「夫婦って、なあに?」というお話を伺うこのコンテンツ。
整理収納コンサルタントの本多さおりさんのお話に、たくさんの反響をいただいています。
第3話では、夫に「あなたはおかしいよ!」とぶち切れた後、
自分が何を望んでいるのか、きちんと伝えようとした本多さんの奮闘ぶりをお伝えしました。
いよいよ今回が最終回です。
夫に子育ての辛さと「して欲しいこと」ときちんと伝えた本多さん。
「わかってくれないのは、仕方がない」
と諦めなかったのがすごいところ。
「ワ〜ッて私がキレて文句を言って、やっとわかってくれたと思ったのに、すぐ忘れて……。
その度に「おいおい」と声をかけて、また大爆発をしてアップデートして。
だからうちは『アップデート夫』ですね(笑)。
夫は自分で察して気づく……というのはできなくて、こっちから働きかけないとダメ。
だから、どれだけ具体的に伝えるかが大事です。
ただ『辛い』だけじゃなくて、つらい理由を考えて、
こうだから辛いんだってことをまず共有してもらって、
そこから何をしてもらったら嬉しいかを具体的に考えていくんです」。
夫に何度もダメ出しをしてきた本多さんですが、
高校時代からの「好き」という気持ちに変わりはないのだといいます。
「夫は仕事での上下関係の中で苦労も多いようで、
そういうしんどさも慮ってあげられたら……といつも思うんです。
でも、それよりも、今は『わかってもらえていない』「わかってほしい」という気持ちが強い。
『違う!』『そうじゃない!』と伝えて、
ちょっとでもわかってもらって前進することが、
彼のことを思いやるための近道かなと思っています。
自分の不満が少しでも解消されないと、夫に対して優しくできないとわかっているので」。
まだまだ子供たちに手はかかるものの、昨年から本多さんは本格的に仕事を始動。
子育ての苦労の中で改めて「片付ける」ということの力を実感しているのだと言います。
「私がやってきた片付けや収納って、人を助ける工夫なんですよね。
片付け=面倒くさいではなくて、ちょっとものの置き方を変えるだけでラクになったり、
収納を見直しただけで忘れ物がなくなったり……といいことだらけなので、
とても徳の高い行いだ、と思っています。
私自身も、子供たちが保育園に行ったあと、ひとりで自宅に戻って、
おもちゃやいろんなものを元の場所に戻していると、だんだん心が落ち着いてくるんです。
ああ、私には『収納』という暮らしのテーマがあって、よかったなあって思うんですよね」
それにしても、これだけバトルを繰り返し、「離婚」という二文字を頭に浮かべたことはないのでしょうか?
「私自身の余裕がなくて、イライラするから夫の顔がまともに見られない、
という時期はあったけれど、離婚したいとまで思ったことはないかもしれません」
どうやって、「最悪の状態」を回避できたのでしょう?
「私の機嫌が勝手に治ったんです(笑)。
土曜日の朝に、『よ〜し、今日はずっと父ちゃんと遊ぶぞ〜』と公園に連れて行ってくれて、
私には『自由にしていていいよ』って。基本はそういう人なんです。
いい夫なのに、そのことすら霞ませてしまうぐらい余裕がない時期があって……。
今まで私は、人生の悩みは、どんなに誰かに相談しても、
自分にしか解決できないことだと思っていました。
でも、今の育児との格闘は、パートナーである夫と一緒の方向を見て、
一緒の責任感を抱きながらやっていかないと解決できないんだなって、
いろいろ悩んだ挙句に、大事なのはそこだなと思っています」。
新型コロナウィルス感染症による非常事態宣言で、保育園が休みになった時、
本多さんは途方に暮れたのだと言います。
24時間子供たちがべったりいる生活なんて……。
しかもご主人は変わらず毎日出勤だったそう。
「子供が成長して、少しずつではあるけれどラクにはなってきていたんです。
何かが転がっただけでも子供たちが大笑いして、
そんな穏やかな瞬間が、5分間でも続いたら、すごく救われるなあと感じるようになりました。
そして、『あ〜辛いな』と思う時間をなるべく少なくするにはどうしたらいいんだろう?と、
この新しい生活様式の中で工夫してみると、
手応えを感じることが少しずつなんですが増えてきた気がします。
そうやって暮らしをアップデートしていくと『あ、もしかしたらできるかも』と思えてくるんですよね。
ちょうど昨日は一人でも余裕のあった夜だったので、
ちょっとビールを飲みながら夕飯の支度をしていました。
気持ちがよかったので、ビール片手にベランダに出て、
ガラス越しに家の中ではしゃいでいる息子2人の姿を見ていたら、
なんて素敵な風景なんだろう、なんてかわいいんだろうって思ったんです。一瞬のことでしたけど(笑)」
失敗したり、力が及ばないとがっかりしたり、自分のふがいなさに落ち込んだり……。
自分の小ささを思い知った時、初めて横にいる人の存在に気づき、
いかにいつも助けられていたかに気づき、どんなにダメな自分でも、
変わらず側にいてくれる優しさに心が震えたりします。
夫婦とは、そうやって丸腰の自分になった時、寄りかかることができる存在なんだろうなあと思います。
そして、せっかく一人でなく二人で生きていくことを選んだのだから、
「自分の力でできること」以外に、「自分の力ではできないこと」も足し算して、
自分ひとりでは見られない風景を見てみたい。
全力で子供と夫と向かい合う本多さんのピュアさに、
自分を夫に少し明け渡してみようかと思うようになりました。
写真/近藤沙菜
本多さおりさんを含め、このコンテンツでご紹介した人に加え
合計7名にお話を聞き、
私自身の話もプラスしてまとめた新著「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく」
発売中です。
もしよかったらお手に取ってみてください。
みなさま、今日もいい1日を!