コロナ禍、部屋を片付けたら、インスタのフォロワーが激増! 大野祥子さん vol.2

 

 

インテリアや暮らし周りのライターとして活躍したのち、
今は、8万人のフォロワーがいるインスタグラマーとして、
新しい扉を開けた、という大野祥子さんにお話を伺っています。

前回は、専業主婦からフリーライターとして仕事をはじめたお話を聞きました。
せっかく手に入れた「好きな仕事」だったのに……。

「実は、ライターの仕事がだんだんしんどくなってきたんです」
と大野さん。

「私は、そんなに器が大きな人間じゃないのに、
ライターって、やることがいっぱいあるし、気配りもしないといけない。
紙媒体はどんどん減っているし、この先食べていくのも大変だよなあと感じていました。
もっと頑張ればいいんだけど、なにかが違う……。
ずっとそう思っていたんです」。

そう正直に語ってくれました。

ちょうどその頃、世の中はコロナ禍となり、取材に出かけるのもままらない状況に。
「仕事がひと段落して、ゆっくり考える時間があったんです。
食べていけるかどうか、不安もあったので、他のアルバイトを探してみたら、
50代の私でも意外と求人がある、とわかりました。
『いざとなったらなんとかなる』って思いましたね」。

すごいなあ。
「どうにかして、きっと生きていける」という実感は、
なにものにも変えがたい力となってくれたんだろうなあと思います。
私は、まだその確信を手にしたことがないので、
ライターという仕事を手放すのが怖いのかもしれないなあと
お話を聞きながら考えていました。

そんなある日のこと……。
出かけられないし、家のベランダで、ちょっとお茶でも飲んでみようか……と思いついたそう。
「外から見えないように、目隠しを作ろうかな、とか
デッキチェアを置いてみようかなと考えていたんです。
でも、それなら、もうちょっと部屋の中にお金をかけたら、
居心地がよくなるんじゃないかとひらめいたんです」。

インテリアのライターとして、素敵なお宅の取材を続けながらも
「私、ズボラだから、『自分にはそんなことはできない』って思っていたんですよ。
取材は取材って割り切っていたし、
仕事が終わって、家に帰ってきたら、一気にスイッチがオフになって
ダラ〜ッとしてしまっていたんですよね」。

そこで、まずは引き出し1個から片付けを始めてみました。
次に、古い団地風間取りの襖をはずしたり、
娘さんも巻き込んで、
引越しレベルでの片付け大会が始まったというわけです。
このあたりのことは「しょ〜こジャーナル」に詳しく綴られています。

そこにはこんな一文がありました。

「ずぼらできっちりができない私だけど、『大きな決意』とか
『ものすごい覚悟』がなくても、
ささやかなきっかけで人って変わっていくことがあるんだなあ」。

 

そして、この片付けの様子をインスタにアップすると、数百人だったフォロワーが
あっという間に3000人に。そして、1万人、15000人と増え始めました。

なのに、大野さんはこう言います。
「私、もともと自分が考えていることを、人に伝えるのがすごく苦手なんですよ」。

え? 今こんなにフォロワーさんがいて、その発信が心に染みる……と言われているのに……。

「若い時からエッセイを読むのが好きで、『エッセイストになりたい』みたいな夢がありました。
なのに、何回トライしても書けないんです。
自分のことを人に話すこともできないし、本音を聞かれても言えない……。
でもね、それが言えるようになったのがインスタなんです」

なるほど……。
どうやら、大野さんのインスタグラムは、単なる「お片付け記録」でも
「フォロワーを増やすためのツール」でもなく、
そこには、大野さんご自身の心とつながる、大事な「何か」があったよう。

「インスタって、文字数が多すぎたら読んでもらえないから、
言いたいことをぎゅっとまとめるじゃないですか?
それがいい練習になったみたい……。
最初は『ベランダでご飯を食べました』から始まって、
「ここを模様替えしました」と、リアルにアップするうちに、
誰かの心に響くものを出せば、たくさんの方に読んでもらえる、ということがわかってきました。
だったら『何を』出せばいい?
と考えたとき、
『そっか、自分の考えを出せばいいんだ』ってわかったんです。
そうやって、少しずつ『自分』をインスタの世界に解き放つことができたら、
『伝わっている』と実感できるようになって」。

さらにここで、感覚で進めるのではなく、きちんと「インスタ」というものを分析したのが
大野さんのすごいところ。

「最初はフォロワー数が多いアカウントを研究して、
ジャンルを問わず、『どんなことを書いているんだろう?』『どんなふうに表現しているんだろう?』
と観察しました。
自分の研究だけでは限界があるから、お金を出して
「インサイトの見方」や「発見蘭にあがるためにはどうすればいいか」
などを勉強しましたね。

ここで、私はずっと気になったことを思い切って聞いてみました。

「フォロワー数が増えると儲かるの?」って……。

「私もそう思っていたんですよ。
でも、フォロワーが多いのと、稼げる、というのは別なんです。
調べてみたら、商品の紹介やアフェリエイトで、100万円以上稼いている人はいるってわかりました。
でも、真似してやってみたんですけど、全然ダメだったんです。
私すごく正直だから、嘘をつけないんですよ。
一生懸命やっても、そういうのってバレちゃうんですよね〜」
実は、このお話には続きがあります……。

次回は、ライターをやめて、どうやって食べていく? そんなお話を伺います。

 

撮影/石川奈都子


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