私が今、できることってなんだっけ?

まだまだ暑いけれど、
いつの間にか、朝のウォーキングの足元に、枯葉が落ちるようになりました。
夜、ベッドに入ると、窓の向こうから虫の音が聞こえてきて、
ちょっとだけ涼しく感じられます。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

先日、AppleCareに電話をしました。
というのも、5〜6年前から、スマホとパソコンの「連絡帳」が同期しなくなって
すご〜く不便な思いをしていたのです。

パソコンでメールのやり取りをし、新たに住所を教えてもらって
連絡帳に追加します。
以前なら、それがスマホでも確認できたのに、同期しないから
スマホはスマホで新たな住所入れなくてはいけない……。
あ〜めんどくさ!
で、何度かAppleCareに相談し、1時間近くアドバイザーさんと
あれこれ試したのですが、解決しなかったのでした。

今回、「イ〜〜〜!やっぱり不便じゃ〜〜!」
と、再び相談してみることに。

まずは、手続きをして、相談事項を伝えると、
担当者が画面共有をしながら、現状をチェックしてくれます。
でも、やっぱりダメ……。
そこで、今度は「mac専用のスタッフに変わります」
と少し待たされ、別の担当者に。
それでもダメで、次は
「エグゼクティブなんとか」というもっと専門職の人に変わりました。

で!
その人と10分ぐらい話して、あれこれ操作してみると、
なんと、同期したではありませんか!!
すごい!
私の5〜6年の不便さはなんだったのでしょう!
結局は、Apple IDをもう一度入れ直す、という単純な作業でした。
どういうわけか、連絡帳との同期に際してだけ
Apple IDが認識されず、同期ができていなかったそう。

「うわ〜〜!助かりました。ありがとうございました!」
と何度もお礼を言いました。

今では、さくさく同期して、初めて取材に出かける先の住所を
Googleマップで調べるときも、以前と同じようにできるようになりました。

この経験で、改めて感じたのでした。
自分自身の知識を増やしたり、スキルアップをすることで、
誰かの役にたつんだなあって。

そんな中、松永K三蔵さんの「バリ山行」という本を読みました。
久しぶりに、心がひたひたと満たされる1冊だったなあ〜。

松永K三蔵さんは、会社員をしながら、
会社に行く前に、朝2時間小説を書く、ということをずっと続けてきた方。
2冊目の本で、芥川賞を受賞された、という方です。

兵庫県西宮市出身で同郷。
実は、この本に出会うまでまったく存じ上げませんでした。

山岳小説で、芦屋川、天狗岩、など、懐かしい地名がいっぱい出てくるところも
「読んでみよう」と思ったきっかけです。

主人公の波田は、転職したばかり。
会社の山ガールに誘われて、登山を始めます。

古くなった建物の回収や、外装の修理を専門とする会社では、
小口の取引先を切り、
大手のゼネコンの下請けだけに絞って、経営を安定化しようとしていました。
ところが……。
そのゼネコンが傾いて、一気に業績が悪化。
リストラのうわさが吹き荒れます。

そんな中、波田が出会ったのが、一つ一つの小口の取引先を大事にし
営業なのに、現場で一緒に作業をし、
自分で修理もしてしまうという妻我でした。
その妻我が週末になるたび、ひとりで六甲山へ登っていたのです。
しかも「バリ」で。
タイトルにもなっている「バリ山行」とは「バリエーションルート」という意味。

普通の登山道ではなく、あれこれ自分で探してルートを作り山に登ることだそう。

波田は、妻我に頼み、この「バリ」に同行させてもらいます。
薮を進み、崖を登り……。
その道中の描写のリアルなこと!

そして、快適な登山道とはまったく違う「バリ」に必死でついていく中で、
交わされるふたりの会話がめちゃくちゃ心に響くのです。

会社が危ないかもしれない。
リストラされるかもしれない。
そんな不安を抱える波田。
そんなこと、まったく気にしていないように見える妻我。

「先が見えない」という状況は
山でも、下界の「街」でも同じ……。
そこに流れる「本当のこと」が綴られていく。
そんな物語にぐいぐい引き込まれます。

そんな中で妻我の言葉が刺さります。

「会社がどうなるかとかさ、そういう恐怖とか不安ってさ、
自分で作り出してるもんだよ。(中略)
イメージっていうか、不安感の、感でさ、
それは本物じゃないんだよ。まぼろしだよ。
だからね、だからやるしかないんだよ、実際に」

今、できることって何だっけ?
と自分の足元を見つめ直したくなる1冊でした。

みなさま、今日もいい1日を!


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