「わからない」を伝えること

今朝はベッドの中で、「さむっ」と布団をかぶりました。
東京は朝から雨が降っています。

築60年近い古い我が家では、外と室内の境目があいまいなのがいいところ。
雨が降ると、雨の音がして、雨に濡れた土の匂いがする……。
そんな暮らしが好きだなあと思います。

今も、ときにしとしと、ときにザーザーという雨音を聞きながらパソコンに向かっています。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

 

昨日は、東京表参道で、今日9月8日から開催される
「衣・食植・住 life is beautiful  植物が命をまもる家となり、命をつなぐ食となる」
という展示会のギャラリーツアーに参加してきました。

「暮らしのおへそ」でも取材させていただいた、料理人の野村友里さんと
花屋「the little shop of flowers」を主宰する壱岐ゆかりさん、
そして、茅葺き職人の相良育弥さんが説明をしてくださり、
ギャラリーを巡りました。

日本では古くから暮らしに必要なものを「衣食住」という言葉で表してきたけれど、
この言葉の背景にはどんなものがあるのだろう?
という問いから始まったこの企画、
それを2021年には「衣・食植」に関する展示を。
そして、続いて今年は「住・食植」に関する展示をされています。

ギャラリーの一室には、稲穂が実る田んぼと、その稲を刈って作った家が再現されていました。
そして、会場いっぱいに広がる稲藁の匂い……。

日本の住まいに生かされていた、稲を再発見するプロセスが紹介されています。

最初、行く前は、なんだか「お勉強的」な展示なのかしら?
と思っていました。
でも、展示を見て、友里さんと壱岐さんの説明を聞いていると、
この企画が、おふたりのとてもパーソナルな「問い」から始まった、ということが伝わってきました。

コロナ禍で、リモートワークが当たり前になり、通信環境さえあれば、どこでも暮らせるはずなのに、
どこでも暮らせる自由を手に入れたはずなのに、
どこか不安なのはなぜなのだろう?

ボードには、そんな不安が綴られていました。

おふたりのお店、レストランの「etrip」と「the little shop of flowers」は、
今年いっぱいで閉店しが決まり、移転先を探すことになったそうです。
だったら「どこ」がいいのだろう?

こうして「新たなな居場所探しと共に『住』の学びが始まった」そうです。

そうして、出会ったのが、茅葺き職人の相良さんだったというわけ。

藁葺きの家は、何度でも修復し、何度でも甦らせることができるそうです。
つまり、「何度だってやり直せる」ということ。

その「やり直せる」という言葉に、なんだかとっても安心するのが不思議でした。

こういった展示のとき、私はちょっと苦しくなってしまうのです。
確かにそっちの方が正しい……。
でも、私はすぐに茅葺きの家に引っ越すわけにもいかないし、
「できること」を見つけることが難しい……。

でも、昨日は少し様子が違いました。
それは、そこに「弱さ」があったからなのかも。

そっか、友里さんたちも、どこに住むのが正解なのか、わからなくなっちゃったんだ。
それで不安だったんだ。

茅葺きの家って、何度もやり直せるんだ。
だったら、最初から完璧じゃなくてもいいのかな……。

迷ったり、わからなかったり……が出発点になっていたから、
私も一緒に「だったら……」と探すプロセスを一緒に味わえた気がします。

最後に友里さんがしてくださった話が印象的でした。
日本では、田んぼでお米をつくり、それを全部食べ切らずにちょっと残しておき、
そのお米でお酒を作り、お供えしたそうです。
それがお祭りのはじまり。

そして、お盆の頃に、ちょうどお米に実が入る。
それは、ご先祖様を呼んできて、過去と今と未来がひとつになるってことなのだそう。

なにげなく毎日食べているお米に、
そして、街中でよく見かけるお祭りに、こんな意味が隠されていたなんて!
日本っていう国は素晴らしいなあと改めて思いました。

人に何かを伝えるとき、
「わかったこと」だけでなく「わからない」ことも同時に言葉にすると、
「わからない」を「わかった」にひっくり返すプロセスを、
誰かと共有できるんだなあと感じたギャラリーツアーでした。

展示は今日9月8日から10月29日まで。
みなさま、よかったらぜひ行ってみてくださいね。
くわしくはこちらを。

 

今日もいい1日を〜


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