日常生活が大きく変わった昨今、
新しい暮らし方、働き方を求めている人が多い気がします。

でも、「新しいってなに？」
私は、何をどう変えたらいいの？
とわからなくなることも……。

そこで、このコンテンツでは、
最近になって、エイッと新しい世界の扉を開けた人に
ご自身の中で起きた変化について語っていただくことにしました。

２人目は、「Seed 」という独自のブランドを立ち上げた、平井かずみさんです。
第一話では、タブロイドを作ろうと思い立ったものの、
自分が何を伝えたらいいのかわからない……。
と立ち止まったお話を聞きました。

 

「本当に伝えたいこと」を見つけるために、何をしたんですか？　と聞いてみると……。

「散歩です！」と平井さん。
えっ？散歩？　と思わず聞き直してしまいました。

ちょうど、コロナウィルスによる緊急事態宣言などもあり、
花の教室はお休みに。
いつもは、教室に取材に、連載のための旅に、と
時間に追いかけられるように、あちこちを飛び回っていたのに、
その動きがピタッと止まりました。

「コロナになった３月末から、毎朝散歩に行っていました。
近くの大きな木がたくさんある公園に行って、
植物に触れて、光の輝きとか、木々が風に揺れる様子とか、
日々どんどん芽吹いていく植物を見て……。

もう、それが楽しくてたまらなかったんです。
こんな時間を持てるなんて、思ってもいかなかったから……。
散歩から帰ったら、２時間ぐらいお風呂に入って、本を読みまくって。
自分でご飯をちゃんと作るのも久しぶりでしたね」。

 

 

すると………。
自分の中で何かが変わってきたのだといいます。

「それまでは、仕事によって起きる時間もバラバラだったのが、
毎朝７時に散歩に行くって決めたら、それに合わせて動くようになりました。
朝起きたら、水を一杯飲んで、お湯を沸かして、小さな水筒に１杯分のハーブティーを詰めて。

そうして出かけると、改めて『植物って素晴らしい！』って思ったんです。
今までは、触れるものが切り花が多かったんですよね。
その幅がもっと広がって「植物」全体に目がいくようになったんです。
空や、風や、鳥の声や、天に向かって枝を伸ばす大きな木々や……。
そんな「地球」に目がいくようになった。

私にとっての、空間の大きさが変わったんですよね。
いつもいく場所に、大きな欅の木があって、
それに毎朝「おはよ〜！」って抱きつくんです（笑）。
そうすると、本当に心がすっとするんですよ。

朝一番って、人がいないので、そこは植物たちの世界。
そういうピュアな空間に身を置くっていうことが、今までまったくなかったので、
毎日「お邪魔します」という気持ちで歩きます。
思い返せば、私はそれが欲しくて、今までひたすら地方へ出張に出かけていたのかも……。
でも、今回の出かけられない、という状況下で
すぐ近くにこんな素晴らしい場所があった！っていうことに気付くことができたんです！」

 

 

そうやって、大きな地球に触れることで、平井さん自身は、どう変わったのでしょう？

「ビフォーコロナは、明日どうしよう？　っていつも考えていました。
でも、もっと『今だけ』にフォーカスするようになった気がします。
今この瞬間だけでいい、みたいな……。
今日楽しければ、明日が楽しい。
それが続けば未来も楽しく続いていくって思っています。
だから、10年後を楽しくするために、何かをがまんして、
今が苦しいというのは、ちょっと考違うのかな？と思います」

「花の会」（教室）ができなくなって、不安などはなかったの？と聞いてみると、
「それが、ぜっんぜんなかったんですよ〜！」とあっけらかんと笑う平井さん。
「またできるってわかっていたし、むしろ自由な時間ができて嬉しい！みたいな感じでした」

私は「花の会」を始めたばかりの頃の平井さんを知っています。
当時は、まだ生徒さんもあまり集まらなくて、
なのに、少人数だというのに「花はいっぱいあった方が楽しい」と
たくさんの花を仕入れて、赤字になって……。
そんな姿をハラハラしながら見ていました。

でも、あっという間に人気者になり、
走り出した平井さんは、いつも大忙し！
きっと、全速力で走り続けてきて、今、別のステージへと移行中なんだろうなあと感じました。

「そうですね。出し切るだけ出し切ったから、
インプットする時間が与えられたのかも。
もう私、スカスカでしたから……。
そんな状態で、自然と向き合ったら、もう心がときめきすぎちゃって！（笑）」

こうして、再び自分に水をやりはじめた平井さんが、
見つけたのが「Seed＝種」というテーマでした。

次回は、このテーマの意味を伺います。

 

 

撮影／近藤沙菜