見知らぬ場に、自分をさらしてみる。

今日は、外に出るとぬる〜い空気。
雨の後の湿った空気の中を歩いてきました。
みなさま、どんな朝をお迎えですか?

先日、や〜〜っとのことで、映画「PERFECT DAYS」を見てきました。
吉祥寺の映画館の上映時間にどうしても合わず、
車で30分ほどの映画館へ、ひとりで。

う〜ん、じわじわくるなあ〜。
見終わったすぐは、「ふ〜ん」だったけれど、
夜寝る時に、ベッドに入ると
平山さんが、布団の中で枕元にランプを灯し、
1冊100円の文庫本を読んでいる風景が浮かんできて……。
後から、後から効いてくるのです……。

ここから先、ネタバレがあります。
まだ見ていない方は、ご注意ください。

この映画は、トイレの清掃員として働く、役所広司さん演じる平山さんの
淡々とした日常を描いたもの。
朝、起きたら布団をたたみ、歯を磨いて髭を整え、
ボロアパートの外にある自販機で缶コーヒーを買って、
車に乗り込み、カセットテープをかけて、スカイツリーを見上げながら車を走らせて
トイレ掃除に出かける。
帰ってきたら、銭湯に入り、同じ店でお酒を飲んで、帰って文庫本を読んで寝る。

そのルーティンが淡々と続きます。
ずっと変わることがない……。
でも、途中の登場人物によって、その変わることのない日常は、
平山さんが、人生の舵を切り、自分の意思で「変えた」ことで手に入れたものだとわかってきます。
「幸せでない毎日から抜け出す唯一の方法が、別の人生を歩むことだった」
と、ヴィム・ヴェンダース監督が語っていました。

 

この映画について語った、ヴィム・ヴェンダース監督のインタビューが、めちゃくちゃよかった!
この人は、どうしてこんなにも物語のように優しく、
かつ、本質にずばりと切り込むように鋭く、語ることができるんだろう?

ここ最近、私は「その場に自分を晒す」ということをよく考えます。
モデルの山葉子さんが、パリに行っていらっしゃる様子をインスタにあげていらっしゃいました。
パリの街を歩き、ひとりで食事をし……。
そんな異国の空気を毛穴から吸収する。
そんな「どこかに身を置く」ことで、変わっていく自分を観察する……。
そんな体験っていいなあ〜って。

役所さんもインタビューの中で、
自分の方へ役を持ってくるんではなく、
自分がその役の人物へ寄っていくのだ、と語っていました。
「自分はそういうリアクションはしないけれども、
役に寄っていって、そのリアクションをしていると、
だんだんその人物が自分に馴染んでくる」と……。

ヴィム・ヴェンダース監督は、この「PERFECT DAYS」を、
フィクションとドキュメンタリーがジグサグで進んでいくように作ったそう。
映画をとるときには、リハーサルはなし。
平山となった役所さんが、毎朝のルーティンを繰り返す様子を
ドキュメンタリーのように撮るということです。

つまり、自分の意思で映画を作るのではなく、
その場を与え、そこで起こることを待って撮るということ……。

「平山は、いつも木漏れ日を見られることを約束してくれる仕事を選んだ。
一人きりでできる仕事。
きちんと役に立っていると感じられ、
実用的な暮らしを歩み始めていることを感じられる。
こうして彼は平山になった。
光と木々に敬意を表すように暮らすことで、
これまで想像したことないほど幸せな人間になりました。
もっと言えば、
彼がそういう人間になれるよう、光が手助けしたんです」。

(正確にそのままの言葉ではないですが、監督がインタビュー中に語られていたことはこんな感じでした)

実は、私は「その場に自分を晒す」ということがとても苦手です。
以前ホロスコープを見ていただいたら
牡牛座は、安定を望むから、変化することにとてもストレスを感じるそう。

でも……。
今年は、ちょっと自分を「晒したい」気分なのです。(笑)
思いもかけない場所へ自分を連れて行って、
そこで自分が感じることを見てみたい……。

平山さんのように、
別の人生を歩くことはできないけれど、
せめて、公園で木々を見上げたり、
銭湯に行ってみたり、
地下鉄の構内にある居酒屋に行ってみたりならできるかな……。

意図しない、予定しない環境を自分にプレゼントしてみたい、と思うこのごろです。

みなさんは、「自分を晒した」こと、あるでしょうか?

 

今日もいい1日を!


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