頭で学ぶより、自分の五感を使う方がずっと確か。平井かずみさん vol.3

 

日常生活が大きく変わった昨今、
新しい暮らし方、働き方を求めている人が多い気がします。

でも、「新しいってなに?」
私は、何をどう変えたらいいの?とわからなくなることも……。

そこで、このコンテンツでは、
最近になって、エイッと新しい世界の扉を開けた人に
ご自身の中で起きた変化について語っていただくことにしました。

2人目は、「Seed」という独自のブランドを立ち上げた、平井かずみさんです。

第2話では、「自分が伝えたいこと」と出会うまでのプロセスについて語っていただきました。
コロナ禍になり、時間がたっぷりできた時、平井さんが始めたのが散歩。
近所の公園を歩くうちに、改めて「自然って素晴らしい!」と感じたそう。
忙しくて、カラカラに乾きかけていた心に、たっぷりと水を注いだ時、
見えてきたテーマが「seed」=「種」でした。

平井さんが新たに立ち上げたサイト「seed」には、そのコンセプトがこんなふうに綴られています。

「『すぐそばにある自然の営みに気づくことで、私たちの感性の森を育む』をテーマに、
花のお届け便をはじめ、植物の息吹を感じる暮らしのお手伝いができるようなアイテムを
お届けするオンラインショップ『seed』を立ち上げることにいたしました。 

日々の営みの中で、すぐ側にある植物たちと接することでその感覚を研ぎ澄まし、
あなたの中のseed がさらに花開いていくようにと導いてくれることを願います
flower stylist 平井かずみ」

そもそも「Seed」というプロジェクトの意味はなんなのでしょう?

「種って、この小さな粒の中に、すべての情報とエネルギーが凝縮されています。
このエネルギーが芽吹かせ、葉を繁らせて、花を咲かせて、種を結ぶ。
順番に育っていく過程も、すべてこの種の中に情報が詰まっていて、
つまり、これって命の根源で、本質そのものだなって思ったんです。

人間も、ひとりひとり、みんな自分の根源や本質を持ち合わせています。
そして、それを掘り起こしてくれるのって、やっぱり植物との触れ合いだと思うんですよ。
植物とは言葉が交わせないから、自分の感覚を使ってのみ、
植物と触れ合うことができるでしょう?
タブロイドには『感性の森を育てましょう』って書いたんですが、
そうすることで、自分の「Seed」=本質や根源がきっと引き出される……。
五感を磨くことで、素直に直感で感じたままで生きることができる。
それをみんなでできればいいな、と思って、私はたぶんこのプロジェクトを立ち上げたんだと思います」
と語ってくれました。

 

 

花のタブロイド「Seed of life」は、カラーとモノクロの2冊からなります。
写真はすべて平井さんが撮ったもの。
感性で向き合ったときに感じるワクワクや、ハッと心を動かされた体験が、切り取られています。

アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンが、幼児期からの自然との関わり方の大切さを説いた
あの知る人ぞ知る名著「センス・オブ・ワンダー」の中には、こんな一節があります。

「いますこしの出費をおしまないで上等な虫めがねを買えば、新しい世界がひらけてきます」

平井さんが虫めがねの代わりに手に入れたのが、スマホにワンタッチでつけることができる
というマクロレンズでした。
これで撮ったは、ダリアの花びらの透け感だったり、
立ち枯れたルドベキアだったり……。
カラーのタブロイドで表現されているのは、まさに「平井かずみのセンス・オブ・ワンダー」だというわけ。

 

 

 

モノクロ版のテーマは「ありのままの美しさ」。
いつも、花を届けてもらっているという、
栃木県那須塩原で無農薬と路地栽培で花を育てている、池田展康さんの畑を訪れ、
誰よりも植物と近い関係にある彼の話に、平井さんが共鳴した「美しさ」について綴っています。

 

「花生けの手本も、全部花が咲いているありのままの姿にヒントがあるとずっと言い続けてきました。
背が高いものはす〜っと生けたらいいし、
重心が低く、横に生えているものは、口の広い器にわ〜っと生ければいい。
その花が本来どういう風に根を下ろしているかをしれば、生け方のヒントになるし、
どの季節にどの花が、どの花の近くで咲くかをしれば、自然と花合わせもわかるようになります。
知識として詰め込むのではなくて、まずは自分の感覚で
ちゃんと記憶に留めていれば、勉強する必要はないんですよね。
そんなヒントが、目の前にはたくさん広がっているから、
ありのままの美しさにさえ気づけば、物事はすべてシンプル(簡単)だよって、伝えたかったんだと思います」

 

さらに、初回限定版として、池田さんの畑でも撒かれているハーブのフェンネルの種を
紙すきの職人さんにお願いして漉き込んで、天日干しで乾かしてもらったそう。

ぜひ、種の入っている部分をちぎって、土に撒いて欲しいとのこと。
「もし、芽が出てきたら楽しいだろうな〜と思って」。

 

 

平井さんは、大きな木や小さな花や、空や風や鳥の声と触れ合いながら、
まさに、感性を開いてきたんだなあと
お話を聞きながら感じました。

自分の感性を信じるには、強さが必要です。
感性には、理由や裏付けがないから……。
人は、つい〇〇だから……という「行動するための理由」がほしくなります。
でも……。
それこそ、いちばん不確かなものなのかも。

いちばん確かなのは、自分の目で見て、鼻で匂いをかぎ、手で触れたもの。
その確かさを、タブロイドに伸び伸びと咲いた、
平井さんの感性の花が教えてくれているようでした。

撮影/近藤沙菜

 

 

今後、平井さんのサイト「seed」では、様々な植物と人とを繋ぐ暮らしの提案をしていく予定だそう。
楽しみ〜!
タブロイド「seed of life」も、このサイトで購入できます。

 

 

 


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