やっと「自分のまま」で向き合える相手と出会った! 竹田理紀さん Vol.1

 

 

スーパーに行き、レジを済ませた後で、「そうだ、トイレットペーパーなかったな」
と思い出し、もう一度列の後ろに並び直し、持ちにくいトイレットペーパーを抱えて帰ります。
お風呂に入って体を洗おうと思ったら、ボディーソープが空っぽで、
あわててタオルを巻きつけて洗面所の下からストックを取り出します。
自分が使ってボディーソープがもうなくなったとわかっているのに、そのままにしておいたり、
「トイレットペーパーもうないよ」としれっと言う夫に腹が立つ!

でも、「帰りに買ってきてよ」と一言言えば、
きっと夫は買ってくてくれるはずなのです。
結局イライラしているのは、上手に頼み事ができない私のせい?

「夫婦ってなあに?」とお話を伺うこのシリーズ。
6人目は編集者の竹田理紀さんです。

実は竹田さんとは長いつきあい。
しばらく会わないうちに、
「えっ、転職したの?」
「えっ、結婚?」「あら、赤ちゃん生まれたの?」
「なんと!マネージング業を始めたんだって!」と、目まぐるしく人生が展開する……。

私にとって彼女は、そんなガッツと突破力を持つ人なのです。
数々の雑誌、書籍などを手がける敏腕編集者。
出会いは、竹田さんが「主婦と生活社」で働いていた頃でした。
当時、一緒に組んで仕事をすることはなかったけれど、
編集部を訪ねたついでにちょっと雑談をすると、「なんだか面白いことを言う人だなあ」と感じたものです。
その後「カメヤマローソク」にプレスとして転職し、さらに「宝島社」へ。
雑誌「リンネル」を経て、「大人のおしゃれ手帖」の立ち上げに加わり、
編集者としての力をメキメキと発揮。3年前にフリーランスとして独立されました。

そんな彼女が昨年、都内に事務所を構えたと知りました。
九段下にある古いレトロなビルの一室をリノベーション。
事務所として使う他、展示会や企画展を開催したり、レンタルスタジオとしても貸し出すのだとか。
さらには、カメラマンやスタイリストのマネージメント業も始めたと聞いてびっくり!
いったい竹田さんは、どこを目指しているのでしょう?

 

 

彼女のドラスティックな仕事姿勢を見ていると、
今年12歳になる娘さんのお母さんであることをすっかり忘れてしまいます。
出産後すぐから働き出し、その仕事量たるや、とても乳幼児を抱えている母親とは信じられないほどでした。
深夜まで編集部にいることもしょっちゅうで、いろんな人とご飯を食べに行ったり、
取材で女優さんを連れて海外にも行ったり。
私も仕事人間で、人生のまんなかに「仕事」を置いてきたので、彼女の夢中になりっぷりはよくわかります。
竹田さんは、妻であり母であることとどうバランスをとっているのだろう?
と今回お話を聞いてみたいと思ったのでした。

 

カメラマンの夫が作品を持って編集部に売り込みに来られたのが、最初の出会いだったのだと言います。
「ニューヨーク帰りで、ちょっとかっこいいカメラマンがいるよ」といううわさは、
当時私も耳にしていたし、仕事をご一緒したこともありました。
まさか、峰尾ちゃん(竹田さんの旧姓)の結婚相手になろうとは!
「一緒に車に乗って現場に行ったり……。そんな中でいつの間にか結婚していたんです」と笑います。

 

どうして『この人だ!』と思ったの? と聞いてみました。

「そもそもファザコンなんです。ずっと頭のいい人が好きで、
結婚するなら尊敬できる男性と、と思っていました。
でも、『この人すごい』って思う人は、出会った時の点数がマックスで、その後確実に下がっていくんです。
日常ってかっこいいことだけではやっていけませんから。
その点、彼はラクだったんですよね。自分のままでいられるというか……。
尊敬から入ると、どうしても『その人に沿う自分になろう』としすぎるから疲れちゃって。
我慢してあげようとか、相手に合わせようとか。そういうことをやりすぎちゃうタイプでした。
だから、結婚してから夫に『騙された!』って言われました。
『最初はあんなに尽くしてくれたのに』って(笑)。
そんな本性を許しあえるかどうかも、夫婦って大事なんじゃないかなあ?
もっとも夫は付き合い始めても、結婚しても、全然変わらないんですけどね」。

 


私も「尽くしすぎる」ことで、たくさん失敗してきました。
男性は本質的に甘えん坊。
「やってあげすぎる」ことで、どんどんこちらにもたれかかり、
本来なら自力でできることが、できなくなってしまいます。私は「姉御体質」なので、相手が困っていると、どうしても手を差し伸べたくなります。
もちろん夫婦で支え合うことは大切です。
でも、「甘やかす」と「支える」の差を読み解くことが難しい!特に相手の人生がうまくいっていないとき、「どうにかしてあげたい」と思いがちです。
でもあれこれ手を出してみて思うことは、結局なんにも助けられなかったということ。
自分の人生は自分の足でしか歩めない……。
もし、手助けするとしたら、このことを肝に銘じておかなくてはいけないのだと思います。

「私が助けてあげられる」と意気込みすぎると、
「せっかく〇〇してあげたのに」と恩をきせたくなります。
「してあげた甲斐」がなくなると、がっかりして相手に失望して、
と負のスパイラルが始まってしまいます。

夫婦が支え合うためには、まず互いの人生は別物、と知っておくことが大事な気がします。
やっと「自分のまま」で対等に向き合える相手と出会った竹田さん。
次回は、出産してからの夫婦の形について伺います。

 

撮影/近藤沙菜

 

 

この連載をまとめた書籍「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく
絶賛発売中です!

「どうにもならなさ」が、夫婦で生きるといういことを、
面白くしているんじゃなかろうか? と思うようになりました。
自分と違う人間を自分の中に取り込むことで、
人生は太く奥深くなり、予想外の方向へと転がり出す……。
それが、ひとりでは得られない、共に生きるとおいうことの
味わいなのだと7人の方のジタバタが教えてくれた気がします。

「おわりに」より

 


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