昨日取材に行った東京近郊のとある野っ原に、
蛇イチゴが一面に、小さな赤い実をつけていました。
そのかわいらしいこと……。
食べてもおいしくないっていうのが残念（笑）

春が終わり、新緑の時期を経て、６月が近づくと
自然界は実りの時期を迎えるんだなあと実感します。
梅はもうちっちゃな実をつけているし、グミも赤く実っていて……。
自然のサイクルってすごいなあ〜。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか？

さて！
はまじこと、浜島直子さんの新刊「けだま」（大和書房）を読みました。
いや〜！よかったなあ〜。
前号の「蝶の粉」（ミルブックス）を読ませていただいたときも、思ったのです。
「はまじ、ずる〜い！」って！（笑）

モデルさんで、美しくて、スタイルよくて、
いつも笑顔で明るくて、みんなに愛されて、
お母さんで、素敵なご主人がいて。
なにもかもスバラシイ上に、
文章までこんなに上手だなんて！
ズルイ、ズルイ！
と勝手に思ったのでした。（笑）

カバーの袖には、

「服」を入り口にした、
なんてことのない、
でも愛してやまない日常の風景。
22篇のあなただけの物語。

と書かれていました。
読んでみたら「服」の奥に、深い深い物語が繋がっていました。

若い頃、おしゃれに興味津々だった頃
上京して何もかもが新鮮で、モデル仲間と不安を抱えながらも、キャッキャと過ごした時期
テレビ「世界不思議発見」の「ミステリーハンター」となって、
「自分の言葉で伝える」大切さに目覚めたくだり……。
そして、出産したときの不安、授乳の幸せ……。

そして、「なるほど！　その通り！」と膝を打つ言葉もいっぱい！

「コートほど『こんな高いものを買ってしまった』という罪悪感が、甘美なスパイスとして持続するものはないんじゃないかと思う」（中略）
「その幸福感は、人生の『のりしろ』ようなものなんじゃないかと思う。パッと見た目では生きるために必要ないように見えるが、実はそれがなければ人生が組み立てられない。旅や音楽や映画もそうだ」

息子さんが全く乳首を吸わなくなった日のことを書いた文章では……。
「もうにとどあのしっとりとした濃密な時間はやってこない」と泣いて、泣いて、泣いたそうだ。
「その時だった。
森の中に旦那が立っていた。手を大きく広げ、そして泣いていた。（中略）
ああ、そういえば、長年勤めていた会社を辞めた時、（中略）着替えもせず一人ソファに座り、同僚たちからのビデオメッセージを見ながらじっと泣いていた姿を見た時「この人と結婚してよかった』と思ったんだっけ」
そして、こう書いてあったのです。
「泣いてもいいのか」
「家族は、泣くためにいるのかもしれない」

この一言が、本当に胸に沁みました。

最終章の「けだま」では。

「夢を途絶えさせまいと必死のあまり、仕事の数が安心の数だった。（中略）
他者から与えられる幸福が甘いが脆く、すぐに溶けてなくなってしまう。（中略）
頑張っていたのではない。頑張らせてもらっていたのだ。頑張る場を与えてもらい、生かされていただけなのだ。（中略）二人の母が、そのことを教えてくれた。日々粛々と、自分のやるべきことをやること。そして何より、いつも変わらずに帰る場所があるということ」

服から始まり、仕事のこと、家族のこと、幸せのこと、いろんなことを考える糸口を教えてもらう本でした。

それにしても、はまじさんの記憶ってどうしてこんなにも鮮明なのだろう！
ワンシーンワンシーンの描写が
ひとつひとつとても具体的で、色、形、匂い、素材感と
まるで映像が見えてくるよう。
「記憶力がよい」っていうのじゃなく、「記憶力が鮮やか」といった感じ。
だから、本を読みながら、
テレビドラマを見ているように、映像が目の前に立ち上がって、
ワクワクしてくるのでした。

前作の「蝶の粉」が静かで、心にしんしんと染み入るようだったのに対し
「けだま」は、プチプチと弾けるような感じ……。

私なんて、記憶がどんどん抜け落ちて、
若い頃、あんなに必死で仕事を頑張ろうと思っていたあの日のことなんて、
ぼんやり霞の向こうにぼやけているというのに……。

それは、きっとはまじさんが、「今」を全力で楽しみながら生きてこられた、
ってことなんじゃないかなあ〜。
私は、常に不安がって、「これから」ばかりに意識がいって、
「今」を生きることに、上の空になっていた気がします。
「未来のための今」になってしまっていて、
「目の前で起こること」をちゃんと味わえなかった……。

この本を読んで、おくらばせながら、私も今を極彩色に彩りながら、
人生後半の1日1日を、4Kのハイビジョンで楽しみたい！と思ったのでした。

はまじさん、こちらこそありがとう！
「けだま」（大和書房）おすすめです！

みなさま、今日もいい１日を。