桜餅の葉っぱは母の味!

この「外の音、内の香」が、私だけのものではなく、
色々な人があちこちで、 見つけてきたことを持ち寄る「場」になればいいなあと
作ったコンテンツ「ライターズマルシェ」。
新しいメンバー、西胤真澄さんの「和菓子にまつわる小さなお話」第2弾は、
今の季節にぴったりの桜餅です。

みなさん、こんにちは。
ライター塾3期生の西胤真澄です。
和菓子にまつわる小さなお話を綴っています。

今回の和菓子は「桜餅」
春になるとピンク色の「桜餅」が和菓子屋の店頭に並び始めます。
その年、最初に見つけたら「買わなくちゃ〜」と強い使命感に燃えてしまうのは私だけでしょうか?

みなさんは「桜餅」と聞くと、どんな姿を思い浮かべますか?
道明寺粉を餅生地にしたもちもちしている?
それとも小麦粉を薄く伸ばして焼いた生地で餡を包んである?
どちらでしょう。

私は関西に住んでいるので道明寺粉タイプの方です。
そもそも桜餅が2種類ある事を知ったのはかなり大人になってから。
それはもう衝撃的でした。自分の知ってる方が本物だ!と誰もが思いますよね。

どちらも塩漬けした桜の葉で包まれていますが、
昔はわざわざ葉っぱを剥がして食べていました。
小さい頃、母に教わった食べ方だったからです。
桜の葉がお餅の部分にくっついて剥がしにくいったらありませんでした。

20代の頃、母の友人がお茶のお教室を始める事になり、
母に誘われて2人で教室に通うことになりました。
実は母とは親子でありながら、あまり接点がなく、
一緒にゆっくりお茶を飲んだり、お買い物に行ったり、長々とお喋りした記憶が少ないのです。

私は学生の頃にはクラブやバイトに夢中、幼稚園に就職したら仕事に一生懸命で、
家に帰っても部屋にこもり仕事に夢中
(仕事と言っても、誕生日カードを作ったりピアノを練習したり)休日はデートに忙しく。
とにかく毎日自分の事だけしか考えていませんでした。
家に寄り付かず、家の事は何もせず全て母に任せっきり。

「あなたは家族じゃなく、下宿人みたい」と言われた事もあり、
家庭を顧みない親不孝な娘だったのです。

母はそんなじゃじゃ馬娘に花嫁修業をさせようと企み、
私は私で「母と一緒なら月謝を出してもらえるから何でもいいや。」と
ふたりとも茶道への動機が不純でしたが、
いつの間にか茶道の魅力にどっぷりハマり、まさに花嫁修業となりました。

しゅんしゅんとお湯の沸く音、季節のお花、お道具、茶器、お作法。
あの時、先生から教えていただいた事は今も生活の色々なシーンで役に立っています。
お稽古の時に先生から教わった桜餅の食べ方もそのひとつ。

「葉っぱも一緒にいただく」
今まで葉っぱを捨てていた母と私は目がテンになりました。

塩漬けにする桜の葉は葉が大きめのオオシマザクラが使われ、
葉は桜の香り付けをするとともに雑菌の繁殖を防ぎ、お餅の乾燥も防いでくれるそうです。
また葉の塩味が中の餡の甘みを引き出す役目にもなるそうで、ただの飾りじゃないのですね。

偉大なる桜の葉の塩漬け!
みなさん、残さず食べましょう。

母は私が30歳の時にクモ膜下出血で突然亡くなってしまいました。
2人目の息子が生まれたばかりで、これから女同士の付き合いができ、
色々助けて貰えると思った矢先でした。

今まで家庭を顧みなかった私は、もっと母と一緒の時間を過ごしておけばよかったと後悔しています。
母は毎日ひとりで家族を待ち、黙々と家事をこなし、
どんな気持ちで暮らしていたのか?母の楽しみは何だったのか?
もっと色々な話を聞きたかったな。
今になって思えば、あのとき一緒にお茶のお稽古に通っていた時間があって良かったな〜。

 

先生から結婚のお祝いにいただいた茶器です。先生の茶器の中で私が一番お気に入りだった物。
毎回「この茶器いいですね〜」と呟いていたのを覚えて下さっていたようです。
今日はお抹茶を点てて、ゆっくり桜餅をいただこうと思います。
抹茶の苦味も和菓子の甘みを引き立ててくれますね。

 

 

「桜餅」を一緒に食べたい人は誰ですか?
さて今回の「桜餅」いかがでしたか?
次回はどんな和菓子にしようかな?
お楽しみに〜。

 

 


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