世界を一周したいのは、自分であって、海ではない。by 海洋冒険家 白石康次郎さん

ドクダミの花がどんどん増えて、
まるで道端に星がたくさん落ちているよう。
今朝の東京は、久しぶりに雲間から太陽が顔を出し、
さわやかな風の中を歩いてきました。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

さて……。
先日NHKプラスで「NHKアカデミア」を見ました。
ゲストはプロセーラーで海洋冒険家の白石康次郎さん。
前編があったらしいのですが、気づかず、後編が配信されておりました。
アイロンをかけながら見ていたのだけれど、
あまりに白石さんの言葉が素晴らしく、
途中から、アイロンをスマホに持ち替えて、メモしながら見ておりました。

東京生まれ、鎌倉育ちの白石さん。
幼い頃に、交通事故でお母様を亡くされ、お父様とおばあちゃんに育ててもらったそう。
幼稚園時代、海を眺め「この水平線の向こうになにがあるんだろう?」とずっと考えていたそうです。
その思いをず〜っと持ち続けたのがすごいところ。
機関士になって船に乗り、世界を回ろうと水産高校に入学。
その時に、ニュースで知ったのがヨットで世界一周をしていた師匠でした。
しかもその師匠は、個人タクシーの運転手。

「これだ!」と電話帳を調べて連絡をとり弟子入り。
一緒に世界一周に出かけたのち、
なんと師匠が亡くなってしまい、ひとりで海に出ることに。

何度も世界一周に挑戦するものの、1度目も2度目も失敗……。
そんな時、造船所の親方に「何がいけなかったんでしょう?」と聞いてみました。
すると、こう言われたそうです。

「こうちゃんは、ヨットのお尻を叩くように走っているようだね。
船は女性だよ。もっと優しく扱いなさい」
「船が沈めばお前も沈むんだよ。船を大切にしなさい」。

その言葉で、白石さんは、世界一周や記録を気にするのではなく、
優しく船と向き合うことにしたのだとか。
そして、見事世界一周を成功させました。

そして、世界一周が終わったあと、白石さんはこんな風に考えます。

「世界一周をしたいのは、自分であり、海ではない」。

この言葉の奥深さに、涙がじわっと溢れました。

「僕が世界一周しようがしまいが、海には一切関係ない。
もっと透明な心で海を見なきゃいけない。
風が吹いたら、帆を緩めればいい。
風がやんだら、あげればいい」。

白石さんと海
の関係は、いろんなものに置き換えられるのかもしれません。
私なら「書く」という世界。

書きたいのは私であって、私の周りの世界は書いて欲しいと言っているわけじゃない。
私が書いたって、書かなくたって、世界は変わらない。
誰かに会って心が震えれば書けばいいし、
何も感じなければ、パソコンをオフにすればいい。

そういうことなんだよなあ〜。
「どうにかしたい!」と自分の力でねじ伏せるのではなく、
出会ったものに反応するだけでいい。
それだけでいいんだ、と思うと、肩の力をほっと抜くことができる気がします。

幼い頃からずっと変わらず、変わったものは「おもちゃの大きさだけですね」
と白石さんは笑っていらっしゃいました。

そして、海の上で孤独じゃないですか?との問いにこんな風に答えていらっしゃいました。

「本当の自分(魂)と海、言動、行動が一致しているんです。
だから孤独じゃない。
ずっとワクワクしている。
心と行動がずれると孤独を感じますね。
つまらなくなるんです」。

誰もが白石さんみたいに、子供の頃の夢を持ち続けられるわけでも、
「やりたいこと」が「仕事」に結び付けられるわけでもないけれど、
今、「心と行動がずれてない?」
と問いかけることは、とっても大事だなあと改めて思いました。

小さな男の子がそのまま大人になったようなピュアさと、
好きを貫き通すために本当の強さを獲得した賢さを併せ持つお話に
心が洗われた気がします。

NHKプラスでの配信は、4日(水)まで。
もしよかった見てみてくださいね。

 

今日もいい1日を。

 


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