やっと朝・晩の食事作りと、お弁当作りができるような生活になった! 板倉直子さん vol.1

新型コロナウィルスの流行により、今まで当たり前にできたことが、できなくなる、という体験をしました。
今まで、ひたすら頑張り続けてきたけれど、本当に大切なものはいったい何なんだろう?
と今一度考え直す時期でもあった気がします。

そして、今の時代だからこそ、軽やかに、伸びやかに、自分の軸足を変えてみた、
という人に話を聞いてみたくなりました。
3人目は、島根県松江市で洋服のセレクトショップ「Daja 」を営む板倉直子さんです。

板倉さんは、「大人になったら、着たい服」で取材をさせていただき、
その後「大人のためのかしこい衣服計画」「頑張らないおしゃれ」(共に主婦と生活社)という
2冊の単行本も一緒に作りました。
ちょうど同年代ということもあって、若い頃からがむしゃらに頑張ってきた、という経験も同じ。
友人としても仲良くさせていただいています。

コロナ禍になって、イベントが中止になったり、お店をクローズしなくてはいけなかったり……。
大変な状況であるはずなのに、
板倉さんのインスタを覗いてみると、
お店が休みの日にケーキを焼いたり、夕暮れ時にベランダでハッピーアワーを過ごしたり……。

以前は夜遅くまで働いていたことを知っているワタクシ。
「あれ? なんだか板倉さん、いい感じの生活をしてるみたい!」
と、今どんな状況なのか、お話を聞いてみたくてたまらなくなりました。

そこで今回ZOOMでお話を伺うことに。

どうしてるの〜?と聞いてみると……。
「相変わらずバタバタしているよ。1日9〜10時間ぐらいは働いているかな」と板倉さん。

あれ?
もっとスローペースな暮らし方になったのかと思いきや……。

板倉:
でも、仕事量は意識して減らしています。
最近、始業時間も早めたんですよ。以前は10時でしたが9時に。
朝8時半過ぎには家を出るから、朝も忙しい!(笑)

コロナ禍で残業を増やすのはどうかなと思ったし、
体力を温存させるために健康的に暮らしたかったんです。

お客様に積極的に「お店に来てください〜」とは言いにくくなっているし、
今は人が集まりやすい土曜と日曜日はクローズ。
平日の13時から17時までの4時間だけオープンしています。
(※コロナ禍においては月~金(13時~17時)の営業、月に一度週末営業日(11時~17時)を設けています)

でも、売り上げが減ると私たちが食べていけなくなるので、
オンラインの売り上げを伸ばすしか生きていく道はないなと考えました。

 

だから、午前中はスタッフ全員で検品をしたり、出荷状況を確認したり、
ウェブやインスタにアップするための撮影をしたり。
午前中は店頭スタッフもオンラインスタッフと同じようにバックヤードに入り集中して3時間仕事をします。
この時間を確保するために始業を早くしました。

12時には、ソーシャルディスタンスを保ちながら、
大きなテーブルで、みんな一緒にお昼ご飯を食べます。
今までは、ひとりずつバラバラに交代で食べていたんですが、
同じテーブルで食べると、毎日たわいないことでもコミュニケーションがとれるようになってきたし
チームとして育ってきたなあって感じていますね。

以前、私が松江を訪ねた時には、
お店がクローズしてからも、夜10時、11時まで仕事をし、
週に数回は、家事代行サービスの方に夜ご飯を作りにきてもらっていました。

「生活」というものを一旦横に置いておき、
とにかく仕事に全身全霊で取り組む……。

それは、フリーライターとして働く私も同じだったので、
その焦りや不安や、喜びや希望などは、とてもよくわかり、
仲間を見つけたような気分になっていました。

それが今は、お店が閉店したら帰宅。
晩ご飯も、そしてお弁当まで作れるようになったといいますから驚きです!

相変わらず忙しいけれど、
やっと普通の生活ができる「働き方」になった……。
どうやら、今の板倉さんは、そんな状況のよう。

それにしても、コロナ禍の対策をきちんと考え、
営業時間を変更し、「オンライン」という力の入れどころを決めて、
働く「しくみ」を変える、という行動力はすごい!
板倉さんに会うと、いつも思うのは、
「自分で決める力」を持っているということ。
よりいい方向へ向かうためには「今」何をすべきかをきちんと決めることができる……。
そんな「経営者」としての姿に触れるたびいつも素晴らしいなあと思います。

でも、このペースをつかむまで、
去年1年間はずいぶん辛い思いもされたよう。

不穏な空気に包まれながら、実際に「それ」がやってきたのは去年の4月。
大阪の阪急梅田本店で予定されていた「大人になったら、着たい服」のイベントが中止になったことでした。

次回は、その「どん底」だった時期からのお話を伺います。


特集・連載一覧へ