています。

わらび餅粉ときな粉さえ常備しておけば、急な来客時でも、
30分もあれば喋りながら作り、ライブ感も含んだおもてなしができます。

息子夫婦が遊びに来た時も、「わらび餅食いたい〜」とリクエストがあれば、パパっと作ります。
買う派だったお嫁さんは「えー!わらび餅って家で作れるんですかー」ってびっくりして、
「いっぱい食べれる〜」って喜んで食べてくれました。

できたわらび餅は大阪の陶芸作家「su-nao home」さんのしっとりとしたマットな黒の九角の深鉢へ。
金属が合わさったような質感が特徴的な器です。
黒い器に入れるだけで、わらび餅が高級品に見えるのが不思議ですね。小皿も合わせて使います。

また夏の和菓子には「fresco」さんのガラスの小鉢も涼しげでよく合います。
こちらは石庭で有名な京都龍安寺の土堀の高さを表した1.9mシリーズです。
ほっそりした高台ですが絶妙なバランスで安定感があり、シルエットも素晴らしい器です。

このように和菓子は食べるだけでなく器選びも楽しみとなります。

ところで、2人の息子たちは、それぞれ結婚して近くに暮らしているので、
家族でよくご飯を食べにきてくれます。
息子たちが結婚した当初、私が悩んだのが食後の片付けでした。

食器洗いを「お嫁さんに手伝ってもらう?」
「私が自分でする?」

お嫁さんはよく気が付き、よく動いてくれるので、
「洗い物しまーす」と身軽に食器を洗って後片付けをしてくれます。
実はそこが私の大きな悩みだったのです。

私は器が好きで、作家さんの器を少しずつ集めて喜んで使っています。
今まで台所は自分の好きなように、ご機嫌に使い、
自分でも気付かないうちに細かなマイルールができていました。
特に器に関してのルールが細かくて、器によって洗い方を変えているのです。

例えば、繊細な吹きガラスなどは割れないよう別に洗い、布を敷いた上に置く。
漆は傷つくと嫌なので、ゴツゴツした陶器の上に重ねない。
コップは丈夫なフランスの業務用を使っていますが、
陶器で傷つかないよう洗いかごに入れるときは気を付けて置く…などなど。
人からすると相当面倒くさい事ですが、その面倒くさい事を何よりも楽しみ、
毎回たくさんの器を選んで使い、丁寧に扱う時間を大事にしながら生活していました。

 でも、お嫁さんは洗いながらどんどん器を重ねていきます。
「ひぃ〜〜〜、お願い、それとそれは重ねないで〜」心の声が叫びます。

色々悩んだ結果、「洗い物は自分でして、器を拭くだけをやってもらおう。
そして、お嫁さんにも私が大事にしてる器の事をちゃんと話そう。」と考えつきました。
でもね〜言い方によっては、嫁姑問題勃発になりかねません。あ〜難しい。
うまく伝わるかな? ドキドキです。

先日、お嫁さんが「わらび餅を作ってみたい」と言ったので一緒に作ってみました。

まず、わらび餅粉と砂糖と水を混ぜ、中火にかけます。

シャモジ(無印の物が使いやすい)でくるくる混ぜていきます。

 

最初、白かった液が、だんだん透明になってきます。
半透明になったら、焦げやすいので弱火に。
シャモジが重くなってきて混ぜるのに力がいるようになってきます。

 

混ぜるのに疲れてくるので何度か二人で交代。

綺麗な透明になったら、さらに2分ほどよく練り混ぜるとできあがり。

 

昔、母がしてくれたようにスプーンで丸くしてもいいですが、
私は四角いバットに流し込み、周りを氷水で冷やします。
氷で冷たく冷やしたら3センチくらいの四角にカットして、きな粉をまぶせば出来上がり。

「どの器に入れようか? あっ、スプーンやフォークも出してね〜」

 食後の片付けで悩んでいたあの頃から、気付けば6年が過ぎていました。

今では孫もたくさんいて、台所はいつもわちゃわちゃでぐちゃぐちゃ。
マイルールとか言ってられないくらい、大忙し。
お嫁さんと2人で何とかしないと回りません。

器の事をどんな風に話せば伝わるかな?と悩んでいたけど、
改まって話すこともないまま時が過ぎていました。
そして自分の優先順位が、器をゆっくり楽しむ事より、
みんなで楽しく食べる事が一番!に変化していました。
日々の会話の中で感じ取ってくれたのか、お嫁さんも器好きになり、
いまでは我が家の台所や器を上手に使いこなしてくれています。

 

お嫁さんの作ってくれたわらび餅を机に並べながら、
嫁姑の関係性もすくすく育ってるな〜とニンマリ。

これから孫たちにも私の大事な器の事や作家さんの事、そして
手作りの良さを伝えていけたらいいな〜と思います。

さっ、出来たよ〜みんな集まれ〜食べよ食べよ。

**おまけ**

わらび餅を作ったあとのお鍋には氷を入れてしばらく置いておくと、
鍋に引っ付いたわらび餅が白くなって剥がしやすくなりますよ。

 

みなさん、夏の和菓子のお話はいかがでしたか?
良かったら今年の夏休みに、子供さんやお友達と一緒に作ってみて下さいね。

さて、次回はどんな和菓子のお話にしましょうか?

お楽しみに〜!

わらび餅の材料

  • わらび餅粉 50グラム
  • 水 250ml
  • 砂糖 25グラム
  • きなこ 30グラム

「和菓子工房まっちん」
〒518-0832
三重県伊賀市上野車坂町615-43
営業開始: 10:00~18:00
定休日 月曜・火曜
0595-23-8390

 

 


特集・連載一覧へ