大事なことは、語り合っても解決しない。山本祐布子さん vol.3

 

 

ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵」(MdNコーポレーション)
という本を出してから、
「うちは、まだまだ……。やっぱりムカついちゃうんですよね〜」
という声をよく頂くようになりました。
私だってそうです!
ここに書いているとおり、夫とぶつかることはしょっちゅう。
ささいなことにムカついて、「ちっちぇえなあ〜、あたし……」と落ち込むことも。

でも、その後の「やっぱり」が大事だと思うのです。
ムカつくことは、確かにムカつく。
でも、「やっぱり」夫婦で生きていく…….
「やっぱり」の中に、いったい何が潜んでいるのか。
それを少しずつ紐解いていけば、「今日もいい天気じゃの〜」と一緒にお茶を飲む
老夫婦になれるかなあと思っています。

 

山本祐布子さんに「夫婦って、なあに?」というお話を伺っています。
いよいよ、今回で最終話。

第2話では、「mitosaya」のお仕事や子育てについて、
そして、「夫婦でわかりあうためには、言葉を尽くして語り合うより、
同じ経験をした方がずっと近道」というお話を伺いました。

最後に祐布子さんに「これから」について聞いてみました。
新しい事業を立ち上げ、経済的な不安などはないのでしょうか?

「借金もいっぱいあるし、それを返済する目処もこれから立てていかなくてはいけなくて、
普通に考えたら不安になるはずなのに、あんまりその危機感がないんです(笑)。
江口さんが今までやってきた実績を信頼しているということもあるんですが、
お金のことはなんとかなるだろう!って常に思っているんですよね。
『私たちは間違ったことはやっていない』という自信があるので、きっとなんとかなるんだろうって思うんです」

その確信はどこから生まれるのですか? とさらに聞いてみました。
「それは、手から生まれてくるものに対する信頼ですね。
季節が巡って、実りがあって……。それって本当に普遍的なことじゃないですか?
それをいただいて自分の手から出てくるものがいちばん信頼できる。
そして、自分たちが作っているものが、常に誰かの喜びなっていたらいいなと思います」

 

祐布子さんは、毎日の中で起こるいろいろな出来事について、そして江口さんが手掛けることについて、
あれこれ考えるところがあったとしてもあえて口にしないのだと言います。

 

「言わないでおく。飲み込む、って大事なことだと思うんです。
私は思ったことをなんでもかんでも言うのが正しいとは思っていなくて……。
夫婦でも親子でも、なんでも伝え合えるとか、話し合うって、私は苦手なんですよ。
話し合っている時間があったら、次のことやろうよって思うんです。
話し合いで解決できることって少なくないですか?」

確かに言葉には限界があります。
夫に対して不満があったとしても、それは自分の体調がちょっと悪くて腹が立っただけかもしれないし、
不満の原因が何だったのかを自分で理解し、言語化することは難しいもの。
そもそも長年培ってきた互いの価値観は、話し合って変えられるものでもないのかも。
悩み、迷っている最中は、どんなに夫に相談しても、夫だってきっと悩んで迷っている最中なのです。
そこに「答え」を求めて与えてもらえないからイライラする……。
だったら「こうしてみようか?」と自分で行動を起こした方がずっと確か。

 

誰かのためにと自分を「犠牲」にすると、人生はとたんにつまらなくなります。
夫婦で一緒に生きるとは、自分が選んだ道の外側にもう1本道があると気づくことなのかなあと思います。
あっちを歩いて面白ければ、一緒にそのまま歩けばいいし、あっちを経験してから、こっちへ戻ってもいい。
確かなのは、2本あるからこそ、人生が豊かになるということ。
無理に1本にまとめなくても、行ったり来たりしながら、
その道端に落ちている果実を、あれこれ拾ってみたら楽しそうだなあと思いました。

 

撮影/近藤沙菜

 

この連載をまとめた書籍「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく
絶賛発売中です!

「どうにもならなさ」が、夫婦で生きるといういことを、
面白くしているんじゃなかろうか? と思うようになりました。
自分と違う人間を自分の中に取り込むことで、
人生は太く奥深くなり、予想外の方向へと転がり出す……。
それが、ひとりでは得られない、共に生きるとおいうことの
味わいなのだと7人の方のジタバタが教えてくれた気がします。

「おわりに」より

 

 

 


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