30代だった私に会いに行く

昼間は、息もできないほどの暑さなのに、
朝5時代はまだちょっと涼しくて、
汗をかきつつも、気持ちよく歩いて参りました。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

私は「暮らしのおへそ」の校了作業をしつつ、
「大人になったら着たい服」の取材が佳境を迎え、
毎日撮影に出掛けております。

さて……。
週末、ものすご〜く久しぶりに、多治見の「ギャルリももぐさ」を訪ねました。
もう10年以上、もしかしたら20年近く行っていなかったかも……。
知らない方のためにひとこと説明しておくと、
陶芸家の安藤雅信さんと、サロン(筒状のスカート)などを作っていらっしゃる明子さんが
開かれたギャラリーで、
私はここで、工芸という世界を教えていただきました。
内田鋼一さん、三谷龍二さん、辻和美さんなど、
今活躍されている作家さんを初めて知ったのもここでした。

30代の頃、安藤さんに取材をお願いしたくて、
ギャラリーまで足を運ぶのだけれど、勇気がなくて言い出せなくて……。
「やっぱり無理だ……」とがっかりして帰ったこともありましたっけ。(笑)

なにもかもが初めてで、とことん自信がなくて、
オロオロしてばかりの、あの頃の自分を愛おしく思います。

名古屋駅から在来線に乗り換えて40分ほど。
特急などではなく、普通電車でトコトコ向かいます。
途中からすぐそばを川が流れ、景色ががらりと変わります。
この道中でスイッチが切り替わっていく感じ。

「ももぐさ」は、一部改装されたり、新たなカフェができていたりと
変わった部分もあるけれど、
大きな木々に囲まれた、凛とした空間は昔と同じ。
「岐阜は暑い」と聞いていたので、覚悟して行ったのだけれど、
さわやかな風が吹き抜けて、
都心よりずっと涼しく感じました。

今回初めてかフェスペース「OYA」で、ランチをいただきました。
これが、めちゃくちゃおいしかった!
3つのランチセットがあって、
私はかつおのソテーのセットを。
真ん中には、にんじんのフライがのっていて、
これが、甘くて絶品でした。

帰りには、「岐阜県現代陶芸美術館」へ。
陶芸家の伊藤慶二さんの「伊藤慶二 祈 これから」と名付けられた展示会を見に行きました。
これが素晴らしかった!

今年90歳になられるそうですが、今も作品を作り続け、
陶芸だけではなく、絵やオブジェなども。
展示室ごとにテーマが設けられているのですが、
そのひとつが「尺度」という部屋。

ここの説明文が心に響き、写真撮影OKだったので、写真を撮ってきました。

「人の歩幅はそれぞれに異なります。
その差異が個々のリズムを生み、各々の世界との関わり方を形づくっていきます。
日常に埋め込まれた『寸法』も本来は身体に根ざした感覚から立ち現れてきたものではないでしょうか。
(中略)
既成の、与えられた尺度が支配する現代において、
伊藤は、実感を伴った身体感覚、ヒューマン・スケールに立ち戻ることの意義を、
静かに問いかけているようです」。

あの「ももぐさ」に初めて伺った30代。
私は、自分に自信がなくて、キラキラ輝いている方達を「いいなあ〜」と羨ましく眺め
何も持っていない自分がなんとも心許なかった……。
あれから30年以上が経ち、
コツコツと30年という月日をかけて経験を繰り返し、
自分の体の中に、何かを刻み続けていたんだよなあ〜。
私は、「実感を伴った身体感覚」から育つ「尺度」を持っているだろうか?
ともう一度、自分の手を見つめてみたくなりました。

帰ってから、あの「OYA」さんのランチの真似をして、
カツオのステーキを作ってみました。
カツオのたたきをサクで買ってきて、太めにカットして
フライパンを熱々にして表面を焼くだけ。
これを、ポン酢と胡麻油を混ぜたタレできただきました。
うま〜い!
これから、我が家の定番にしたいと思います。

いつもは行かない場所に行ってみる。
昔尋ねた場所に、当時の自分に会いに行ってみる。
そんな夏のひとときもいいかもしれません。

みなさんは、どんな夏休みを過ごされるのでしょうか?

 

今日もいい1日を。


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