大三島の宿で、海と交換してきたもの

 

 

穏やかな瀬戸内海には、いくつもの島がポコポコと浮かんでいます。
そんな風景を眺めながらバスに揺られていると、
「毎日こんな風景を眺めながら暮らしたら、
どんな毎日だろう?」と、うっとりとしてしまいました。

そんな島のひとつ、大三島(おおみしま)に行ってきました。
このサイトでもご紹介し、
拙著「キッチンで読むビジネスのはなし」でも取材させていただいた
愛媛県大洲市でお洋服のブランド「SA-RAH」と営む帽子千秋さんが
海を見下ろす素敵な宿「Yu-Rah」をオープンされ、
そのオープニングパーティがあったので……。

たまたま大洲から遊びに行ったこの島で、
驚くほど安い値段で土地が買えると知り、
落札に参加し、あっという間に手に入れてしまったとき、
「さあ、どうする?」と考えたという千秋さん。

「私が来るだけでなく、みんなが来れる場所を作りたい」
とヴィラ2棟とギャラリーを作ってしまったといいますから、
その勇気と行動力にはびっくりです!

部屋からはこんな風景が目にできます。左に座っているのがワタシ

 

2棟のヴィラのうち、
1棟(イル)をフラワースタイリストの平井かずみさんと、
イラストレーターで版画家の平澤まりこさんが。
1棟(モーネ)をギャラリーワッツを営む山本詩野さんと、
インテリアコーディネーターの木村奈穂子さんが内装やインテリアを担当。

今回はイル棟に、平井さんと平澤さんと一緒に泊めていただきました。

それぞれの個性を持つ部屋は、キッチン付きで、
窓からは海と、そこから上る朝日と、橋と、空が眺められます。
朝はキッチンでパンを焼き、コーヒーを入れて。
夜は、大きな窓のあるお風呂に入って、布団でゆっくり眠る……。

な〜んにもしなくても、ただそれだけで癒される……。
その心地よさは、帰ってきてからじわじわと思い出されてくるよう。
また「あそこに帰りたい」。
そう思わせてくれる宿なのです。

部屋の中には、平澤さんの版画や絵が飾られていました。

パーティには、料理担当の方や、ミュージシャン、建築家、銀行の方
など、さまざまな関係者が集まってお祝いをしました。

今回、2泊の滞在中に私が感じたのが、
千秋さんの自分の手放しっぷりでした。

部屋の内装は、頼んだ4人にすべてお任せ。
滞在中「ここは、これじゃなく、こんなのがいいと思う」
と平井さんたちが提案すると
「確かにそうやね〜」とニコニコ。

普通なら、オーナーである千秋さんにすべてを決める権限があり、
自分の意向通りに作るのが当たり前なのに、
千秋さんは、ぜ〜んぶお任せ! なのです。

でも、だからこそ「お任せされた」人は、全力で頑張る!
建築家も、銀行の人も、
そしてパーティ当日は、料理担当、カメラ担当、音楽担当と
千秋さんのために、みんなが団結し、千秋さんが喜ぶように……
と動いていて、
その姿になんだか感動してしまいました。

福岡からかけつけてくれたアコーデオン奏者の荒井武人さん。ここはギャラリー棟

私は、ついぜ〜んぶ自分で頑張って、
人に頼ることができない上、
人を信頼できなくて、「自分らしくいなくちゃ」
と肩肘張りがちなのに……。

穏やかな瀬戸内の島のように、
平かな心になるためには「こうじゃなくちゃ」と
ひとつに決めてしまわない方がいいのかもしれません。

「これもいいし、ああでもいい」。
そんな広さを持てば、「あなたの力でお願いね」
と隣にいる人に託すことができるようになるのかも……。

1年に何度か、この宿に泊まって、
心を空っぽにして、
「こうじゃなくちゃ」と「穏やかな海の波動」を交換できたらなあ
と思わずにはいられませんでした。

素敵な写真を撮ってくれたのは(一番上以外)
これまた、千秋チームの一員のカメラマン、  SHOKOさんです。

Yu-Rah」の予約はすでに始まっています。
みなさん、自分の中の何かを海と交換しに出掛けてみてはいかがでしょう?

今日もいい1日を。


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