母娘ふたりロードトリップ 7 車の中のひとり時間

こんにちは。フォトグラファーの清水美由紀です。私は、暮らしにまつわる媒体(雑誌や書籍、広告など)で写真を撮るお仕事をしながら、シングルマザーとして娘を育てています。娘が生まれた6年前から、人生の半分の期間を暮らした東京と、生まれ育った松本とを行ったりきたりする二拠点生活が始まり、コロナ以降は松本で新しい暮らしのバランスを楽しんでいます。

娘とは、乳児の時も幼児の時も、取材や個人的な旅行で様々な場所へ旅をしました。九州や四国、中国地方など日本国内、そしてフランスやアメリカなど海外にも。この連載では、あちこち旅をした中でもとっても印象深い、運転が苦手な私が思い切ってチャレンジした、松本から愛媛を目指す「母娘ふたりロードトリップ」について書かせていただいています。

前回は、やりたい!と思ったその心の炎を「面倒くさい」で消してしまわないためにしたことについて書きました。京都で謎の腹痛に襲われ(多分原因は不安から来るストレスですね)、瀬戸大橋を渡っている時には、私の背中と松本とを繋ぐ細い線のようなものがぷつんと切れる感覚を味わい、「わあ、私も車でどこにでも行けるんだ!」と自由を感じることができました。そして、旅は、ついに四国へ…!

道後温泉を出発すれば、友人の住む西予市までは約2時間の距離です(同じ愛媛県でもまだ2時間も!)
途中で、気になっていた下灘駅に立ち寄ります。下灘駅は、愛媛県伊予市にある、海の見える駅で、水平線にぽつんと浮かぶような小さなホームが人気の駅です。

 

ここに寄ろうと思いついたのは、運転中。これまで愛媛県には何度か友人を訪ねて来ていたものの、いつも飛行機と特急列車を使って目的地へ最短の時間で辿り着く旅しかしていなかったため、存在は知っていたものの立ち寄ることのできずにいた場所がたくさんあり、下灘駅もそのひとつだったんです。小さなホームに、海がどーんと迫ります。なんだか心が浄化されるよう。

駅前には、移動販売のコーヒー屋さんがいたので、コーヒーを買って休憩していると、「こんなところに世田谷ナンバーがある!随分遠くから来てるなあ。」なんて指をさされたのですが、その声が聞こえてきて、恥ずかしいやら誇らしいやら。誰も私の車だなんて分からないのに、コーヒーをすすって照れ隠しをしたのでした。

ところで、下灘駅のことをふっと思いついたのは運転中というのを先ほど書いたのですが、運転中には本当にいろんなことを考えました。この時期の娘は車に乗ると、なぜか静かに座っているか寝てしまいまいました(ありがたい!!イヤイヤ期の頃は、チャイルドシートに乗ることを嫌がって泣いた時期もあったので、なおさらありがたく感じます。)

娘が生まれてからというもの、ほとんど一人で育児をしてきて、その命を守るために必死だった私。自分が必死だ、ということにすら子育て中は気付かないものかもしれません。何をするにも危なっかしい年頃の子供と24時間一緒にいると、自分の頭の中の整理をする時間だってないものです。だから、運転中にひとり時間が生まれた、というのは想定外の幸運な副産物でした。目にする風景から、過去の出来事を思い出しては突然点と点が線に繋がったりと、カオスだったけれどもそれにすら気付かずにいた頭の中に余白が生まれ、すとんすとんと整理されていくのでした。


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