「不安」はきっと、あなたを育ててくれる

 

このコンテンツ「もっと早く言ってよ!」は、ずっと前から知っていると思っていたことなのに、この年齢になって「あ、そうか!」とやっとわかった気がする体験を、50代の私が、20代だった私に伝えるつもりで綴っています。

私がノリコさんのように若かった頃、夜お布団に入る度に思っていました。「ああ、私はいつになったら、不安じゃなくなるんだろう? 私はこの先、どれぐらい不安な心のままお布団をかぶらなくちゃいけないのかな?」って。 でもね、今確かに言えることは、あの「不安」が私を育ててくれたんだなあってこと。仕事がなくなるのが不安だったから、ちっぽけな自分に少しでも実力をつけようと、収納のセミナーに通ったり、インテイラスタイリスト津田晴美さんの講座を聞きに行ったり。当時の私にとって、その受講料はイタかったけれど、その時学んだことは、のちに企画を立てたり、文章をかくとき、すべて役に立ちました。

不安だったから、自分の企画で1冊本を作りたいと「暮らしのおへそ」を立ち上げたし、不安だったから、ライターとは別のことをやってみようと「ライター塾」を立ちあげた気がします。人って、本来怠け者だから(私だけか!笑)、なんにも心配なことがなくて、現状に「欠け」みたいなものがなかったら、「よしっ!」と力が入らないもの。ヒリヒリする不安があるからこそ、「どうしたらいい?」と考えて、自分ももうちょびっとだけ格上げしたいともがき、ジタバタする……。そのジタバタの中で、自力で階段をあがる体力が育つのだと思います。

だから、ノリコさん! 不安はきっとあなたを育ててくれるよ! だから不安を抱きしめて、大事にしてみてください。そして、今思うことは、「その時にしか持てない不安がある」ってこと。私はリコンしたての頃、夕暮れ時に家々に灯りが灯る中、駅から遠い自分のワンルームマンションに帰りながら、「いつか私も、あんな素敵な家に住んで、暖かい家族と幸せになりたい!」って、切実に思っていました。あの時の切実さは、あの時でないと持てなかったなあと思うのです。20代は20代の、30代は30代の不安がある。仕事を変えたらその時の、家族が増えたらその時の不安がある。それは、その時しか味わえないものです。その不安が、教えてくれることがきっとある……。

 

不安なんてまったく感じず、ポジティブに生きていける人を羨ましいなあと思うけれど、ネガティブなびびりんぼは、びびりんぼにしか見えない風景がある……。びびりながら歩いてきた道を、私は愛おしいなあと思います。

 

50代になって、ずいぶん不安は減りました。きっと不安がる体力が落ちてきたのだと思います。今気をつけたいのは、小さな不安を見過ごさないで、そこに落ちている種をちゃんと拾いたいってこと。人は何かが見えないから不安になる……。そこに何が隠されているのか、目を凝らして見つめ、何かを発見する。そんな営みをこれからも大事にしたいなと思っています。


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