「叶う」んじゃない、「叶える」んです。溝口奈々さん vol.4

「はじめの一歩の踏み出し方。」 溝口奈々さん vol.4

 

「はじめの一歩の踏み出し方。」というテーマで連載をお送りしています。

これまで3回にわたってインタビューをお伺いしているのは、
埼玉県・さいたま市でカフェ「UP COFFEE」を営む溝口奈々さん。

前回のvol.3では、
溝口さん流「喜びのかけらを集める」という目標の定め方などについて
お話してもらいました。

 


さて、これまでワクワクと共に数々の目標を描き続け、
自らの行動とともに時間を重ねてきた溝口さん。
そんな彼女が今描く、未来の絵について聞いてみたくなりました。

「まず近い将来やってみたいことは、
UP COFFEEからライフスタイル提案が出来るような仕掛けをつくる事です。
そもそもこのカフェのコンセプトは“誰もが笑顔になれる居場所”。
店名にある“UP”というのも、
ここにいらしたお客様の気持ちが
少しでも上向きになるお手伝いができますように・・・
そんな思いが込められているんです。
だからこそ、家に帰っても豊かな時間が続くような
きっかけ作りをしたいと思っています。
例えば定期的なワークショップで
お客様との有意義な時間を共有して人やつながりを生みだしたり。
あとは物販を少しずつ充実させて
お店以外の場所でも気持ちが上がるアイテムを
ご提案したりできたらいいな、とも考えているんです」。

 


実は、カウンターに立つ溝口さんは
まるでお客様一人一人に合わせて豊かな時間の過ごし方を提案する
コンサルタントのようだと日頃から感じていました。

「前に外から覗いてお写真撮ってくださいましたよね?」
「今日焼いたマフィンは、前回ご注文なさっていたドリンクにベストマッチですよ!」
目の前のお客さんの来店頻度やお気に入りメニューはもちろん、
どんな家族構成で、今日はどんな気持ちやタイミングで立ち寄ったのか。
そういったことを心のアンテナで見逃すことなく感じ取りながら
「お客様の過ごし方を格上げするための提案」を積極的に行っていきます。

いつ訪れてもその時の気分とマッチした過ごし方ができるからこそ
「また足を運びたくなる場所」となり、
お客さんそれぞれへの暮らしへといつの間にか溶け込んで―
現に私自身もUP COFFEEがまるで第二のリビングとなり
日常の過ごし方を大きく変えられた一人。

そういった意味では、溝口さんが想像している以上のスピードで
既にその目標は達成され始めているのかもしれません。

目標を描くのが得意な溝口さんは、
既にもう一歩先の夢も育み始めています。

「カフェで独立したい!という友人も多くて、
“どんな準備をしたの?”と聞かれることもよくあります。
だからこそもう少し先の未来では、
コンセプト作りから開業に至るまでの様々なサポート・・・といった
“カフェ開業を目指す方へのコンサルティング”などもしてみたいと思っています。
私が関われた方の人生が笑顔溢れるものになっていくのって、
最高に楽しいと思うから!」

お客様だけではなく、同志や仲間とのつながり―。
どこまでいっても溝口さんは“人”と共にあります。
溝口さんに後押ししてもらいながら
さまざまなオーナーさんの「ありたいカフェ」がここかしこに生まれたら
日本は、私たちの生活は、もっと豊かなものに変わるのかも・・・
そんなワクワクをお裾分けしてもらった気分です。

「あ、それからもう一つ。
物販するアイテムを選ぶこと自体も大好きなので、
息子と海外にも買い付けに行きたいです!」

そんな母の顔とオーナーの顔をボーダレスに行き来する溝口さん。
彼女にとっての目標は「仕事のため」でも「家族のため」でもなく、
「自分自身の生き方そのもの」でした。

 


確信に満ちた明るい未来を次々と語ってくれた溝口さんの姿に勇気をもらいながら、
一歩の踏み出し方を一つ一つ導いてもらった私の中のビビり虫。
その姿はだいぶ安心してくつろいでいるようですが…
最後に、ひとかけら残った不安を溝口さんにぶつけてみます。

「溝口さん、それでもやっぱり“夢が叶わないかも・・・”って思うこともありますよね?」

すると・・・ニヤリと笑ってたった一言。

「美穂さん、それね。・・・“叶う”んじゃない。“叶える”んですよ!」

あぁ、そうだった!
目標は、誰かにその結果や責任を委ねるのではなく、自分で手にするもの。
だからこそ、叶う時を「待つ」のではなく「今できるアクション」をセットにして、
自分で近づいていかなくちゃ!

まだまだビビり虫に引っ張られがちな私は
改めてその在り方を心に刻み直し、インタビューを終えたのでした。

 


実は、今回の連載企画を立ち上げる前から、
私の手帳には「溝口さんに深くお話を聴く」ことが
やりたいことの一つとしてリストアップされていました。

その溢れるポジティブなエネルギーの源はどこにあるのか?
誰からも愛されるその人柄は、どうやって培われたのか?
未来の青写真をどうやって描いているのか?

目標を“目指す”以前に、目標を“描く”ことすら苦手な私にとっては、
今回のインタビューで
未来のゴールをドーンと掲げるためのヒントに触れられればいいな―
という期待も寄せながらお話を伺っていったわけですが・・・
溝口さんが「目標」のために目を向けていたのは、
意外なことに大きな野望ではなく、
自分の人生と日常に転がる小さな喜びでした。

実際に味わってきた喜びを土台にして
自分の手で固めたものが「目標」であれば、
そこに近づいていくことはきっと怖くない。
誰に何と言われても気にならない。
目標へと向かう道のりにも、それを達成した先にも、
いつも満足している自分がいるはずだから―。

そんな溝口さんの「一歩の踏み出し方」を紐解くにつれて、
「私も今すぐ両手を一杯に広げて喜びのかけらをかき集めたい!」
―私の中のビビり虫でさえも、
そんなウズウズした思いが隠し切れないのでした。


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