不安がっても仕方がないことを不安がらない、ということ。

今日は朝起きると5度、
き〜んと冷たい空気の中を、ウォーキングに行ってまいりました。
豪雪の地域もたくさんあるのだとか。
みなさん、大丈夫でしょうか?

さて。
2月4日の夜、「父のコートと母の杖」のトークイベントには、
たくさんの方に来ていただき、本当にありがとうございました。

ゲストは伊藤まさこさん。
内容の打ち合わせは、あえてあまりせずに、
登壇してから、リアルにふたりで話そうということになりました。

なので、壇上で私自身が伊藤さんのお話を聞きながら
「なるほど〜」と思うことがいっぱい!

いちばん感じたのは、
「考えても仕方がないことは、考えない」という潔さでした。

伊藤さんのお母様は88歳。
82歳の我が母より年上です。
私は、ちょっと母の体調がすぐれなかったり、
力が弱くなって、できないことが増えたりすると、
すぐにオロオロして、心配し、
そして「母が老いる」という事実の前に、胸を痛め、不安を抱えていました。

でも……。
伊藤さんに「心配したり、不安になったりすることはない?」と聞くと
「階段で転ばないかなあということは心配だけれど、
不安でたまらないってことはないですね。
だって、歳をとるって当たり前のことだから」ときっぱり!

もし、不安に思うことがあったら、
きちんと解決策を考えて、先手先手で備えておく、
というのが伊藤さんの方法でした。
24時間対応の、訪問医療の先生を見つけて、定期的に健康チェックをしてもらう。
美容室に行かず、家で髪を切ってもらうように手配する。
買い物は、伊藤さんが車を出して手伝う。
洗濯物を干さないでもいいように、乾燥機付き洗濯機に変える、
などなど……。

つまり、不安の種を見つけたら、
先にはさみを入れて、ちゃんと刈り取っておくということ。
そうやって、動いて、手配を整えたら、
「もう大丈夫」と
必要以上に不安がらないということ。

ちょうど、昨日「やめる」ということについて書いたばかりだけれど、
「怖がることをやめる」
というスキルを
伊藤さんにリアルに教えてもらった気がしました。

私も、初めてのプチ介護のときには、
4キロも痩せるほど、ウジウジと不安がっていたけれど、
「老い」が父と母が通る、当たり前のプロセスの一部だと理解したとき、
ちょっとラクになったものです。

本の中には、こんなふうに書きました。

人生はすべて「はじめて」の連続だ。
父と母は初めて80歳を生き、90歳を生きている。
自分の体力が落ち、できないことが増えた「今」と向き合い、
そこから発見したことを明日の糧にする。
そんなプロセスは、程度の差こそあるけれど、
若い頃となんら変わりはないのかもしれない。

父と母自身も、初めて「老い」と向き合っているのです。
そんな両親の姿を、私も「初めて」見ています。
だから、わからなくて当然……。

そんな事実を受け止めれば、
必要以上に怖がらなくてもいいのかも。

伊藤さんの「考えても仕方がないことを考えることをやめる」という潔さは、
お母様の暮らしをきちんと整えてさしあげる細やかな心配りと、
「できることはすべてやる」という強さ
そして深い愛情から
生まれているんだなあと感じたトークイベントでした。

トークイベントには、20代の方も来てくださっていてびっくり。
「両親の老いなんてまだ考えたくない」
という方も、
「歳をとる」ということを考えることは、
「今」をどう過ごすかを考えることにつながるのかなと思っています。
父のコートと母の杖」
いろんな年齢の方に読んでいただけたら嬉しいです。


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