法隆寺で聞いた「中道」という在り方

あともうちょっとで春なのに、
その手前で季節が足踏みして、寒い日が続きますね。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

 

さて。
先週、瀬戸内海に浮かぶ大三島に行ってきた、と書きました。
実は、旅はそれで終わりではなかったのです……。

私はバスで、大三島から福山へ出て
福山から新幹線で京都へ。
そこで、大阪に用事があった夫と待ち合わせ。
その足で奈良まで行ってきました。

というのも……。
暮らしのおへそ vol37」の「旅するおへそ」でご紹介した、
料理家の山脇りこさんに教えてもらった宿にどうしても行ってみたかったから。

りこさんの著書「50歳からのごきげんひとり旅」(だいわ文庫)で紹介されているそのホテルは
法隆寺のすぐそばにあり、宿のスタッフが2時間かけて、法隆寺について説明してくれるツアーを行なっている
とのことでした。
その説明がなにやらすいぶん面白くて、勉強になるらしい……。

おへそラジオを一緒にやっている、木村愛ちゃんも
さっそく「行ってきました〜!」と言っていて、
「先を越された!」と思っていたのでした。

そこで、「大三島の帰りに行ってみればいいかも!」と思いついたというわけです。

これがその宿「門前宿 和空法隆寺」

 

まずは宿に着くと、その日の夕飯前に、自由参加の「仏像の見分け方」のレクチャーがあるというではないですか!
「如来」「菩薩」「明王」「天」という4種類の仏像を「明確に見分けられるようになります!」
とのことで、興味津々で参加しました。

本番は、翌朝の朝9時から11時まで、2時間みっちりの
法隆寺ツアーだったのですが、
私は、その前日のレクチャーですでに「なるほど〜!」とノックアウトされてしまったのでした。

仏像の見分け方は、お釈迦さまの一生を理解することから始まります。
ガウタマ(ゴータマ)・シッダールタ=お釈迦さまは、
紀元前5世紀頃に、シャーキャ族の都に王子として生まれました。
豪華な宮殿で、何不自由なく贅沢に暮らしていたそうです。

でも、一歩宮殿の外に出ると
そこには食べ物がない人、病気の人など苦しむ人が大勢います。
「人間はなぜ苦しみから逃れられないのだろう?」と考えたシッダールタ。
29歳で出家し、断食をしたり、意識がなくなるまで息を止めたりと
とても厳しい苦行を6年間も行います。
でも、そこでも悟ることができなかった……。

その後35歳のときに、菩提樹の元で悟りを得て「ブッダ」となるわけですが……。

そこで説明してくださったのが、こんな話でした。

「贅沢な暮らしの中でも見えず、
苦行の中でも悟ることができなかった。
つまり、両極端ではダメだったということです。
そして、どちらにも偏らない『中道』のとき、
シッダールタは、悟りを開いた。
そこがいちばん大事ですよね」

世界最古の木造建築「法隆寺」の伽藍配置

 

この「中道」という在り方に、
ピピピッとアンテナが反応しました。

これって、がむしゃらに頑張るわけじゃない。
かといって、何にもせず運を天にお任せ、というわけでもない。
自分が無理をせずに、
頑張らないけれど、いちばん自分の力を出せる「点」を見つけるってことじゃないかなあって。

たぶん、お釈迦さまの言う「中道」には、もっともっと深い意味があるのだろうけれど、
この「頑張らずに、いちばんパフォーマンスを出せる場を見つける」
ってことを、
最近よく考えるのです。

若い頃は、自分以上のものを抱え込み、
背伸びをして、
自分の身の丈以上の場所に手を伸ばして、
それで成長しようと考えていました。
そんな時期も必要だったなあと思います。

でも、歳を経た今、
もうちょっと違う方法で、ラクしてす〜っと自然な状態で
力を出すことができたらいいなあと思います。

そして翌朝、いよいよ本番ツアーへ。
なんと、この日は、法隆寺がいちばん混み合う日。
聖徳太子のご命日だそう!
たまたまそんなスゴイ日に巡り合ったのも何かのご縁かもしれません。

山脇さんのご著書にも書かれていますが、
このツアーで説明してくださるのは、
ホテルのフロントスタッフの方なのです。
だから「チェックインもするし、お部屋の片付けもするし、食事の手伝いもします」
とおっしゃっていました。
ただ、法隆寺が好きで、仏像が好きで、建築が好きで、古墳も好き。
その「好き」が高じて、自分でツアーを企画して時間をもらっているのだとか。

この男性がね〜、もうめっちゃ面白いのですよ。
もうオタク丸出し!
しかもその知識は学者さんかと思うぐらい。
さらに、知識だけではなく、そこに彼自身の「僕はこう見ているんですよね〜」という視点が入るから
それを聞くのが面白い!

ああ、「好き」の威力ってすごいんだなあ〜と改めて感じました。

でも、面白いだけではなく、
ぽろっといいことをおっしゃるのです。

「お釈迦さまは「人間」だったんですよね。
だからこそ、人間が幸せになることができるってことを教えてくれるんです」
とぽろり。
そんな端っこの言葉に、感動しながら帰ってきました。

やっぱり「いつも」の外に出てみるって、
いろんな学びがありますね〜。

寒かったけれど、とても熱い話を聞くことができて
ひとつの刺激で、頭がぐるんぐるんと巡り出した気がします。

これから暮らしの中で「中道」ということを
ちょっと考えてみようかなあと思っています。

みなさんは、最近どこかへ行かれたでしょうか?

 

今日もいい1日を。


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