「ただ、待っているだけでは何もやってこない。不満をエネルギーに変える方が手っ取り早い」大内美生さんvol.5

「お母さんが働くって、どういうこと?」というテーマで記事を書かせていただいています。

町田市で地域活動をしながら、
フリーランスでイベントや展示会などの企画・デザインをしている大内美生さんにお話を伺っています。

前回は、お住まいの町田市で地域活動を始めるまでのお話でした。

「“まちだ南地域魅力発見プロジェクト(通称”みなまちプロジェクト”)と名付けて
2018年には第一弾として豪田トモ監督の“うまれる”という映画の自主上映をしました。

映画は“子供は親を選んでくる”という胎内記憶をモチーフに
命を見つめる4組の夫婦の物語だったので、
子連れ鑑賞可の“ママさんタイム”を設けたり、
上映会後に交流会を設けて、子育てのことや地域のことなどを話す機会を作りました。

その後も、地域住民から口コミを募って、まちの気になるスポットをまわる
「まちあるき」イベントを企画しました。
子どもたち対象のハロウィンまちあるき では、
ご近所の老人ホームと交流したりしました」。

まちあるきで訪れた口コミスポットをまとめた「ワクワクMAP」付きの
フリーペーパー「みなまち通信」編集室も立ち上げ
町が再開発されて駅前に大きな商業施設ができても、
他にもたくさん魅力的な場所が地元にはありますよ、と紹介したり、
地元のフリーペーパーとコラボして特集を組んだりもしています。

市のフェスティバルにも参加して、
地域の団体との交流も深めてきました。

3年間地域活動を続けてきて、
市からも注目され、何度か取材も受けて、
存在を認知されるようにもなってきました。

地域活動で知り合った方が、近所にコワーキングスペースを作ったんです。
今、私はそこで店番をしながら“みなまちプロジェクト”の活動をしています」。

そんなに地域活動に力を注ぐことができるのはなぜなのでしょう?

「子育て中の今だからこそ、住んでいる地域を楽しくしたい。
面白そうなコミュニティやグループがなければ、
自分で作ろうと思ったんです。

地域活動をやっているからこそ、
どこかの町に遊びに行って気分転換するよりも、
自分が住んでいる町が楽しい。

ただ、待っているだけでは何もやってこない。
ママ世代が生き生きしている、というのはそういうことだと思います。

子育てをしていると見えることがいっぱいあるけれど、
不平不満ばかりを言っていても仕方がない。

もし不満があるなら声を届けたい。

声の届け先が分からなかったり、
もし声が届いても力にならないなら、
力になる声にして届けたいと思ったんです。

不満をエネルギーに変える方が手っ取り早いと思うんです。

この地域活動が仕事と言えるかどうかは分からないけれど、
人生においての仕事だと思ってやりがいを感じています」。

今は、地域活動をしながら、
個人的にジュエリーブランドから依頼されて
ブランディングや催事MD(マーチャンダイジング)のお仕事を受けているそうです。

「地域活動は市からの助成を受けて活動している非営利活動で、
個人的に金銭的利益を得る”仕事”ではありませんが、大切な”仕事”の一つです。

フリーランスでイベントや展示会などの企画・デザインに関わる”仕事”は、
個人事業主として収入が伴う”仕事”です。

金銭的利益の有無という差はありますが、
わたしにとっては、どこからどこまでが”仕事”かという明確な線引きはなく、

どちらの”仕事”も自由に行き来することに心地よさを感じて、
現在はこのようなライフスタイルで落ち着いています。

お子さんが幼稚園に入ってから辿り着いた今の仕事のスタイル。

あと2年間はこのバランスがいいけれど、
またお子さんが小学校に入学したら変わってくるかも、と言います。

「子供が大きくなったら、
またどこかの会社に所属してみてもいいと思っています。
フリーランスになったことを後悔したことはありませんし、
とても充実しています。
でも、会社に属しているからできること、
出会えるご縁があることも知っています。

今の時代、複業やパラレルワークは珍しいものではなくなりました。
フリーランスという肩書にもこだわるつもりはなく、
もっと自由に、直感にしたがって、
自分の可能性を広げていける舞台がそこにあるなら、
”思わず” TIME&STYLEへの転職した時のように、
衝動的に突き動かされる何かを感じる会社に出会った時には、
迷わず飛び込んでいきたいと思っています。

母親が本当にやりたかったことだから、今はまだ子供に寄り添っていたい。
時間がかかって、やっとできた子供だから…。

それに、”ああすればよかった”と後で後悔する生き方はしたくない。
自分の仕事は何か、と言われたら“自分が美しいと思える生き方をしたい”。

ただ、それだけです。

“美しい”という言葉の定義を調べると、
“色・形・音などの調和がとれていて快く感じられるさま”とあります。

仕事も子育ても趣味も線引きなく、
自分にとって調和がとれた心地よいライフスタイル=“美しい生き方”を模索することが、
私の人生において最大の”仕事”なのかなと思っています。

もちろん、子供に対しても、
心は離れずに手放すときはきちんと手放そうと思っています」。

大内さんが子供を授かってから、
「できること」と「できないこと」を明確にしたように、
大事なのは「周りや世間がどう思うか」ということではなくて、
自分で「やること」と「やらないこと」の線引きをすることなのだと思いました。

「隣の芝生は青く見える」という言葉があるように、
育児中は、周りがキラキラ輝いているように見えて
一人置いてけぼりのような気がしたり、
周りの何気ない言葉に傷付いたりすることがあるものです。

もしかすると、母親という存在は、
常に罪悪感を抱えている存在なのかもしれません。

「あの時ああしていれば良かった」と常に思い悩む。
でも、それは、子供への愛があるからなんだと思います。

大内さんは、
決して周りのせいや子供のせいにしたりせず、
真剣に自分と向き合っているのだと感じました。

「ただ、待っているだけでは何もやってこない」と、
住んでいる町を楽しくするための行動を起こす
大内さんの姿勢にとても励まされました。

これで「お母さんが働くって、どういうこと?」の連載は最後になります。

ご覧くださった方、
これまで本当にありがとうございました。

 

最後に少し私のお話をしますね。

私は元公務員。
大学院を卒業した後、
コンサルや大学、
いろんな仕事を転々としてきました。

子供が生まれてからも
自宅から都心まで1時間以上かかる通勤をしていました。

ある時、
セミナーやクライアントさんのコンサルもして欲しい、と言われたのです。

とっても嬉しかったのですが、
求められるような働き方をするには
気力・体力的にも限界がありました。

悩んでいた時、

いろいろ本を読み漁ったのですが
本に登場するのは、
勝間勝代さんなど、とても頭がよく、
仕事ができるワーキングマザーばかり。

その時の自分とはかけ離れて過ぎていて、
逆にできない自分に落ち込んだりしました。

その時の経験があるから、
もしかすると、私のように悩んでいる人がいるかもしれないと思い、
「お母さんが働くって、どういうこと?」という連載を始めたのです。

この連載で、
フラワースタイリスト、ビジネスを教えている先生、
産婦人科医、地域活動をしながら企画展示に携わっているフリーランスの方など、
様々なお母さんにお話を伺いました。

お話を伺って、
もっと多様な生き方、働き方があってもいいし、
自分の人生は自分で創造していくものだと思いました。

親子の寄り添う形にも色々あることに気づきました。

お母さんだって、自分の世界を広げていっていい。

そんな親の姿を見て、
子供ものびのびと世界を広げていくことができるかもしれません。

子育てをしながら働くって本当に大変なことです。

一人一人、環境や家族の状況も違うので
“こうしたらいい”という正解はありません。

ただ、できることは沢山あるし、
前を向いて歩いていくことはできる。

色々な方のお話を聞いてそう思いました。

これからも個人的にお母さんへの取材を続けたいと思っています。

「こういう考え方もあるんだな」と、
受け止めていただけたら嬉しいです。


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